絵画の額縁のようなドアから、ひょっこり覗き込んだ鹿達が戯れる動画には、「人通りより鹿通りの方が多い今日この頃です。人間はステイホーム中なんでしかたないか。」と第6波が来たコロナ禍中にいる店主の心中が吐露されている。
人通りより鹿通りの方が多い今日この頃です🦌
— さんなすび (@sunnasubee) January 27, 2022
人間はステイホーム中なんでしかたないか。 pic.twitter.com/4tCTsRyS8d
ツイートしたのは、町家が並ぶ奈良市の旧市街「奈良町」にある「帆布といきもの さんなすび」の店主・近藤訓子(こんどうのりこ)さん。「奈良の日常」を通じて、人々の心を掴んだ近藤さんにお話を伺った。
「見慣れた日常の風景です」
――絵本のような鹿達の動画から、奈良の日常とコロナ禍中の心情が伝わってきました。反響を知って、どのように感じておられますか?
近藤さん「実は、普段からツイッターの通知を切っているので、こんなにリツイートされていたことをこの取材で初めて知りました。あの動画の鹿達は、親子でよく店の前を通るお馴染みの鹿です。フォロワーさんの話によると、斜め向かいの空き地が2~3年前は鹿せんべい工場だったみたいで、いつも同じメンバーの鹿が来て、のんびり日向ぼっこしているんですよ」
――なるほど、鹿達はお店のご常連のような感じなのですね。赤い壁紙にエメラルドグリーンの枠がついたガラスのドアは、まるで絵画の額縁のように見えます。そこから、鹿がじっと眺めていたら、日本の風景とは思えない童話の世界のようですね。
近藤さん「確かに、販売しているバッグの帆布カラーが100種類ありますし、店内の壁紙も4色なので、とにかくカラフルだなとは自分でも思います(笑)。2021年の8月に近くのもちいどの商店街(夢キューブ)から移転してきたのですが、開店祝いに頂いた木やお花の葉っぱは、鹿達に食べられてしまいました。
その時には、「こんにちは」みたいに店内にも入ってきたのですが、今はもう美味しいものは無いと分かったのか店内までは来なくなりました。いつもの鹿の子達が並んでお店の前を通過する散歩姿は、本当に見慣れた日常風景です」
奈良公園内の樹々の高さ約2m部分は、鹿が届いて葉を食べてしまうため、「ディアライン」と呼ばれる枝葉が無い独特の景観がある。なんと、同店の入り口の木にも「ディアライン」ができていたのには驚かされた。
――このガラスドアの風景には、鹿以外の他の「いきもの」が登場することはあるのですか?
近藤さん「奈良町は、『にゃらまち猫祭り』が開催されるほど、地域猫が多いエリアなので、2匹の猫がよく登場します」
「鹿に助けられて、割とおいしい思いをしている」
100種類のカラーバリエーションから選んだ帆布に、イラストレーターのむらさきさん(@nyankobem)と近藤さんによる「いきもの」のオリジナルイラスト150種類以上から好きなイラストを選び、約40分で転写してもらえる。そのため、ペット好きのお客さん間で口コミにより広がり、人気があるという。
――「いきもの」のオリジナルイラストが特徴のお店に鹿や猫といった実際の生き物が身近にいるのは、何だかいいですね!やはり人気商品も鹿のイラストなのでしょうか?
近藤さん「お土産枠では、奈良らしいので鹿のイラストは人気があります。でも、人種を問わず一番人気なのは、実は『しば犬』のイラストなんですよ。今はコロナ禍なので、海外からのお客さんは来られませんが、以前は世界的に『しば犬ブーム』が来ていて、缶バッジなどの手頃な価格の商品は、1人のお客さんが全部買い占めてしまうほどでした。
あとは、ウーパールーパーやハリネズミ、チンチラなど、ペットを飼っているお客様が、飼っているけれどそのグッズが一般的に販売されていないため、オーダーできるのが嬉しいと注文して下さることが多いです」
――奈良は観光地なので、新型コロナウイルスで、インバウンドがなくなり、経営が厳しい商店は多いと聞いていますが…。
近藤さん「うちは、扱う商品が腐るものでは無いので、まだ大丈夫ですが、飲食店は本当に辛いと思います。同じ奈良町の商店主仲間がこの1月はどの店も本当に酷い状況だと言っていました。うちも客層がインバウンドや観光客の方が多い店なので、第6波が来た今年の1月は本当に厳しく、お客さんがゼロの日もありました」
同店がある奈良町は、奈良観光の中心を担うエリア。コロナ禍になってから、観光客を相手にしていた店舗の閉店が相次いでいるという。
そんな状況にもかかわらず、「このお店のツイートもネタに困ると鹿ネタばかり呟いています。鹿ネタツイートはいつも結構反応があるんですよ。鹿に助けられて、割とおいしい思いをしていると思います(笑)。鹿と猫と一緒に待っていますので、落ち着いたら、遊びに来てください」と朗らかに近藤さんは笑った。
近藤さんは、「厳しい状況の中で、少しでも楽しいことをしよう」と2月1日に新商品「猫型トートバッグ」(3980円)を販売開始。同店で500円以上の商品を購入すると、猫のポチ袋に入ったお菓子がプレゼントされる。その袋の中に「当たり」があると、この「猫型トートバッグ」が貰えるという太っ腹ぶりだ。更に、2月中旬にツイッターのフォロー&リツイートで同商品が当たるかもしれないプレゼントキャンペーンを行う予定。
「帆布といきもの さんなすび」
住所:奈良県奈良市西寺林町 北端 丸谷ビル 23-2 1F
営業:10:00~18:00
定休日:水曜日
電話:070-2298-4975
公式URL https://sunnasubee.stores.jp/
公式ツイッター https://twitter.com/sunnasubee
(Lmaga.jpニュース特約・いずみゆか)