UMA?チンパンジー?→実はツキノワグマです!?手作りの“魔法の竹筒”に野性爆発!幸せそうな姿に「うれしい」の声

茶良野 くま子 茶良野 くま子

神戸市立王子動物園。カランコロンと小気味良い音に惹かれ辿り着いた先には、竹筒を振り回して遊ぶツキノワグマが。無邪気に遊ぶ姿はSNSにも多く投稿され、その器用さや驚きの体勢に「お上手」「ブルース・リー…目指してる?」「うれしそうなのを見るとうれしくなる」などと大反響。ほかのクマも木をもらっていたり、動物展示場に手作り風のものが置かれていることもあるのですが、いったい何のため? 同園の獣医師で飼育展示係長の谷口さんに聞くと、動物たちの生活の質を少しでも良くしたいと、地道に取り組む飼育員の思いが見えました。

にじみ出る「野性」

―ツキノワグマが竹筒を振り回して楽しそうです!

「竹筒にはエサのクマ用ペレットを入れています。野生の採食行動に近い動きを引き出し運動量を増やす狙いもあり、オスの『タケ』は食べた後もよく遊んでいます。メスの『クマ子』は食べたら終わりみたいですが…。2頭とも野生保護個体で、タケは人懐っこい性格で、クマ子は警戒心が強いです」

―いろいろな動きに、「かわいい」「器用」「足の裏丸見え」と大人気です

「実はタケは肥満気味でして…。時間をかけてエサを食べ、同時に運動量を増やすことでダイエット効果も期待し、ほかに遊び道具として木も与えています」

―えっと…効果はこれから? チベットヒグマとエゾヒグマも木でよく遊んでいます。ホッキョクグマにもずっと愛用している木があると

「園内のカシの木です。以前、敬老プレゼントとしてエサを飾り付けて与えたものです。ホッキョクグマには太い黄色いガス管も与えていましたが、激しく遊びすぎるおそれがあったので今は出していません。高齢ですので体調面に影響が出ないよう配慮しています」

―飼育員さん特製の物も多いようで、ヤマアラシには最近、木製の「お立ち台」が

「ヤマアラシの歯は硬いものをかじらせないと伸びる一方なので、木をかじらせ適度な長さになるように努めています。高さのある台を造ったことで、上に上がるようになり、行動時間が増えました。動いている姿、エサを食べる様子が見やすくなりました。次は、エサを工夫して入手できるような仕掛けを考案中です」

剪定した枝や台風で倒れた木も有効活用

ボブキャットの展示場には、以前、スポーツ用品メーカーからプレゼントされたボールに加え、時々、大きな木箱が置かれるように。リンゴ箱を再利用したもので、ネコと箱の相性の良さは抜群。隠れ場所にしたり体を擦り付けたりと楽しんでいます。ネコ科動物には、爪とぎ用として園内で調達した丸太が活用され、ジャイアントパンダの屋外展示場に置かれた大きな木は、以前、台風で倒れたモチの木。園内で剪定した木の枝葉は、ゾウなどのエサにもなっています。

「動物の生活の質を向上させる手段のひとつとして、『環境エンリッチメント』に取り組んでおり、飼育環境に変化を与え、動物の本来の行動、多様な行動を引き出せるよう努めています」と谷口さん。「特に木を与えた場合には、『食べる、歯を削る、爪をとぐ、角をとぐ』など、それぞれの動物が野生でするであろう行動や、遊具として『咬む、遊ぶ』といった行動を引き出き出すことができ、『動物福祉』を向上させる効果があります。また、剪定された枝などを廃棄せず活用することで、環境への配慮と動物福祉の向上の両方に貢献でき、SDGsの観点からも有意義だと考えています」 

王子動物園がある王子公園については現在、神戸市が再整備を進めようとしています。1月中旬まで行われた意見募集では市内外から多くの声が寄せられ、担当する市の未来都市政策課では「意見を集約し2月下旬をめどにHP等で発表予定」とのこと。

その素案では、動物園にグイッと食い込ませて立体駐車場を整備する考えが地図上でしれっと提示され、「動物園の展示方法が陳腐化している」と聞き捨てならない文言も。遊びに夢中なクマをのんびり眺めていたい来園者にとっては、今後の動きが気になるところですが、谷口さんは、「動物園については、動物福祉にも配慮しながら獣舎のリニューアルなどを行っていく予定です。今後、皆さまのご意見もお聴きしながら進めていきます」と話してくれました。

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