東京パラリンピック車いすバスケットボール女子に出場した北田千尋さん(32)のツイッター(@ck_cocktail13)が、動物好きからひそかな人気を呼んでいる。引っ越ししたばかりの自宅前に突如として現れた猫の「もふもふ氏」との交流が、同時進行の物語のようにツイートされているのだ。だれかに飼われているのか、地域猫なのか、保護すべきなのか…。パラアスリートともふもふ氏の未来を、3カ月足らずで2000人を突破したフォロワーたちが見守っている。
滋賀県で暮らす北田さんは東京パラで6位に食い込んだ日本のエースで、チームの得点王にもなったすごい選手。京都や大阪などで活動する「カクテル」というクラブでプレーしている。パラの熱気をできるだけ継続させて女子車いすバスケを盛り上げようと、9月からツイッターを始めた。
当初は競技や暮らしの知恵などをつぶやいていたが、11月15日に「気になる子ができました」と、もふもふ氏との出会いを初ツイート。「よっしぁぁぁぁー!! 撮影に成功!!」と、画像もフォロワーに披露された。もふもふ氏は美しい白い毛並みと青い瞳が特徴。首輪はしていない。その後も、北田さん宅前に毎日ほぼ同じ時間に現れ、とうとう、ベランダでくつろぐまでになった。時には、北田さんが日課とする毎朝のヨガをのぞかれることも…。
もふもふ氏への愛情は高まるばかり。「野良猫のためにできることのうちに捕獲して避妊手術を受けさせてから元いた場所に返す活動もあるみたい」。北田さんの行動は早かった。「何がこのこの幸せなんやろ」と自問し、動物管理センターに電話して避妊手術をするための捕獲器を借りた。飼い猫の可能性も捨てきれないため、「この子の飼い主さんはいませんか?」と記したチラシを自作し、区長の許可を得て1人で近所に30軒近くポスティングした。動物愛護団体にも電話し、アドバイスをもらった。
「野良猫は元々人間が作り出したものなのに人間によって殺されるのは勝手すぎる。自分が最後まで責任を持てる範囲でできることをしたい」。そんな取り組みを見て、手術代をカンパしたいと連絡をくれた人も出てきた。
「一番望んでいるのは飼い主さんが見つかってこんな準備が全部無駄になってくれること」。もふもふ氏になぜか心ひかれ、自身の時間を削って奔走する北田さん。捕獲から手術はうまくいったのか、誰に飼われることになったのか…。その行方は、競技活動の紹介とともに更新が続くツイッターで確認してほしい。
北田さんにもふもふ氏のツイートについて聞いた。
―元々、猫好きなのですか?
「実家でいろいろな猫を保護していまして、小学生時代から猫とは接していました。学校の保健室で飼ったこともあります」
―猫の魅力ってなんですか?
「互いに空気のような存在でいられることでしょうか。人と猫、互いに干渉せずに暮らしていけるような心地よさがあると思います。自分も他人に干渉されるのは嫌い。猫の生きざまはかっこよく感じます」
―ツイッターでは、フォロワーの皆さんも北田さんともふもふ氏の未来について気になっているようです。
「果たしてこの記事に需要はあるのでしょうか…。野良猫がなぜ増えるのか。命の責任を負うことについて、みなさんに考えてもらうきっかけになれば、と思います」