毛と爪は伸び放題…保護犬シェルターの前にケージごと捨てられていた犬が笑顔を取り戻すまで

松田 義人 松田 義人

 

保護犬の譲渡活動を通じて「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。同団体には様々な事情を持つ保護犬がいますが、ある寒い日のこと、同団体の施設の前に、ケージごと捨てられていた犬がいました。その名はいっくん。毛と爪は伸び放題、満足にご飯を食べていなかったのか、やせ細っており、元気がなくなっていました。

ボロボロになりながら、吠える気力すら失っていたいっくん

 

 

伸びまくった毛は本来の体のサイズと同じくらい膨れ上がり、真っ黒に汚れ、その姿はボロボロ……。本来の表情すらうかがうことができませんが、スタッフが懸命に毛をカット。すると、まるで久しぶりに日を浴びたかのようにいっくんはキョロキョロし始めます。雨ざらしの場所にいたのではと思うほど、カチカチに固まった脚の毛を取り除くと、動き易くなったようで、嬉しそうな表情をしてくれました。

わずか1ヶ月あまりで元気になったいっくん。スタッフに「一緒に遊ぼうよ」と心を開くように

 

こういった懸命なケアと愛情をスタッフがそそぎ続けたところ、わずか1ヶ月あまりでいっくんは元気に回復。スタッフにも心を開くようになり、むしろ「一緒に遊ぼうよ」と甘えてくる素振りを見せ始めました。いっくんの表情を前に、スタッフも笑顔でいっぱいになりました。

 

ピースワンコの保護犬の譲渡活動は、右から左へと譲渡していくのではなく、相応のケア、治療、人馴れトレーニングなどを行います。やがて、「新しい里親の元にわたっても、人間と一緒に生活できる」状態になったところで譲渡となります。

ひどい捨てられ方をしていたいっくんですが、この人馴れトレーニングまでの時間はそうかからず、やがて新たなの里親に引き渡されることになりました。しかし、ここでいっくんに異変が起こります。

譲渡される直前、過去の記憶からかソワソワし始めるいっくん

 

ピースワンコによる保護犬の譲渡にあたっては、里親に対しても相応の審査や条件があります。保護犬の多くは心に傷を背負っており、単に「かわいいから」といった理由で、容易に引き渡すことができないからです。

こういった審査や条件をクリアした初老のご夫婦の家に引き取られることになったいっくんですが、譲渡当日、まだ新しい里親に出会う前からソワソワし始めます。愛情をいっぱい注いでくれたシェルターから今日離れていくことを察しているようです。

いっくんの脳裏には、前の飼い主による劣悪な環境やケージごと捨てられた記憶が蘇っているのかもしれません。

その表情、挙動からは「また捨てられちゃうの」「ここを離れたくない。もうどこにも行きたくない」といういっくんの思いが感じられ、スタッフも切なくなる瞬間でもありました。

 

保護犬が抱える気持ちや背景を含めての里親の元へ巣立ち、幸せになったいっくん

新しい里親の初老のご夫婦は、そんないっくんの気持ちを十分理解し、受け入れ引き取って行かれました。当初こそ怯えていたいっくんですが、この初老の家庭に家族として受け入れられてから、元気に、そして幸せに生活をしているようです。

このように一口に保護犬、保護犬の譲渡といっても、その実情やバックボーンは深いものです。そして、肝心の犬自身も、人間が考えるよりもずっと繊細に、さまざまなことを感じ取って生きています。これらさまざまに入り組んだ課題と向き合いながら、ピースワンコは今日もさまざまな保護犬の譲渡活動を行なっています。

ピースワンコテレビ【保護犬】いっくんの物語 ~ピースワンコ・ジャパン~ https://www.youtube.com/watch?v=hh3n85lrXhU&t=202s

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