華やかな髪飾りの鶴…実は「絹」で折っています 身につける人の「幸せ」祈ってオーダーメード 伝統工芸「つまみ細工」に注目

平藤 清刀 平藤 清刀

絹羽二重で折られた美しい鶴。一見すると「折り紙?」と思うかもしれないが、これは「つまみ細工」という江戸時代から伝わる伝統工芸だ。現代でも古さを感じない洗練されたデザインを生み出している、石川県金沢市で活動する「由るりえ華あそび」の作家・由(ゆ)る華(はな)さんにお話を伺った。

世界にひとつしかないものをつくる

つまみ細工とは、江戸時代から伝わる伝統工芸で、小さな布を折ったりつまんだり、あるいは複数の布を組み合わせて華やかな作品を生み出す。

「つまみ細工を始めて5年目の未熟者ですが」と謙遜する由る華さん。つまみ細工との出会いは、まったくの偶然だった。

「2018年のお正月に、当時はまっていたレース編みの本を探しに行って、隣に並んでいたつまみ細工の本に目が行きました」

ものづくりが好きだという由る華さんは「自分でつくってみよう」と思い、その本を購入したという。

あれからつまみ細工歴が5年目に入り、作品を販売するまでになった。

「始めて3~4年は、いろいろつくって遊んでいました。オーダーが来たり呉服屋さんなどで販売を始めたりしたのはここ1年くらいです」

材料は、主に薄い絹羽二重を使うというが、作品に合わせて生地を選んだり、手に入った生地から生み出したりすることもあるので、材料に強いこだわりはもっていないとのこと。

由る華さんのSNSには、鶴や季節の花などをモチーフにした髪飾りやブローチなど、つまみ細工の美しい作品が多数投稿されている。中には、かなり細かい細工が施された作品もある。

「デザイン起こしや下準備を入れると、制作期間はだいたい2~3日です」

とりわけ筆者が惹かれたのは「祥鶴」という髪飾りの作品。金・純白のシンプルな色使いと素材の質感がマッチして、翼を広げた鶴の姿が美しい。注文主はアメリカに住む日本人女性で、帰国した折に由る華さんに制作を依頼した。

「アメリカに戻ったら、部屋に飾りたいとおっしゃっていました」

ちなみに「祥鶴」の「祥」の字には「めでたいこと」「喜ぶべきこと」の意味がある。

「ご自分の結婚式で、主に白無垢に合わせた髪飾りとしてのオーダーが多いです」

他の作品も、注文を受けて制作することは多いのだろうか。

「七五三、成人式、結婚式で、主にお着物に合わせてのオーダーです。たいていの方が『Instagramの投稿から一目惚れです』とおっしゃってくださって、オリジナルを求めてオーダーをくださいます。花嫁さんの髪飾りに関しては、昨年娘が結婚するのに合わせてつくったので、親心もあり、その人にとって世界にひとつになるような気持ちで制作しております」

気になるのは作品の価格だが、材料やデザイン、そして大きさによって一定しないため「お答えしにくいです」とのこと。

由る華さんがつくる作品は和服に合う髪飾りやアクセサリーなど、日常使いしやすいことが意識されている。今後は工芸的なものにも挑んでいきたいそうだ。

「地元石川の材料、材質、伝統を活かしたものづくりに取り組み始めております。先日、それらの名称を『加賀彩工』として商標登録いたしました」

誰かのために、幸せのお手伝いがしたいという由る華さん。併せて、自分も楽しめるものづくりを日々考えているそうだ。

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