あきらめないことを教えてくれた…生後2カ月で両後ろ足を切断したエールくん キャットタワーにも登るやんちゃボーイに

古川 諭香 古川 諭香

「本当に、すごいの一言。足がないからできないと決めつけていた私の考えを、ことごとく覆す生命力に日々、勇気をもらっています」そう語り、愛情のこもった眼差しを愛猫エールくんに向けるのは、飼い主のkuruma3013(@kuruma3013)さん。エールくんは交通事故に遭い、生後2カ月ほどで、やむなく両後ろ足を切断。しかし、ハンデを物ともせず、猫らしい生活を謳歌しています。

両後ろ足を失っても猫らしく生きるエールくん

エールくんは、保護団体が保護を進めていた多頭飼育崩壊の現場にいた野良の子猫。

ある日、車に轢かれてしまい、危機的状況に。餌やりさんは助からないと思い、安楽死を考えましたが、保護団体の介入により、入院治療を受け、なんとか一命を取り留めました。

しかし、壊死が進んでしまうため、轢かれた両後ろ足は切断することに…。当時、預かりボランティアとして保護団体と関わっていたkuruma3013さんの耳にも、そんなエールくんの話は飛び込んできました。「体重が1キロない、生後2カ月くらいの子猫だったので、そもそも麻酔に耐えられるか心配で…。とにかく手術が成功することを祈りました」

多くの人の「助かってほしい」という願いが通じたからか、手術は無事成功。

術後、初めて対面した時、kuruma3013さんの目にエールくんは猫ではない、何か別のかわいい生き物に映ったと言います。

頑張り屋のエールくんは術後、ほどなくして、すぐに前足だけで病院内を動き回り、自らリハビリ。

退院後は里親が見つかるまで、kuruma3013さん宅で過ごすこととなりました。

すると、エールくんは自宅で暮らす先住猫たちとすぐに仲良くなり、交流を深め始めたそう。

共に暮らす中で育て方のコツを掴めたこともあり、kuruma3013さんはエールくんを「うちの子」にしようと決意しました。

そして、手術を受けてから2カ月ほど経った、ある日。kuruma3013さんは、驚きの光景を目撃。なんと、エールくんが爪を引っ掛け、30センチほどの高さがある布張りのスツールに登っていたのだそう。

自分ができることを見つけ、猫らしく生きようとするエールくん。その姿に、kuruma3013さんは目頭が熱くなりました。

また、エールくんはトイレ時には前足で踏ん張り、お尻を浮かすように。

生きることを、決して諦めなかったエールくん。その頑張りのおかげで、前足や肩に筋肉がつき、1年後にはキャットタワーに登れるようにもなりました。

僕には、まだまだできることがたくさんあるんだよ――。日々、元気いっぱいな姿を見せ続けるエールくんは、もしかしたら日常を楽しむ姿を見せ、kuruma3013さんに、そう伝え続けているのかもしれません。

できないことよりもできることに目を向けたい

エールくんは、kuruma3013さんにとって「ハンデを持った猫」ではなく、「かわいいうちの子」。

共に暮らす中で、kuruma3013さんは飼い主にならなければ知れなかった“かわいいポイント”をたくさん発見してきました。

「目が合っただけで、コロンと横になってゴロゴロ言ってくれてかわいい。あと、2本足でも、逃げ足はものすごく早い(笑)。 伸びをする時、前足に力を入れるとお尻が持ち上がり、逆立ちになってしまうのも、かわいくて笑ってしまいます」

愛くるしさ満点のエールくんは、一緒に暮らすお兄ちゃん猫たちからもかわいがられているよう。おうちでは、みんなの弟的存在となっています。

「他の猫たちが上に登るのを見て、自分も登りたいという気持ちになり、キャットタワーに挑戦したのだと思います。仲間がいることが、エールには良い影響になっているんです」

自分ができそうなことに対して、常に前向きに挑戦し続けるエールくん。そんな愛猫に、ずっと元気でいてほしいからこそ、飼い主さんはおうちで様々なサポートを行っています。「体が成長する前に断脚した影響で、骨盤が発達しておらず、便秘になりやすいので、ご飯はロイヤルカナンの消化器サポート可溶性繊維をあげ、毎日お腹のマッサージをしています」

さらに、前足に負担がかからないよう、体重もしっかりと管理。紡がれた命を大切に愛で、明日の笑顔に繋げています。

なお、kuruma3013さんは同じようにハンデを持つ猫と暮らしている飼い主さんに向け、経験者だからこそ言える、温かいメッセージを贈っていました。

「最期まで、猫の生命力の強さを信じて諦めずにサポートし、できないことよりできたことに喜びを見出していくと、少しずつ不安も消えてくるのではないかと思います」

エールくんのように、ハンデを持っている猫は里親がなかなか決まりにくいのが現実。しかし、人間と同じで猫もどんなに健康であったとしても、いつ、どんなハンデを抱えることになるかは分からないもの。

障がいと共に生きる猫たちは決して特別な存在ではないからこそ、彼らが見過ごされず、「ずっとのおうち」を見つけやすい社会になっていくことを願いたいものです。

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