先日、衆院議員の資産公開が発表された。今年の平均額こそ2924万円だったものの、国民の平均貯蓄額を大きく下回る議員が多いこと多いこと、資産0円という議員も77人と全体の16%を占めている。この一覧表を見るたびに、国民の多くの方は「そんな少ないわけないやん!」と違和感をお感じの方も多いのではないか。大体、貯金ゼロでどうして暮らしていくのだろうか。
なぜ政治家だけが資産公開なの?
この資産公開という制度は、国会議員は資産公開法、地方議員や首長もそれに準じた条例により毎年申告義務がある。分かり易く言うと、任期中に不正をして私腹を肥やしたりしないように監視するという目的でこの制度が存在している。
したがって、私も地方議員時代は毎年申告し、その内容は地元紙に掲載されてきた。しかし、申告しながら、これ程無意味で無駄な情報はないと常々感じていた。なぜなら、政治家の資産公開はザル過ぎて余りに中身がないからだ。
税理士もびっくりな抜け道だらけ
まず、普通預金は日常的に出入りする生活費なので資産には含めないという理由から、預金は定期預金に限り申告義務がある。つまり、定期に入れず普通預金口座にしている限り、何億円持っていても資産はゼロだ。ましてや、この低金利時代、定期にしても大した利息などつかないのだから、政治家は定期預金にお金を入れたがらない。
この時点で、資産公開はほぼ骨抜きだ。
次に、土地建物だが、これは基本的にご自身の名義なら漏れなく申告しており、ご自身のご自宅を購入しているケースなどは大抵申告されている。(ちなみに借入金も別途記載されているが、その多くは住宅ローンのケースが多いのは皆さんと同じだ。)但し、名義が本人ではなく、配偶者や親族にしている場合はここから漏れる。さらに、法人名義にしていれば個人資産からは完全に外れるので、多くの資産を持っている議員の中にはその多くを自分の資産管理法人に移す者も多いときく。したがって、こちらもザルだ。
その他の資産として、株、自動車、美術工芸品、ゴルフ会員権なども申告義務があるが、基本的に発想は昭和のままだ。昔でこそゴルフ会員権と言えば資産の代表選手だったが、今どきの若い人は会員権もそうそう買わない。逆に暗号資産、貯蓄型保険など様々な金融商品が出回っているが、こうしたものは報告の対象にはならない。株券は銘柄と株数を申告するが、その時価評価額は資産には含まれない。
一体何の意味が?
つまり、この資産公開を見ても何一つ真実は見えてこない。購読者の関心が高い為、各紙膨大な紙面を割いてこれらを掲載しているが実際は無意味な情報を垂れ流しているに過ぎない。「資産を持っている=悪」というイメージが強いことがこうした制度を骨抜きに指せていることも事実だが、正直これらの問題を是正できないなら、制度自体を廃止したほうがよいとすら感じている。
ちなみに、「この議員、意外に持ってるなあー」「この人、めちゃくちゃ資産あるやん」と思ったら、それこそ制度の趣旨に則り、正直に申告している議員かもしれない。