音楽や映画も…若者の倍速文化をどう思う? 音楽制作者のツイートが話題、クリエイターとしての見解を聞いた!

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「音楽とかも倍速にしちゃいます。テンポが速いのが好きなので」

YouTubeやニコニコ動画にリミックスやオリジナル曲の動画を投稿し、絶大な人気を誇る音楽制作者のかめりあ/Camelliaさん(@cametek)のツイートが話題になっています。

4月20日、日本テレビ系の朝の情報番組『スッキリ』にて、「動画などの倍速視聴が現代の若者の“新常識”となっている」という主旨の特集が取り上げられました。今回のツイート文は、その中のインタビューの内容を引用したもの。

IT化が進み、さまざまな情報が飛び交う現代社会。常にアンテナを張り巡らせ、知識をつけるペースも早めなければ、時代に取り残されてしまいそう…。そのため、動画のスピードを早めるというのは、有効な手段と言えるかもしれません。

実際に、かめりあさんのツイートのリプ欄にも、「先生の1時間に及ぶ講義動画は倍速で聞く」、「時間が無い時、倍速にして動画を見てます。通常の時間で見るより早く動画が終わりますからね」などのように、自身も倍速視聴を行っているというコメントも多くみられました。

ちなみに、筆者の20代の知り合いにも聞いてみましたが、リスニング力や速読力を高めるために、英語の教材のテンポをいろいろ変えて聴き返すことはよくあると話しており、確かに倍速視聴は現代人の主流にもなっているようです。

音楽や映画のテンポを早めるのはアリ?

このように、倍速視聴は時代に合っている方法といえます。しかし、音楽や映画などをテンポを変えて視聴する方もいるとのことで、その風潮には賛否があります。

リプ欄には、「割とマジで倍速にするとかっこいい曲とかあるので困る」、「倍速も良いですけど0.75倍とかで遅くするのも個人的にはアリです」といった肯定的な意見もある一方で、

「楽しみ方はそれぞれだけど常識にはされたくない」
「テンポが速いのが好きならもともとテンポが速い曲を聴けばいいのになあ…」
「もともと、作曲した人がこれが一番いいって思って設定したBPMなわけだからねぇ」
「否定する気はないし、それが主流になるのが時代の流れならそれは仕方ない事だけど、行間を読む、とか余韻を楽しむ、という感覚は失われていくんだろうな」
「お店で出された料理に醤油とマヨネーズぶっかけるような行為」

など、疑問を覚えたり、批判的な見解を示す方もいました。

確かに、音楽や映画などには、作り手側の多くの意図やこだわりが詰まっています。テンポや間も、作品の良さのひとつでしょう。それらを改変すると、その時点で作品の印象や質が変わってしまいます。

「それも含めて個人の楽しみ方」というのもひとつの意見でしょうが、「作り手の意図を無視するのは良くない」というのもまた筋の通った意見のように思えます。

その一方で、発信する側にも、DJのように既存の楽曲の一部を編集して使用するような文化もあります。

このように考えると、どちらが正しいとは一概には決められず、なかなか難しい問題のようにも思えますね。

音楽制作者としての意見は?

ツイ主であり、音楽制作者としても活躍するかめりあさんは、このような風潮や作品を改変することについて、どういった感想を持たれているのでしょうか。おうかがいしてみました。

――かめりあさん自身も、動画や音楽を倍速で観たり聴いたりすることはありますか?

かめりあさん:2倍まで早めることはなかなかありませんが、1.25~1.5倍くらいであれば時々あります。YouTubeで動画を観る時や、それこそ曲を聴いているときに再生速度を速めたり遅くしたりして遊んだりする事が多いです。

――ご自身でも、音楽の速度を変えて聴かれることがあるんですね。

かめりあさん:楽曲の速度を変えるのは新たな音楽の楽しみ方でもあるとも思っています。2000年代にスウェーデンのアーティストの楽曲をモチーフにした「ウッウーウマウマ」というミームが流行るなど、これまでにも再生速度を速めたり遅めたりした曲が人気になったことは何度もありました。このようなバージョンには、独特の良さ・味が生まれていることは確かなのではないかと思います。

――楽曲のテンポを変えるということに関して、かめりあさんは好意的にみておられるのですね。

かめりあさん:自分の意見が全てではない、と予めお断りさせていただけると嬉しいのですが、自分個人としては、「楽しんでもらう人がいればこそ」の音楽だと思っているので、倍速だろうが半分だろうが自由に聴いてもらえれば、というのが率直な意見です。また、以前からクラブシーンで育ったり、リミックスなどの表現に接してきた経験もあって、既存のモノの再構築や編集にはあまり違和感はありません。ですから今回の倍速再生の件については「そんな楽しみ方もあるんだ」と、ネガティブには感じませんでした。ただ、あまり多くを語らずにツイートしたこともあって、ツイート後には引用リツイートなどで賛否両論多くの反響を受けました。なのでその後、短いですがフォローアップのツイートもしました。

――かめりあさんご自身は、楽曲を作る際、テンポについてのこだわりは?

かめりあさん:自分は動画視聴者の方々から「凄く高速な曲」を作る担当のように思われている傾向がありまして。確かに、BPM(ビーツ・パー・ミニッツの略。音楽のテンポを決める単位)が1000や10000を超える楽曲を手掛けることもあります。2021年・2022年冒頭には、それぞれBPMが2021、2022の楽曲を公開したり、BPMが5000兆の楽曲を作ろうとしたこともありました。

――5000兆とは!想像ができません(笑)。…ではテンポ以外にクリエイターとしてこだわりをもち、改変などはされたくない部分などはないのでしょうか?

かめりあさん:こだわりがない人間というわけじゃないのですが、改変して欲しくない作品は特にありません!強いて言えば、リスペクトがあるかどうかや、そこに新たなオリジナリティがあるかどうかで感じ方が違うかもしれませんね。例えば、DJで使われたりとか、あるいは何らかの映像作品のBGMとして使われたりとかはとても嬉しいです。

――聴き手や使用する側にも意図や想いがあってこそ、ですね。最後にメッセージなどがあれば!

かめりあさん:今後も、皆さんが普段聴いている曲の倍速を超える楽曲を作っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

  ◇  ◇

価値観は創作者それぞれという前提はありますが、かめりあさんは相手にリスペクトやオリジナリティを感じられれば、楽曲のテンポ等を改変して聴かれたり、使用されたりすることに抵抗はないといいます。

大切なのは、単に倍速で聴くことが良いことかどうかを論じるのではなく、聴き手が制作者や楽曲に対してどのような想いで向き合っているか、ということなのかもしれません。

■かめりあさんのTwitterはこちら→https://twitter.com/cametek

■かめりあさんのYouTube Channelはこちら→https://www.youtube.com/c/Kamelcamellia/featured

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