お父さまから相談を受けたmrock722139さん(@mrock722139)が投稿した一連のツイートが「まるでドラマのよう」と話題です。
「昨夜、父から急に『母が生前付けていた香水を探して欲しい』と頼まれた。ある寝付けない夜、鏡台の前に置いてあった母の香水を適当なタオルに1プッシュし、ベッドサイドに置いたら懐かしい香りがしてよく眠れた。まだ瓶の中には半分以上あるけどできる事なら無くならないよう在庫として持っていたい、と言われ、亡くなった母の香りを懐かしみながら眠りにつく一人暮らしの父の気持ちを考えると恥ずかしながらその場で涙ぐんでしまった。よし来た任せろ!Amazon楽天なんなら個人輸入でも何でもしてやるぞ!と気合を入れたら父が持ってきたそれは、北海道ならすべてのお土産屋さんにある『ラベンダー』」
あまりにも一般的な香りだったために拍子抜けして、父に向けて心の声で語りかけます。「えーと、父さんや父さんや。その香水は母さんの匂いだからじゃない。心を落ち着けて眠りを誘う効果がある香りなんだ。どこでも買えるぜ???だけどなんつうか父の母への恋心がずっとずっとあり続けていて、わたしはその恋心の結果この世にいて。笑いながらもう一度涙が」と、思わず泣き笑い。
しかし、母が使っていた香水について調べたところ、その香水は富良野市の観光農園オリジナルのもので、大量生産される芳香剤とは異なり、しっかりとラベンダーの香りが楽しめるものだったのです。そこで、mrock722139さんは、「富良野に買いに行ってやっからね」とお父さまに約束したのです。
コメント欄には、
「匂いの記憶ってめっちゃ鮮明に残るんですよね お父様安眠できて良かったですね!」
「香水だと、たまに廃盤とかあるので良かったですね!」
「いい話ですね。最後『北の国から』風なのは笑いました」
「起承転結が素晴らしい 普通にドラマになりますよ、これ」
「『探偵ナイトスクープ』案件かと思ったらすぐに解決しててホッとしました」
「俺、泣いていいすか?」
「感動してます」
などの声が届き、心温まる逸話に感動が広がっています。
北海道にお住まいのmrock722139さん。旦那さんの転勤で結婚直後からあちこちを転々としており、2019年3月の転勤で十数年ぶりに地元に戻ったそう。その引越し直後、お母さまの癌が発覚し、命の時間が決して長くない旨の告知を受けることに。その後、定期的に短い入院を繰り返すお母さまの身の回りの世話・看病を続け、2年8ヵ月の治療の後、ご本人の希望でご自宅での療養へ。たくさんの方々のお見舞いや力添えの末、お母さまは2021年11月に旅立たれたそうです。
mrock722139さんにお話を聞きました。
きっと、ラベンダーのアロマ効果も、母の記憶を思い出す香りも、どちらも本当の事
――どういったシチュエーションでお父さまから相談が?
現在、父は実家で一人で暮らしており、私は気軽に遊びに行ける距離の場所に住んでいます。私も姉もなるべくマメに会いに行くように心がけており、ツイートの日はたまたま実家に泊まっていました。話があったのは夕食の買い物に出かける前、私が母の鏡台で身だしなみを確認していた時でした。
――香水について何かご存知でしたか?
全くの初耳でした。鏡台の前にいましたが香水があることすら気づきませんでした。
――相談された香水が馴染みのある「ラベンダー」だった…と。
ラベンダーのフレグランスアイテムは富良野と何のゆかりもない観光地にもどこにでもなぜか置いてあるのです。判で押したような薄紫色を基調としたデザインに、人工香料のむわっとくるラベンダーのフレグランスグッズは北海道民にとって苦笑いをしながら見るものでして。「いったいどんな素敵な香水か…」と思ったら「そんなもんどこにでも売ってるでしょ!」と最初は半笑いをしてしまいました。
――お母さまの香水、詳細はお分かりですか?
富良野市にある「ファーム富田」の「ハーブコロン」です。夫とラベンダーのハイシーズンに行ったことがあるのですが、本物のラベンダーの畑、生花の香りは圧倒的で「こんなにいい香りなんだ!」と驚いたものでした。
当該の香水ははじめに他のお花、ハーブのような清涼感のある香りがフワッと鼻に抜けて、そのあとラベンダーの香りがかたまりになってズンと来るような香りです。
――香調もある素敵なコロンなのですね。娘さんに直接相談するお父さまとの良き関係性も伺えます。
父は私をどこにでも連れて行き、私と父が二人でどこかに行くと帰ってこないので有名でした。私と父は顔も性格もそっくりだと言われます。
父にはなんでも話すのが当たり前で。母の病気が見つかり亡くなるまでの間は、父・姉・私で母が残された時間を幸せで納得がいくものにするためのチームでもあったと思います。
――「香りの記憶」、想像以上に安心でき精神的な支えになるのだなと改めて感じました。
ラベンダーの香りがアロマテラピーで言うと「不眠、緊張に効果がある」というのは以前からなんとなく知っており、父が眠れるようになった理由は果たして母の思い出に心癒されたのか、はたまた偶然不眠に効くアロマを寝室に撒いて眠った事によるものなのか、真相はどっちなのかそれがなんとなく面白おかしく感じました。
ですが、笑った反面、慣れない一人暮らしを始めた父が、母の記憶と共に安らぎながら眠る術を見つけて、少しずつ母の思い出を抱いて生きる事に慣れてくれていることは嬉しく思っています。
――仲睦まじいご夫婦だったのですね。
仲睦まじいなんでもんじゃないです。とにかく父が母の事を大好きでした。
父は「母さんは出かけるときにこの香水をよくつけていた。車の助手席からふわっと来る香りだった、一緒にあちこち出掛けた事を思い出しているうちに何となくよく眠れるんだ」と話します。きっと、ラベンダーのアロマ効果も、母の記憶を思い出す香りも、どちらも本当の事なのでしょう。
父はなんだかんだとコミュ力の高い人、日本人の高齢男性にしては愛想がよくて素直な人なので家族以外の人間関係にも恵まれ元気に楽しく暮らしています。
――ツイートに多くの反響がありました。
「それは安眠のアロマだよ」と軽く笑っていただけたらと思って連投ツイートをしたもので、いつの間にか温かい愛の話になってどなたかの心を温めていると知り、驚きのほうが多いです。
幸せな記憶を思い出すことで辛い事や悲しい事を乗り越えるのは、生きづらい世の中を少しでも生きやすくするためのテクニックで、「香り」がそのためのツールとなり得ることに共感いただけたことが一連のツイートをたくさんの方が気に入ってくださった理由なのかなと思います。
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mrock722139さんとお父さまのやりとりを想像して心がジーンといたしました。お父様にとって大切なアイテムとなっていた香水が、予想に反して既知の場所で購入できるものであったこと、本当に良かったです。助手席からフワッと香るラベンダー…ご両親の新たなエピソードを知れたのも素敵ですね。