バブルで破産し人は離れ…大病を患い療養生活 かつては有名な広告デザイナーだった71歳の父 生き甲斐となった絵が「めちゃくちゃ素敵」

谷町 邦子 谷町 邦子

竹筆(竹ペン)のかすれた趣あるタッチと明るい色づかいの絵と、生への喜びを感じるひとこと。療養生活が続いているなか、体調の良い日に投稿主のお父さんが手掛けたものです。あたたかみを感じる絵を描くまでには、いくつもの人生の苦難や孤独があったと言います。

投稿主のanco(@an__anco)さんのお父さんは、数々の受賞歴がある、地元では有名な広告デザイナーでした。しかし、バブル崩壊の影響で破産。その後は様々な仕事で生計を立てますが、重い病気にかかってしまい、手術と療養を余儀なくされます。破産や病気だけでなく、お金や地位を失ってから人が離れていったことも辛かったそうです。

インターネットが苦手なお父さんに代わりancoさんが投稿した作品には、「めちゃくちゃ素敵だね…!!」「絵葉書とかになりそう 素敵な絵ですね」「『植物かわいい』がかわいい…」などの声が寄せられました。

挫折を味わった後に大病…そして今は

お父さんは現在71歳。バブル崩壊後に起こったできごとや、竹筆の絵を描き続けることで生まれた変化についてancoさんに聞きました。

――お父さんはもともと絵を描かれていたのですか。

「私が生まれる前の若い頃から絵を描いていたそうです。会社員だった頃、会社を立ち上げてからもずっと精力的に描いており、色々なコンクールに出品しています。何度か大きな賞もいただいています」

――バブル後、具体的にどんな大変なことがあったのでしょうか。

「企業が1番コストカットをするのは広告なので、まず仕事が減ったこと、減ったことで社員にお給料の支払いが出来なくなり人も離れ、運営資金が底をつき借金を重ね、ついには破産してしまいました。私も少なからず巻き込まれています。

地元では有名なデザイン事務所だったため、色々な業界と交流がありましたが、今まで好意的だった人々も離れていったのが悔しくもあり、辛かったとのことです」

――竹筆の絵を描きはじめられたのはいつ頃、どんなきっかけからですか。

「20年以上前くらいからです。竹筆を使い始めたのは、全国イラストレーター展で、誰もやったことのないようなタッチで描いてみようと思ったのがきっかけとのことです。

当時は斬新なアイデアだったそうで、それで数々の賞をいただいたそうです。竹筆で描いたロゴが地元JA直営店で採用され、当時は県規模でテレビCMも手掛けていました。現在も使用されています」

――絵を描くようになって、お父さんや家族になにか変化は。

「大病を患い、しばらくブランクがありましたが、また気力が戻り、今では絵の構想を練ったり実際筆を取るのが楽しいようです。週3回の透析と、右足指を一部切断したため歩くこともままならず人生を悲観していましたが、また描き始めたことによって少し明るくなったように感じます。私もそんな父を見て、嬉しく思っています」

◇ ◇

会社や健康などは一部失ってしまったけれど、創作意欲とチャレンジ精神を抱き続けたancoさんのお父さん。絵を描き続けることで、自分自身はもちろん、家族にも喜びをもたらし、明るさを届けています。ancoさんはお父さんの作品を多くの人に見てもらおうと、Instagramアカウントを2022年11月下旬に開設しています。

■takashi.yokotaniさんのInstagram https://instagram.com/takashi.yokotani?igshid=YmMyMTA2M2Y=
■anco(@an__anco)さんのTwitter https://twitter.com/an__anco

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