加速する梅干し離れ 消費量約20年で4割減 製造業者が苦境「倉庫がパンクして商品の行き場がない」

山脇 未菜美 山脇 未菜美

ご飯のお供として愛されてきた梅干しの消費量が激減している。総務省の家庭調査によると、1世帯(2人以上)当たりの消費量は2002年の1053グラムがピークとなり、21年には658グラムとなり約4割減。スーパーで大きめのパックを500グラムとすれば、658グラムはその少し多めのイメージだ。梅干し業界は売り上げ減が続いており、ある業者は「梅干しの倉庫がパンクしていて、多くの商品が行き場のない状況です」と苦境を訴える。

梅干し業界がどのような状況かご存じでしょうか―。1月上旬、ツイッターにそう投稿したのは、和歌山県みなべ町で梅干し製造を行う「梅樹園」。総務省データを例に、19年~21年の年間消費量が1世帯当たり663グラムだったと強調。その上で、梅干しが売れず、保管する倉庫が満杯になって入りきらなくなったと窮状を訴えた。担当者は「1年間に10キロが入る原料樽を2万本ほど加工しています。このままの状態だと、今年生産する梅干し原材料の行き場がなくなってしまう恐れがあります」と話す。

在庫があふれる原因は、消費量が減っているだけではない。原材料の梅が気候によって収穫量が左右されるのも大きい。2020年は凶作で、収穫が例年の40~60%に。収穫量が少ないと製造できる量も少なくなるといい、「販促活動がほとんどできませんでした。1年間営業ができないと、売り場が狭くなってしまうことも多い」と担当者。21~22年は収穫量が多かったこともあり、さらに在庫があふれてしまったという。

若者で「強い酸味が苦手」の声も

健康食品として、高齢者の中に根強いファンがいる梅干し。一方で、若い世代になるほど梅干し離れが進んでいるのも事実だ。総務省の統計で、年齢層別に全国の梅干しの消費量をみると、若い世代は年々減少。2021年は29歳以下が303グラムだったのに対し、70歳以上が約2.8倍の834グラム。30代は387グラム、40代は436グラム、50代は617グラム、60代は755グラムだった。

ではなぜ、梅干し離れが進むのか。食の選択肢の多様化、朝ごはんにパンを選ぶ人が多くなったこと、家族構成の変化…。いろんな要因が推測される一方で、強い酸味が苦手な若者もいるという。業界では若者の心をつかむため、はちみつや、オリーブオイル、トマトエキス、キムチなどを入れた梅干しも販売し、打開策を模索している。

梅樹園自身は、ツイッターを使っておいしい食べ方や豆知識を紹介。カレーに梅干しを一粒乗せるといい具合にマッチすることや、白湯に梅干しを入れると体の芯から温まることなどを投稿しており、じわりと人気を集めている。担当者は「現状を打破するために弊社ができることをやっていきたい。梅干しが食べたくなった時には我慢せずに食べていただけると助かります」と話している。

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