おかしいよ!アパレル業界の自腹ルール 「7時間15分で会社を辞めた」の漫画に広がる共感の声

竹内 章 竹内 章

「お店の服を買わないと働けないなんて」―。強制的に自社製品の購入を迫る「自腹ルール」に、毅然とした態度を貫いたツイッターユーザーのzettdot/ZENZO(@zettdot)さんが投稿した漫画「7時間15分で会社を辞めた」が話題です。実体験を踏まえた物語で、「アパレル時代思い出しちゃったよ…買わされてたなぁ…」「どこに相談すればいいんですかね、こういうの。労働基準監督署?」「こちらの作者の方のおかげで、この会社のルールが変わるきっかけになるといいな」などの共感の声が上がっています。 

「買って着替えてからじゃないと」

投稿は3万以上リツイートされ、7万超のいいねが付くなど拡散。似たような目にあった人も多いのでしょうか、商品を買わされた経験についてさまざまなコメントが寄せられています。一般的に、会社が福利厚生の一環として、自社製品を割引価格で販売し、従業員に自社製品の購入を薦めること自体は問題ありません。しかし、会社側が強い立場を利用して、従業員の同意なく、自社製品などの購入を強いることは、従業員に対する不法行為となりかねないそうです。 

漫画の主人公は転職活動を頑張ってセレクトショップで働くことになったzettdot/ZENZOさん。初日の勤務を無事こなし、意気込んで出社した2日目、思いがけないことが待ち受けていました。売り場の商品3、4着を買うよう店長から命じられたのです。社販を使っても1着1万円は下りません。「それに着替えてからじゃないとお仕事できません」と強いる店長に「法律に違反するので同意しかねます」と冷静に対応する投稿主さん。さらに社長は「法律だかなんだか知らないけど、ウチはそうやってやってきたんだから入社二日目のあなたにそんなこと言われるのもなんかちがうよね」と法律よりも企業内ルールを優先させることを明言します。やり取りの末、辞めることを伝えたのは出社から15分が過ぎたころ。これがタイトルになりました。

労働基準法第24条は、賃金はその全額を支払わなければならないと定めており、原則として給料の天引きは認められていません(全額払いの原則)。ただし、法令で定められた税金、社会保険料といったものは天引きが認められています。また、書面による労使協定がある場合、 社宅料や親睦会費などを天引きすることも可能です。一方、協定がない状態で、業務上必要な費用を天引きしたり、労働者が会社に与えた損害を給料から控除することは認められていません。

 漫画の最後のコマを「無職になった」「絵や漫画の仕事お待ちしております」と結んだzettdot/ZENZOさんに聞きました。

 ―ショックな出来事をあえて漫画にしたのは

「同意のない強制的な購入は法律に触れることは以前から知っていました。アパレル業界でまかり通っているこの問題を広く知ってもらうために漫画にしました」

黙っていては何も変わらない、誰も助けてくれない

―意志を貫くことは並大抵のことではないと感じました

「学生時代いじめに遭ったことがあり、『黙っていては何も変わらない、誰も助けてくれない』と身をもって学んだことが大きいと考えます。誰も動かないなら、私がやるしかないと思っています」

―15分間にどんな出来事があったのですか

「出勤してすぐ店長から『その恰好では売り場に出せないので、商品を複数購入して着替えるように』と指示がありましたが、私は『そんな話は聞いておらず、用意もしていないし、違法なので同意できない』と答えました。店長は驚いてすぐ社長に電話をしていました。私は売り場に出られずバックルームで待機していました。しばらくして店長から『社長と話すように』と電話を渡されました」

―どんなやり取りが

「『商品の自腹購入を強制することは問題であり、どうしても売り場でスタッフが自社の商品を着用する必要があるなら制服として支給したり、費用を会社が持つなどするべきだ』と説明しましたが、『法律だかなんだか知らないけれど、アパレルならこれが普通である』『入社2日目のあなたにとやかく言われるのはおかしいと思う』と突っぱねられました。その後、『こうなってしまった以上、どうされますか。残られてもいろいろあるでしょうし、お辞めになりますか?』と聞かれ、『そうですね』と即答しました。自腹で商品を購入しなければ仕事ができない、しかし自腹購入の強制は私は受け入れられない、となれば、辞める以外に選択肢がありませんから、帰り道は清々しい気分でした」

―漫画が広く共感されています

「たくさんの方が『私が経験した自腹購入は違法だったのか!』と気付かれていました。啓蒙になり大変うれしく思っております。このままだと餓死するというツイートに『生きて!』とコメントいただいたのも面白かったです(笑)。私たちは多くが雇われる側、労働者です。労働者は雇う側つまり企業や会社に比べるとはるかに弱い立場です。だから労働基準法という法律で守られているのですが、労働者も会社もそれを知らなさすぎます。より多くの労働者が自分たちの権利について調べ、学んで、よりよい労働環境を作っていければいいと思っています」

今回の出来事を労働基準監督署に相談したというzettdot/ZENZOさん。その様子も漫画にしています。

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zettdot/ZENZOさんは、決闘型テーブルカードゲーム「ユニオンボーダー」(https://www.team-connection.website/)で、赤鬼のカード4種と公式漫画を担当するなど、イラストレーターとして活動しています。

イラスト関連の依頼はツイッターのDMで。アカウントはこちら→https://twitter.com/zettdot

作品などのサイトはこちら→https://zenzo-leopardzscsh.wixsite.com/romywai

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