「元気に生きてます」78歳クロード・チアリ、5年前に病気で死線をさまよう キャリア締めくくるホールコンサート開催へ

あの人~ネクストステージ

黒川 裕生 黒川 裕生

世界的ヒット曲「夜霧のしのび逢い」などで知られ、テレビやラジオでの軽妙なトークでも人気を博したギタリストのクロード・チアリさんが11月28日、60年以上のキャリアに区切りをつける「ホールファイナルコンサート」を開く。フランス・ニース生まれの78歳。5年前に脳梗塞と心筋梗塞で倒れて死にかけた(家族談)が、リハビリを重ねてようやくギターを演奏できるまでに回復した。クロードさんは「しばらく音沙汰なかったけど、まだ死んでないからね(笑)。でもホール規模で演奏するのは、これが最後になると思います」と軽口を叩きつつも噛み締めるように話す。

クロードさんは16歳でロックバンド「レ・シャンピオンズ」を結成し、ヨーロッパで大人気に。あのビートルズが前座を務めたことは、今でも語り草になっている。20歳でアコースティックのソロ・ギタリストとして独立。1964年には「夜霧のしのび逢い」のヒットで世界的な名声を獲得した。

日本へは1967年に初めて訪れ、75年頃から永住。1985年には日本国籍を取得している。日本では演奏活動にとどまらず、自宅を構える関西を中心に、テレビタレントとしても多くの人に親しまれてきた。

脳梗塞と心筋梗塞で「死にかけた」

「ファイナル」と銘打ったことについて、クロードさんの長男でコンサートを主催するクリス・チアリさんは「特に公表はしていないんですが、5年前に脳梗塞と心筋梗塞を同時にやっちゃって、実は一度死にかけてるんです」と明かす。「年齢も年齢だし、今後はもう大きい会場で演奏するのは難しいかもしれません。だからまだ元気に動けるうちに、地元のホールでキャリアに区切りをつけるコンサートを開くことにしたんです」

クロードさんは今、移動には杖が必要だが、「ちゃんと喋れて受け答えもできる状態」(クリスさん)で、日常生活に大きな支障はないという。取材中に外から救急車の音が聞こえると「お、俺のお迎え?」ととぼけるなど、冗談を言って周りを笑わせる気さくなキャラクターは相変わらずだ。そしてやはり、ギターを爪弾くと表情が一変。「哀愁のギタリスト」として世界を魅了してきた音楽家のオーラがふっと立ち現れる。

「ギターの感覚はずっと体の中に残っているから、全然問題ないですよ。演奏すると元気になるし、もし失敗してもニコッと笑ってごまかせばいいから(笑)。久しぶりに大きい会場でやれるのが嬉しいです」

当日はクロードさんの盟友アントニオ古賀さん(歌手、ギタリスト)がゲストで登場するほか、数々のステージを共にしてきたかつての演奏仲間たちが参加。ミュージシャンとしても活躍する息子のクリスさん、娘のクリステル・チアリさんとの共演も予定している。

「気心の知れた人たちとのステージなので、安心して臨めます。心配なのはギャラだけ」とクロードさん。それを聞き流したクリスさんは「『生きる目標』って言ったら本当に死ぬみたいだけど、倒れた後は半年から1年くらい、ギターを持つこともできませんでしたから、ここまで回復できたこと自体がすごい。せっかくなので楽しいコンサートにできればいいなと思っています」と父の肩を抱く。

ホールファイナルコンサートは11月28日、芦屋市のルナ・ホールで。開場18時、開演19時。前売り5500円、当日6000円。チケットはイープラスで販売している。

【イープラス】https://eplus.jp/sf/detail/3735640001

駆け出し時代のビートルズ「下手くそだった」

蛇足だが、滅多にない機会なのでクロードさんのバンド「レ・シャンピオンズ」の前座を務めたというビートルズのことを訊ねてみた。

「うーん、あのときははっきり言って下手くそだったよ。彼らが大スターになっていくのを見てどう感じたか? まあ俺とは関係ないし、どうでもいいじゃない(笑)」

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