「1週間で殺処分…国の過激なやり方やめて」奄美大島の野生化した猫「ノネコ」の保護活動について聞いた

渡辺 晴子 渡辺 晴子

2021年5月、野生化した猫「ノネコ」の捕獲が進められている奄美大島から横浜にフライトしてきた女の子のマテリヤちゃん。譲渡型猫カフェ「CAITSITH(ケット・シー)」(横浜市都筑区)を運営するNPO法人代表・服部由佳さんのところに来たばかりのころは、ガリガリで毛もボソボソ・・・人にとてもおびえていたといいます。

 「サクラ耳だったので地域猫かと思いましたが、人間を未知の生物みたいな顔をして怖がるあたり、地域でお世話をされていたわけではないと感じました。体の状態やお腹から出てくる寄生虫の数を見てカエルやヘビなどを食べて必死に生きてきたのではないかと・・・」(預かりボランティアの青木さん)

おびえていたノネコ 今では指に塗ったちゅ~るをなめてくれるように

マテリヤちゃんは緊張が解けるまでの1週間、借りてきた猫のようにおとなしくしていましたが、1週間を超えて本領発揮。隔離ケージに近寄るだけで「シャー!!」と気の強さを見せつけました。

 「怖いよね、
 嫌だよね、
 だけどもう大丈夫だよ」

そんな声掛けをしながら、マテリヤちゃんがマテリヤちゃんらしく過ごせるように距離を保ちつつ少しずつ近付く努力をしたという青木さん。やがて、マテリヤちゃんは指に塗ったちゅ~るを「仕方ないわね」と言わんばかりになめてくれるように。機嫌の良いときには体をなでさせてくれるようにもなったといいます。

最近は、体もふくよかになったというマテリヤちゃん。一緒にダイエットに励んでくれる優しい里親さんを待っています。

左目が見えなくても愛おしい存在

そして、2021年12月に奄美大島からやって来たかなしゃちゃん。当時、キャリーバッグの中で小さな体を震わせながらおびえていました。左目が白濁している上に右目もショボショボ、クシャミを連発し鼻水が飛び出すほど体調不良なノネコでした。動物病院で抗生剤を処方してもらい、白濁した左目も診てもらったところ、獣医師から「視力は完全にない」と言われたといいます。

「『かなしゃ』は奄美の方言で愛おしいという意味。かなしゃと出会って、こんな小さな身体で片目しか見えないのに今までよく頑張って来たなととても愛おしく思いました。元気になればなるほど、お薬を飲ませるときにシャーシャーと怒られて大変ではありましたが・・・怒るのは元気な証と、私は逆にうれしく思っていましたね」(預かりボランティアの榎本さん)

薬を嫌がるかなしゃちゃんも少しずつ榎本さんに慣れてきて、徐々に怒らなくなったそうです。また、先輩の保護猫(以下、先輩猫)の様子を見てまねをするようにもなってきたとか。先輩猫が猫じゃらしにジャンプすると、かなしゃちゃんもジャンプ。夜寝るときに先輩猫が榎本さんの横で一緒に寝ると、かなしゃちゃんも布団にチョコンと座って寝ることも。

今となっては当初の弱々しかった面影はどこにもなく、自己主張をいっぱいするような猫に変身。食欲旺盛で小柄ながらもポッチャリしてきてかわいさも倍増、そしてとっても人懐こい性格になったといいます。

「かなしゃは、もうすぐ猫カフェにデビューしますが、きっと人気者になると思います。かなしゃのワガママを丸っと受け止めてくれる優しい家族に出会えますように」(榎本さん)

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世界自然遺産に登録の奄美大島 2018年からノネコを捕獲、300匹超える

世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島で進められている「ノネコ」の捕獲。2018年7月の開始からこれまでに、捕獲数が300匹を超えたと先日、環境省などが明らかにしました。同島には約600~1200匹のノネコがいるとみられ、ケナガネズミやアマミノクロウサギなど希少野生動物の脅威となっていることから、生態系を守るため国が捕獲に乗り出しています。

そして捕獲後の1週間、奄美市から認定された「譲渡認定人」が引き取らなければ殺処分になるといいます。その「譲渡認定人」の一人が服部さん。捕獲されたノネコの里親を探すため、2020年4月から譲渡型猫カフェを始めました。

「知人の『NPO法人ゴールゼロ』の代表で獣医師・齊藤朋子さんが、ノネコの譲渡団体『あまみのねこ引っ越し応援団』を立ち上げて、私も譲渡認定人として一緒に活動しています。今、私たち譲渡認定人の誰かが引き取っているので、いまだ殺処分は行われていません。ノネコが捕獲されると『捕獲ネコ新規収容のお知らせ』と題したメールが送られてきて、空輸で引き取ります。これまで受け入れてきたノネコは90匹以上です」と服部さん。

さらに、引き取ったノネコについて「一度預かりボランティアさんのところでお世話をしてもらい、血液検査やウィルス検査などを経て猫カフェにデビュー。譲渡につなげていきます。ただ、猫カフェに来るまでに最短で2カ月ほどですが、病気だったり、慣れていなかったりする場合はもっと時間が掛かります」と話します。

捕獲後の1週間で殺処分・・・譲渡団体が全頭引き受ける NPO法人代表「過激なやり方を止めてほしい」

一方、2018年7月に始まった国などによるノネコの捕獲事業は当初、10年計画とされていましたが、その計画に対して服部さんはこう疑問を呈します。

「最近捕獲された猫たちは、不妊手術をしたサクラ耳カットの子がほとんど。最初は耳もカットされておらずお腹に虫がいてやせていて、ノネコっぽい猫が多かったんですが・・・今引き取っている猫たちは、外で餌をもらっているような太っている猫が多くて、ノネコではなく野良猫ではないかと。そもそもノネコと野良猫の区別は困難で、捕獲計画自体が正当な行為なのか疑問に感じます。また、私が所属する『あまみのねこ引っ越し応援団』が3年半にわたり、捕獲したノネコ全頭を引き取り続けてきた実績なども踏まえいただいて、1週間で殺処分にするといった過激なやり方を止めてほしいものです」

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現在、服部さんが運営する「CAITSITH(ケット・シー)」では、奄美大島から引き取ったノネコの里親を募集しています。問い合わせは、Twitterアカウント(@CaitSith502)あるいはメール(caitsithnekochan@gmail.com)。

■Twitter:「CAIT SITH(ケット・シー)」(@CaitSith502)
https://twitter.com/CaitSith502

■HP:「CAIT SITH(ケット・シー)」
https://caitsith22.com/

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