「もはや、言葉のナイフ」うつ病から職場復帰した女性に、お局さんから投げかけられた言葉が話題

渡辺 陽 渡辺 陽

厚生労働省が行った令和3年労働安全衛生調査によると、過去1年間(令和2年11月1日から令和3年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%(令和2年調査9.2%)となっています。

治療のためいったん休職して、その後職場に復帰する人もいますが、治療を継続しながら復職する人もいます。SNS上では、復職した時に職場で心ない言葉をかけられたという声が散見されます。パワハラなどが原因でうつ病になったくまみさん(@kumaminokimochi)もその一人です。

くまみさんは職場での同僚とのやり取りをTwitterに「復職40日目。職場でうつ病の薬を飲んでいる。私の机のゴミ箱を見たお局さんに、『これ全部精神の薬?どんなの飲んでるの?』って聞かれて困っていたら、『こんなにたくさん飲まないといけないんだ〜私は絶対無理だわ〜メンタル弱くなくてよかった〜w』と。こういう人がいるからうつ病はなくならないんだろうな」と投稿しました。

この投稿を見た人からは、

「たまたまツイートを見かけました。明日から復帰します。職場では周りの人を気にしすぎてしまい、仕事をすぐ完璧にしないとと思ってしまい、ストレスがたまって休んでしまいます。私は嫌だと思うと休んでしまうので、その中でもしっかり出勤して働いていてすごいと思いました。私も明日から頑張ります」

「ほんとそうですね…私のところにもすごいメンタル面のことに関してデリカシーの欠片もないことを言う人がいます。メンタル弱いんじゃなくて、今までいっぱいこれまで頑張ってこられて、今薬飲みながらお仕事されてるのはすごいと思います!」

「もはや、言葉のナイフですよね。心から血流れてるの見せてあげたい」

などのリプライが多数寄せられ、「いいね」は5.7万件にもなりました。この数字は、いかにこうした問題で悩む人が多いのかを表しています。

投稿者のくまみさんにお話を伺いました。

ーーいつうつ病になったのですか。原因は?
「2年ほど前に職場の人間関係や異動が原因でうつ病だと診断されました」

ーー働けないような状態になって休職されたのでしょうか。
「はい。仕事を休めないという責任感からギリギリまで働いていましたが、職場で勝手に涙が出たり、動悸がしたり、記憶障害といった症状が出始め、主治医からドクターストップがかかり、休職することになりました」

ーー会社は復職まで待っていてくれたのですか。
「はい。休職期間は職場の規定で定められており、その期間内の休職でしたので問題ありませんでした」

ーーお局さん以外の人は好意的に迎えてくれましたか。
「正直なところ、あまりそうとは思えません。やはりうつ病と言うことで、腫れ物に触るような扱いを受けている実感は否めないからです。また、本人に自覚はなくても、うつ病のことをよく知らない人から傷付くことを言われることもありました。もちろん、常に気にかけてくれて、優しく接してくれる人もいます。そんな方には本当に感謝の気持ちでいっぱいです」

ーーおつらいですね。病院の先生には相談しましたか。
「主治医の先生には診察の時に相談しています。『復職して休まずに出勤しているだけでもすごいこと。嫌なことを言ってくる人とは完全に距離を置くとトラブルになる可能性もあるので、ほどほどに距離を置きましょう』と言われています」

全ての人に理解してもらうのは難しい

ーー分かっていても、なかなか難しいでしょうね。
「残念ながら、全ての人にうつ病の実態を理解してもらうのは難しいと思います。いまだに心の弱い人がかかる病気だと思っている人もいますし…なので、何か嫌なことを言われても、『この人はそういう考えを持っているんだな』と、軽く受け流すようにしています。いい意味で人に期待しない、というか…他人の考えや行動は私がコントロールできるものではありません。なので、自分でコントロールできないものは極力気にしない、首を突っ込まないようにしています」

ーー復職して勇気づけられたとか、前向きになれる出来事はありましたか。
「私は結構長い期間休職していたのですが、休職前にお世話になった先輩や同僚が私のことを覚えていて、わざわざ様子を見に来てくれました。『調子どう?』とか『また一緒に仕事しましょう』とか言われた時は素直にとても嬉しかったです」

ーーそれは心強いですね。
「やはり休職からの復職というのは、誰でもとても不安です。自分だけ取り残されて、周りについていけないんじゃないかとか、周りの人は自分のことをどう思っているんだろうとか。復職直後は悩みや不安が多く、不安定な時期です。そんな中、自分を受け入れてくれる人というのは、本当にありがたい存在です。辛いことも多かったけど、私のやってきたことは無駄ではなかったのかな、と思えるようになりました」

ーー今後、どうしていこうと思われますか。
「今の職場環境に満足しているか、と問われると、はっきり『はい』とは言えません。楽しいことや嬉しいこともありましたが、辛いことも多かった職場なので。ただ、今はまだ具体的に転職までは考えておらず、とにかく、週5日、毎朝決まった時間に起きて8時間働く、というサイクルをこなすことを目標にして1日1日を過ごしています。フルタイム勤務に体が慣れてきて、気持ちにも余裕が出てきたら、改めて自分のやりたいことや将来について具体的に考えようと思っています」

このインタビューからも分かるように、くまみさんはとてもしっかりした考えをお持ちです。こうした人が心ない言葉や態度で傷つけられないよう、社会全体がメンタルヘルスに対して正しい理解を持ち、復職した時に就業しやすい環境になることが望まれます。

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