コスプレした大人たちが本気で遊ぶ…ユニークな手作りカートで斜面を駆け抜けろ!ロンドンで見た迫力イベント

「レッドブル・ボックスカート・レース」現地で生観戦

黒川 裕生 黒川 裕生

アニメや映画などのキャラクターに扮した人たちが、世界に1台しかない手作りのカートに乗って斜面をゴー!!加速したカートが時に宙を舞い、時にクラッシュし、はたまた、時に横転するたび、沿道を埋めた観客たちから、やんやの歓声が上がります。

いい大人たちが本気で遊ぶRed Bull主催の名物イベント「Red Bull Box Cart Race(レッドブル・ボックスカート・レース)」が7月3日、イギリスのロンドン郊外にある「アレクサンドラ・パレス」で開催されました。国内外から67チーム(各4人)が出場。完全に「ウィズ・コロナ」に舵を切ったイギリスらしく、会場には1万8000人もの観客が詰めかけ、コース脇でスマホのカメラを構えたり、芝生で寝転がりながら大型ビジョンでレース観戦したりと、野外フェスを思わせる実にピースフルな雰囲気が漂っていました。

出場しているのはどんな人たち?

まずはスタート前の出場者たちに話を聞いてみましょう。

日本でも36年ぶりの続編が大ヒットしている映画「トップガン」をテーマにした男性4人組。もちろんカートは映画にも登場するF-14戦闘機をモデルにしています。

「新作ももちろんいいけど、僕たちは1作目の『トップガン』を強く愛している。レースの目標? もちろん生き残ることさ!」

イギリスの国民的絵本のキャラクター「ミスターメン」をリアルに再現したチームで“運転手”を務める男性の職業は、なんとドライビングインストラクター。これは優勝間違いなしですね、と水を向けると「ノーノー、僕はぶつかるのが好きなんだ」。おお、なんということでしょう(笑)。

他にも、有名な映画のキャラクターや切断された巨大な足(!)、食べ物の缶詰など、見ているだけで胸が躍る凝りに凝ったお手製のカートがずらり。基本となる四輪車はエンジンもペダルもないシンプルな構造で、そこに各チームが腕によりをかけて独自の装飾を施しています。

段ボールやベニヤ板のような「そんな装備で大丈夫か?」と思わず確認したくなるものから、金属や木材を加工して成形した本格的なもの、さらにはほぼ全て3Dプリンターだけで作ってしまったという異彩を放つ1台まで、カートはとにかく多種多様。「レース」と冠してはいますが、スピードを追求するよりも、いかに目立ち、いかに会場を沸かせるかということに参加者が心血を注いでいるのが伝わってきます。本格的なコスプレをした大人たちが、みんなニコニコしているのも印象的でした。

大盛り上がりのレースがスタート

さて、レース開始です。全長420mの斜面を使った特設コースは、両サイドにキューブ状に束ねた干し草を積んで造成されています。スタート前の短いパフォーマンスも採点の対象となるため、どのチームも音楽を流しながらダンスや寸劇などをノリノリで披露。4人の審査員が点数カードを掲げると会場は一気にヒートアップ! 大歓声に包まれながら、カートが1台ずつスタートしていきます。

先ほども書いたように、このカートにはそもそも動力がありません。スタート時にメンバーが後ろから押すその推進力と斜面を駆け降りる重力だけが頼りです。コース途中には、ジャンプ台やカーブ、段差などの障害が設けられており、そこでいかに派手に“飛ぶ”かも勝敗の決め手になってきます。

華麗な大ジャンプはもちろんですが、段差の衝撃でカートが崩壊したり、干し草のブロックに突っ込んだりするたびに、観客はむしろ大喜び。指笛を鳴らし、選手たちの果敢なパフォーマンスを讃える拍手が何度も起きていました。

選手は選手で、カートが転倒すると立ち上がって得意げにガッツポーズ。レース前に話を聞いた「トップガン」チームは、戦闘機の両翼がもげるという満身創痍の状態になりながらも、どうやら無事に生還できたようです。

レースを間近で観戦して感じたのは、これはレースというより派手なコスプレ大会であり、何よりも「お祭り」であるということです。スピードを重視するあまり、障害物を避けて走ったカートに観客からブーイングが起きていたことからも、それは明らか。みんなただ「速いレース」よりも、「面白いパフォーマンス」が見たいのでしょう。だからこそ、どのチームもわざわざ走るのには不向きなゴテゴテの装飾を施し、「観客に楽しんでもらうこと」を第一に考えているんですね。MCの女性は、何度も「アメイジングパフォーマンス!」「ファビュラス!」と感嘆の声を上げ、レースの雰囲気を大いに盛り上げていました。

そもそも、ボックスカート・レースってなに?

レッドブルによると、ボックスカートの起源は1950年代にアメリカの子供たちが石鹸箱に車輪をつけて坂道で走らせたことが始まりだとか。だから、海外では「Soapbox Car(ソープボックスカー)」や「Soap Cart(ソープカート)」などと呼ばれています。この愉快なカートレースは、様々なスポーツイベントをサポートするレッドブルが2000年にベルギーで第1回を開いて以来、世界各地で開催。ロンドンでは2011年から1、2年ごとに開かれていて、今回が7回目とのこと。コロナ禍で3年空いたこともあったからこその熱い盛り上がりには、見ていてグッとくるものがありました。

会場には飲食店のブースも多数あり、好天だったこの日は特にアイスクリームに長い行列が。シャボン玉を大量に飛ばせるマシンなど、子供たちが楽しめるアクティビティも用意されており、思い思いに過ごす親子連れの姿も目立ちました。

10月に大阪で初開催

この「レッドブル・ボックスカート・レース」ですが、2022年10月22日には大阪の万博記念公園で開催されることが決まっています。日本ではこれまで東京で4回開かれてきましたが、関西はこれが初。現在、出場者を募集中ですので、我こそはと思う人はぜひ挑戦してみてはいかがでしょう。エントリーの締め切りは7月22日ですが、7月15日頃までにオフィシャルサイトにアクセスして情報をチェックするのが確実です。

「レッドブル・ボックスカート・レース」大阪大会募集サイト
https://www.redbull.com/jp-ja/events/red-bull-soapbox-japan-2022

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