「1歳まで生きられないでしょう」水頭症と診断された子猫 飼い主さんの愛に包まれ間もなく4歳に

古川 諭香 古川 諭香

「うちには12匹の猫がいますが、ゆずは他の猫と変わらない普通の猫。病気があるからといって特別な気持ちもありません。みんなと同じ12匹の中の1匹です」

そんな言葉を愛猫ゆずちゃんに向けるのは、小さな保護団体を運営するchibikkoyuzu(@chibikkoyuzu)さん。

猫が発症するのはまれだと言われている「水頭症」という病気を持つゆずちゃんは寝たきりで、体を上手く動かすことができません。しかし、同居猫や飼い主さん(@chibikkoyuzu)の愛を受け、自分らしい日常を謳歌しています。

手伝っていた保護団体で「水頭症」の猫と出会って

ゆずちゃんは、飼い主さんが手伝っていた保護団体が保護した子。

保護直後、動き方や見た目に違和感を覚えたため、動物病院へ連れて行くと「水頭症」であることが分かり、1歳まで生きられないだろうと宣告されました。

「水頭症」は、小型犬や短頭種に発症することが多いと言われている病気。脳内の圧力が異常に高まることによって、様々な神経症状が現れます。

飼い主さんは他のボランティアさんと交代でゆずちゃんを預かり、育てていましたが、保護団体の手伝いを辞める際、うちの子にしようと決意。

「置いていくことに不安を覚えましたし、うちにいる猫たちとも仲良くしていたので離してしまうと寂しいかなとも思い、引き取ることにしました」

当時、ゆずちゃんは利尿剤と眼振の薬を処方されていましたが、他になにかできることはないかと思い、飼い主さんは県内にある大きな専門病院へゆずちゃんを連れていくことに。

すると、「これほど重症な子は見たことがない。ここまで症状が進んでいると、できることはない」と、厳しい事実を突きつけられました。

さらに、獣医師から利尿剤や眼振の薬は副作用のほうが大きいことを聞き、落胆。

「保護団体にいた頃は、他のボランティアさんも気を使って投薬をしていたけれど、それは無駄に負担を与えていただけだったのか…と残念な気持ちになりました。水頭症に気づいたら、早めに高度医療の病院へ行ってほしい。重症化を防げることもあると思いますし、治療法がなくても、状態をきちんと把握できると不安感が減り、悲しいことばかりではないと気づける。私は、手やお金がかかっても一緒に生きていくと覚悟できました」

走り回らない猫が自宅にいるだけ

ゆずちゃんは寝たきりの状態で、目も見えていません。

たまに自力で寝返りをしたり、手足を動かしたりしてくれますが、体を動かすのは大変なよう。そこで、飼い主さんはゆずちゃんが少しでも快適に暮らせるよう、工夫をしています。

例えば、オムツ。

 

のゆずちゃんは犬用オムツを使用していますが、そのまま着用させるだけでは、おしっこが下に向かって流れ、漏れてしまうため、飼い主さんは人間用のナプキンをおむつと十字になるようにつけたり、股ぐりの部分をホチキスで留めたりしています。

「オムツはウエストのテープのところにナプキンの端がくるので、一緒におさえます。股ぐりは、余ったギャザー部分をホチキスで止めています。ゆずは歩かず、足が細くてオムツがブカブカなので、こうした配慮が必要です」

 また、体を動かすことがほとんどなく、体温が上がらないため、1年を通じて小型犬用の洋服を着せ、冷えて風邪をひかないように配慮。冬には湯たんぽなども使い、体調を管理しています。

「獣医師からは、おいしいものや好きなものを食べたいだけ食べさせ、好きなようにさせてあげてと言われています。水はしっかり飲ませてと言われているので、シリンジで流し込んでいます」

おうちには小型ケージの天井を外した、ゆずちゃん専用のベッドルームも。そこには体圧分散マットが置かれており、上に毛布が敷かれています。

「ご飯は、6時間置きにあげます。体を支えると自分で食べてくれますが、体が突っ張ったり曲がったまま戻らなかったりすることがあるので、中断させ、さすったり声をかけたりします」

そうした飼い主さんの姿を見ていたからか、同居猫たちもゆずちゃんには優しく接してくれているそう。

 

「ご飯の時は、お兄ちゃん猫がいつも近くにそっと座り、見守っています。残ったご飯の処理は任せてほしいみたい(笑)。他の猫と添い寝をしていることもよくある。狭そうですが、嬉しそうです」

そんな愛を受けたゆずちゃんは愛のこもった毛づくろいを返したくて空中をペロペロすることが。

「だから、お兄ちゃん猫やお姉ちゃん猫を近づけてあげると、ペロッとできた途端にスピードアップ。すごい速さでペロペロします(笑)」

心優しいゆずちゃんは、新入り猫のお世話に勤しむことも。

「ミルクを飲むほどの小さな子を保護した時、ゆずのベッドの中で一緒に遊ばせることがあるのですが、すごく喜んでゴロゴロ言っています。見えていなくても、匂いや鳴き声で自分より小さな子だと感じているようです」

医師からは「感情があるとは言えない状態」と言われたけれど、この子は他の子よりずっと喜怒哀楽が豊か――。飼い主さんがそう思うのは一緒に過ごす中で、ゆずちゃんのかわいい感情表現にたくさん触れ、何度も目を細めてきたから。

 

例えば、お風呂で体を洗うと、「毛づくろいできるよ」と言っているかのように、自分の腕や背中をペロペロ&かみかみ。

また、車のバック音が嫌いで、ご飯のお世話の関係で長時間離れることができず、飼い主さんと一緒に出かけた時には、バック音が聞こえると『うぅー!』や『ふぅーん!』など、かわいい声で文句を言うのだとか。

「周りからは、大変でしょうと言われることが多い。でも、ご飯の関係で家を長時間空けられないことが困るだけで、大変なことはなにもないです。おむつ交換は猫トイレの掃除と同じ感覚。やるべきことで、手間ではありません。症状に大きな変化もないので、気持ちの負担にもなっておらず、うちには走り回らない猫がいると思っています」

できないことはたしかにあるけれど、飼い主さんから愛され、大好きなお兄ちゃん・お姉ちゃん猫とぴったりくっついて過ごせる日常は、ゆずちゃんにとってかけがえのないものであるはず。

1歳を迎えることは難しいと言われた小さな命は今年の6月、4歳になります。

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