結婚式の席次表が「本そのもの」で驚き なるほど、新郎新婦は本好き編集者…「本愛」が炸裂する中身とは?

山本 明 山本 明

 「そういや結婚記念日だったんで、本好き夫婦がいつぞや作った本型の席次表をご覧ください」という文言とともに一見、「本」と見紛うばかりの席次表がtwitterに投稿され
ました。まるで、この「一冊」の中に結婚に至る夫婦のロマンティックな物語が記されているかのようです。投稿したのは、出版社でデジタルマーケティングと小説の編集を担当している編集者で、式当日は新郎でもあった「森潤也(文芸編集者)」(@junyamegane)さん。本型席次表ができるまでの経緯をお聞きしました。

 ツイートにはもう一枚、本の「袖裏(ソデウラ)」(本にカバーを巻いた際に、内側に折り込まれる部分の裏側)にあたる写真も投稿されており、こちらには新郎のお薦めの10冊が記載されています。尾崎翠著「第七官界彷徨」(河出書房新社)から広瀬すずさんと松坂桃李さんによる映画化でも話題の本屋大賞受賞作、凪良ゆう著「流浪の月」(東京創元社)まで、現役の編集者らしい古今東西の名著が並ぶラインナップに「素敵…!いつかおすすめの本を読んでみたいです」「さすが渋い選択ですね」との声が届いています。

 本好きにはたまらないこだわりの詰まった席次表ですが、実際のところ、式当日の皆さんの反応はどうだったのでしょうか…?

結婚式当日の出席者は親族、友人のみ…後日、席次表を見た本好き同僚に大ウケ

――ツイートなさった6月21日は何度目の結婚記念日でしたか?また、お二人のなれそめや、本にまつわる思い出などがあればぜひ教えてください。

 投稿した日は、二度目の結婚記念日です。もともと僕はSF小説が好きだったのですが、妻もSF小説が好きという話を聞いて、小説の話をするようになったことで仲良くなりました(なお、僕からSFの話をしにいったらしいのですが、自分では全然記憶にありません……)。ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』、リチャード・ブローディガン『西瓜糖の日々』などは、二人で話した記憶のある大切な本です。

――本型席次表を作るにあたって特にこだわった点は?

 本が大好きな二人ですし、お互いに編集者をしているので、紙物周りは本へのこだわりを入れ込みたいねと話すうちに、本型の席次表にしたら楽しいのでは?と。デザインしてくれたのはプロのデザイナーさんで、本の装丁(ブックデザイン)なども手掛けられている方です。こだわった点は、できるだけちゃんと本として見えるように作りました。本の袖(ソデ)には著者プロフィールのように新郎新婦のプロフィールを入れたり、裏面には小説の内容紹介のような文も入れたり…細部もちゃんとこだわっていて、バーコードやISBNコード、Cコードにマルシー表記など、どうでもいいところまで本を再現しています(笑)。

――招待状やウェルカムボードなどはどんなデザインを?

 僕が編集担当した小説に、ほしおさなえさんの『活版印刷三日月堂』というシリーズがあり、川越の活版印刷所を舞台にした心温まる感動作なのですが、1巻目の4話に、活版印刷で招待状を刷るカップルの話があります。せっかくなので、それを実現しよう!と本の取材などでもお世話になった川越の「櫻井印刷所」さんにご相談し、活版印刷で招待状を刷ってもらうことにしました。

 ほかにも席次表を大きくして束見本(本のサンプルみたいなもの)に巻いたものをウェルカムボードにするなど、各所にいろんな「本愛」を詰め込んでみました。

――式当日のご列席の皆さんの反応はいかがでしたか?

 コロナの影響で会社の同僚は呼べず、参加は親族と友人のみでした。なので、出版に関わる人はほとんどいません。出席者の皆さんは「すごいね!」と言ってくれましたが、熱心な本好きは多くなかったことと、二人の本のチョイスがガチンコの選び方をしてしまったせいで、あまりおすすめ本10選や細部のこだわりについてはツッコんでもらえなかった印象です。むしろ後日、会社の同僚に見せたときのほうが盛り上がってくれました(笑)。

   ◇   ◇

 式当日はマニアック過ぎる本への愛は伝わりにくかったかもしれませんが、しかし、お互いの強い絆と想い、そして式に来てくださった方々に楽しんでもらいたいという願いは、きっと皆さんに届いたはずです。

 また、共に暮らしていくうえでの本へかかわり方をたずねると以下のような答えが返ってきました。「二人とも本が好きなので、自分が読んでめちゃくちゃよかった本や、相手が好きそうな本があればおすすめしたりしますが、好みやタイミングもあるので強くすすめることはあまりありません。それぞれが買ってきた本で、自分が読みたかった本があれば貸してもらう……とかが多いですね。問題は置き場で、どうしても本棚に限りはあります。本棚にどちらの本を入れるか、前面にどの本を出すかを巡って、お互いにこっそり入れ替えたりしています」(森さん)。ぜひ本とともに末永く、幸せにお過ごしくださいね。

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