愛犬、愛猫など家族同然の動物と暮らす人に、いつか訪れる永遠の別れ。心の準備はしていたはずなのに、思いがけないペットロスに苦しむ当事者として描いた漫画が読まれています。時間、愛情を注ぎこめる新たな対象など、回復に必要なものは人それぞれでしょうが、漫画は読む人に語り掛けます。大好きなペットとの毎日の時間を大切にして、と。
Twitterユーザーの漫画家アキサワリョウタ(@aki3wa)さんが自身の経験を踏まえた漫画「ペットロスを経て新しい家族を迎えた時の話」がSNSで読者を集めています。「考えたくもないけどいつかくるこの日の為に私もちゃんと準備しないとなぁ」「すべてのわんちゃんねこちゃん好きな方に読んでいただきたい」などの声とともに、ペットロスを経験をしたというユーザーも共感しています。
10年以上アキサワさんの家族だった柴犬のリーフが死んだのは2019年12月。18歳11カ月。最後の1年は心臓弁膜症などの病気で介護を受ける状態で、「その時」のために心の準備を重ね、愛犬を看取りました。不意に涙が止まらないなど心身に異変が生じたのは、その4カ月後。仕事に打ち込み気を紛らわせようとしましたが、漫画も描くなくなり、抑うつ状態と診断されました。連載は中断せざるを得ませんでした。
リーフがいなくなり、寂しい思いをしているのはアキサワさんの父母も同じでした。「新しい犬を迎える気はないか」とのお父さんの言葉に心が揺らぎますが、リーフへの罪悪感から踏み出せません。そんな迷いを断ち切ってくれたのが、元の飼い主の気持ちが離れてしまい、新たな家族を探していた犬でした。散歩もろくに行けなかったその犬と歩くうち、リードから伝わる命にアキサワさんは引き取ることを決めます。「リーフの代わりなんかじゃない。この子はこの子なんだ」と。
2代目愛犬は先代の名から一文字を取り、幸せを願って、フクと名付けたというアキサワさんに聞きました。
―つらい記憶をあえて漫画にしたのは
「気持ちの整理もありますし自分にしか描けないマンガを考えたときにこの題材が思いつきました」
―描いているときは
「作業をしていた12月2日はリーフの命日の日だったので、たくさんのことを思い出しました。リーフは息を引き取る寸前、私たち家族の前でクゥーンと鳴き、尻尾を2回振ってから眠りにつきました。そのことを思い出しフクを抱きしめました」
―2年しか、なんですね
「リーフのことは毎日思い出します、というより頭の中に自然に思い浮かびます。よく人は2度死ぬ、最初は医学的な死、2回目は記憶から消滅した時といいます。人間だけでなくペットもそうではないかと思います。リーフのことを忘れることはないと思います」
―大勢の人が共感しています
「読んでいただけてとてもうれしく思いました。ペットへの思い入れは同じではなくしいろんな考えがあるかと思います。ペットロスの度合い、乗り越え方も人それぞれだと思います。自分のペースでゆっくり受け入れていけばいいと僕は思っています。そういう方のきっかけや、背中を押せるような漫画になれていたらうれしく思います」
―漫画を通して伝えたかったことは
「コロナ禍でペット需要が増えたからこそ、フクのような辛い思いをする子が減ることを祈ります。命あるものはいつ、どこでそれが終わるかなんてわかりません。人も動物も同じです。だからこそ大好きな人、大好きなペットとの1日1日を大切に過ごしてほしいと願います。そしてフクの以前の飼い主さんへの発言は控えていただければありがたいです」
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アキサワリョウタさんはSNSで作品情報などを発信しています。
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