車に轢かれたまま放置されて後ろ足が不自由に 優しい飼い主さんのもとで第2のニャン生を送るアルちゃん

古川 諭香 古川 諭香

体型や怪我の状態だけでなく、穏やかになった表情の変化も心に刺さる――。そんなビフォーアフター写真を投稿したのは、6匹の猫と暮らすhatamchiCat(@hatamchiCat)さん。

愛猫アルちゃん(男の子)は野良猫時代に交通事故に遭い、後ろ足が不自由に。満身創痍だったアルちゃんが心身共に元気になれるよう、飼い主さんは手厚い看病をしました。

八百屋さんの裏で出血している猫を発見

ある日、飼い主さんは八百屋さんの裏で、血を流しながらうずくまっている猫を発見。

動物病院へ連れていくと、骨盤の損傷で後ろ足が動かなくなっていることが判明。内臓は、体の上のほうに上がったまま癒着しており、剥離が困難な状態でした。

「おそらく車に轢かれたのだろうとのことでした。癒着によって、肺や横隔膜が他の内臓に圧迫されてあまり膨らまないので呼吸が常に荒く、口呼吸が多め。耐えられるか分からないので、麻酔が必要なことはできないとも言われました」

骨に異常はなかったものの、左足は伸びたまま、右足は曲がった状態で硬直。右足の膝にはかさぶたとノミの糞が固まったものたくさん。引きずって歩いていたからか、足の先から膝、おなかのあたりには出血が見られ、右足の親指は半分以上、すり減っていました。

この小さな命を助けるべく、飼い主さんは治療に奮闘。まず、くしを使って、右足の膝にあったかさぶたとノミの糞が混じったものを夫婦2人で2時間かけて地道に駆除。

「鼻水やくしゃみがすごくて、連続で15回以上くしゃみが止まらず、血が混じることがあったので獣医師に相談すると、口の中の菌が悪さをしている可能性があるため、口内の善玉菌を増やしてみたらどうかと言われました。そこで、猫用のデンタルバイオを毎日飲ませたところ、くしゃみの頻度は激減。鼻水も収まりました」

また、軟便だったため、獣医師に相談した上で人間用の「ビオフェルミンSプラス細粒」をご飯にトッピング。すると、数週間ほどで便は普通の硬さになりました。

そして、飼い主さんは精神面のケアにも尽力。お迎え当初、アルちゃんは少し怯えていたため、自分の匂いがついた服をベッドにして匂いに慣れてもらい、ゲージを布で覆って落ち着けるように工夫しました。

「もともとあまり人間を怖がっていなかったからか、数日で触らせてくれ、トイレもすぐ使ってくれるようになりました。怪我の治りに伴い、ケージの外に出られる時間が日に日に長くなっていきました」

保護時2kgほどしかなかった体重は4kgに。親指の傷は2カ月以上の治療で完治しました。
「理由は定かではありませんが、保護時よりも呼吸がしやすそうにもなりました。もしかしたら、よく食べて健康になったことも関係しているのかもしれません」

そう語る飼い主さんは保護から1カ月ほど経った頃、保護場所となった八百屋さんの店員さんから生まれて間もないアルちゃんの写真を見せてもらったことがあったそう。

当時はアルちゃんの怪我が事故か、先天的なものなのかと考えていた頃。

「写真には足が普通の状態のアルちゃんが兄弟や母猫と一緒に写っていました。今では見ることのできない、五体満足で元気な姿を見ることができて嬉しかったのと同時に、本当に車に轢かれて放置されていたんだなと、口惜しさや悲しさなど、様々な感情がこみ上げてきました」

動きたいように動いて「らしいニャン生」を謳歌してほしい

アルちゃんを迎えた当初、飼い主さんはわずかに動く足先を見て、片方だけでも、もう少し動くようにリハビリしてあげたい…と思い、足をマッサージしていました。しかし、病院で何度かアルちゃんの状態を説明してもらううちに、心境は変化。

「不自由な部分の血行促進は気にかけつつも、人間側の欲ではなく、アルちゃんの動きたいように動いてほしいと考えるようになりました」

そこで、脚に引っ掛かりそうなものを撤去するなど、アルちゃんが暮らしやすいよう、家全体を整えたのだとか。

「今は、ソファーやベッドに上りたそうなときは抱えて乗せていますが、自力でも登れるよう、スロープを制作する予定です」

また、トイレの時に足を持ってあげる、ジャンプしたそうであれば持ち上げるなど、アルちゃんが助けを必要とする時にはサポートを行っています。

「トイレ介助はおしっこ時だと下半身が濡れ、うんちの時には曲がった右足に便が乗ってしまうためです。アルは痒いところをかいてあげると、足が動きます。その時に首回りや耳を掃除したりすると、気持ちよさそうに足の先だけピクピク動かしてくれて、かわいいです」

そう語る飼い主さんは、お腹や足の付け根を優しく撫でた時、おでこを腕にくっつけて体を預けてきてくれたり、目の前で同居猫を撫でているとカットインしてきたりするアルちゃんの甘えん坊な一面にも胸キュン。

そして、ご飯へ猪突猛進な姿に驚いています。

「体の不自由さがあるからなのか、アルが同居猫たちにちょっかいを出すことはありません。ですが、ご飯の時だけは自分の分を食べ終わっていないのに、他の子のご飯を奪おうとして、お皿に頭を突っ込んでいきます。こうなると、他の猫たちは手出しができません(笑)」

怪我したまま、ひとり頑張ってきたからこそ、いっぱい甘えてほしい。そう話す飼い主さんの想いは、きっとアルちゃんにも届いているはず。

優しさに包まれながら、アルちゃんは第2のニャン生を謳歌しています。

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