劣悪な環境で、ごはんもない…飼育崩壊の地獄から生還した保護猫 先住猫と兄弟のようにのびのび暮らす

中河 桃子 中河 桃子

地域猫「トラくん」との出会いと別れを経験し、動物の持つ癒しの力を実感したことから譲渡会で出会ったふくまるくんと2019年に家族になった滋賀県在住の西村さん。そこに新たにししまるくんを2020年にお迎えすることになります。

初めての客人でも必ず出迎える人なつっこい性格のししまるくん。ふくまるくんより一回り大きな体からお兄ちゃんのように見えますが、その反面、ふくまるくんのご飯まで平らげてしまう奔放な弟のような顔も。

弟か、お兄ちゃんどちらでしょう、と尋ねると、西村さんは「年齢がわからないんです」と明かしてくれました。と言うのも、ある事件の“生き残りだから”と話します。

劣悪な環境から生き延びた猫

その事件とは、2020年6月に京都府八幡市で起きた動物虐待のこと。

約25年間、犬や猫を無償で引き取り続けたことから、保護ボランティアの間で「神様」とまで呼ばれていた女性がいました。しかし実際は、近隣の住民から悪臭や鳴き声の苦情が絶えなかったり、引き取られた動物が里親へ譲渡されるといった情報が女性側から聞かされなかったりと、飼育環境に疑問を持つ動物愛好家やボランティアが少なくなかったそう。

関係者の不信感がつのるなか、同年同月、動物保護団体が女性宅に踏み込んだことで内情が明らかに。屋内で飼育されていた犬や猫は、ろくにエサを与えられず餓死していたり、劣悪な環境で飼育されていたりしたことが発覚しました(女性は2020年11月に動物愛護法違反の疑いで逮捕)。

年間200頭近くが飼育されていたという女性宅は、約16トンもの犬猫の糞尿が天井近くまで積もり悪臭もひどく、足元には白骨化した犬やネコのほか、散乱したゴミで足の踏み場がないほどでした。

そのショッキングな様子は、動物保護団体によってライブ配信され、ネットを介して惨状が広く知れ渡ることに。50匹を超える死骸が発見されるなか、「せめて生きている子を」と捜索が行われ、25匹の犬と4匹の猫だけが助け出されました。そのうちの1匹が、ししまるくんでした。

ししまるくんは、壮絶な飼育環境から生還した、数少ない生き残りだったのです。

聞くに堪えない壮絶な生い立ちにもかかわらず、愛嬌をふりまき、訪問客の膝の上でゴロゴロと喉をならす姿に「もしも、あの場所で生き残るために身に着けたふるまいだったらと思うと、泣けてきます」と、西村さんは話します。

今は西村さんの愛情を一身に受け、本当の兄弟のようにのびのびと過ごしている2匹。彼らのように、里親のもとで幸せな余生を過ごして欲しいと願わずにはいられません。

動物保護ボランティア団体「ぼくらはみんな生きている」
いぬねこ譲渡会
期間:毎月(不定期)
場所:アル・プラザ野洲(駐車場)、滋賀県甲賀市まちづくり活動センター「まるーむ」
facebook:ぼくらはみんないきている https://bit.ly/34KE4Vf

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