信州ワインで保護猫を支援!猫と村を想うワイン事業者が貢献プロジェクトを開始

鶴野 浩己 鶴野 浩己

売上の一部を寄付することで保護猫活動を支援するワインプロジェクトが始動している。プロジェクト名は『vinowarinohajimari』。発起人は、上質なワインぶどうの産地として知られる長野県高山村の「信州たかやまワイナリー」取締役執行役員醸造責任者・鷹野永一さんと、ワイン小売業を営む「野口店舗開発」代表取締役・野口美紀さんだ。

 身近な命を救いたい

プロジェクトが動き出したのは2020年5月。きっかけとなったのはコロナ禍だ。

「世界の子どもたちのお母ちゃんになりたい」という壮大な夢を持つ野口さんは、自身のワインビジネスの収益で、世界の子どもたちが幸せに暮らせる環境づくりに貢献したいと考えていた。その第一歩として計画したのが、ボルドーワインの輸入販売。市場調査も兼ねて、2020年5月にボルドーに渡航する予定を立てていた。

ところが、時期を同じくして世界をコロナ禍が襲う。渡航が制限され、日本に足止め状態となった野口さんは悶々とした日々を過ごしていた。

「今の自分にできることって何だろう…?」

そう思い悩む野口さんのそばにいつも寄り添ってくれていたのが、一緒に暮らす保護猫の『マル』。

マルがのんびりとくつろぐ姿を見て、「外の世界には、安心して暮らせない猫がたくさんいる。世界の子どもたちの前に、まずは身近な命を救うべきでは?」。そう、思い立った。

 ワインを通じて村に人と活気を

一方の鷹野さんもまた、コロナ禍で自身の夢が苦境に立たされていた。

「高山村産のワインを通じて、高山村の魅力を多くの人に知ってほしい」と願う鷹野さんは、2016年から『Naćho(なっちょ)』というワインの製造販売を開始。

フレッシュで果実味溢れる自信作だが、ワインが育まれる地域の人にこそ日常的に親しんでほしいとの思いから、販売は村内の酒屋と同ワイナリーのみに限定。そこには「いずれこのワインが高山村の宝となり、同地を訪れる人たちにも喜んでもらえるものになるはずだ」という期待もあった。

実はこの高山村、村内に8つの源泉がある温泉地としても有名。上質な果樹やジビエといった食も楽しめることから、そもそも観光客が少なくない場所だった。そこで、訪れた人たちにワインを飲んでもらうことで、村とワインの認知を広げていこうと考えていたのだ。

しかし2020年の春以降、コロナの影響で観光客が激減。出荷量は前年比10分の1まで落ち込んだ。

「これまでのやり方では、せっかく作ったワインが売れ残ってしまう。何か新しいことに挑戦するしかない」。

そう思いはじめた矢先に、野口さんから連絡が届いたという。

「鷹野さんの置かれている状況を伺ってすぐに、今回のプロジェクトを提案しました。私の夢と鷹野さんの夢は、きっと1本の道でつながる。何より鷹野さんの、ワインと村に懸ける想い、そのあたたかい人柄を知っていましたから、命を救うこのプロジェクトは絶対に鷹野さんと組むべきだ!と思いました」(野口さん)。

 「はじめの一歩」で終わらせない

そうして2020年6月からプロジェクトが本格始動。同年11月17日にはワインの通信販売をスタートした。

ワインは白を限定300本用意。辛口でクセが少なく、バランスのいい味わいは、冬は鍋料理をはじめとする和食、春は山菜の天ぷらなどとも相性抜群で、刺身や寿司との組み合わせも楽しめるという。

「ワインは食事をしながら楽しむ飲料なので、出しゃばりすぎない味と香りを目指しました。幅広い料理と調和がとれるワインです」と鷹野さん。

野口さんも、「仕事柄、たくさんのワインをいただいてきましたが、個人的にも私はNaćhoの大ファン。本当においしいと思うからこそ、たくさんの方に知ってもらいたい」と自信をのぞかせる。

販売するのは『Naćho』だが、プロジェクトでは『Premiere』という新たな名とラベルを用意。Premiereには、フランス語で「はじめの一歩」という意味が込められている。

「日本はビジネスと貢献を分けて考えがちだが、貢献だけでは持続が難しいのが現実。ビジネスと貢献をうまく融合させながら、幸せな命を増やすプロジェクトを続けていきたい」と野口さん。

「縮こまっている世の中で、新たな挑戦を始められたことがとてもうれしい。2歩、3歩…と進んでいけるように、プロジェクトを大きく育てていきたいですね」(鷹野さん)。

春の訪れを感じる季節に、自分や大切な人へ「はじめの一歩」を贈ってみるのも素敵かもしれない。そしてそれは、猫たちの新たな幸せへの第一歩にもつながっていく。

https://vinowarinohajimari.jp/premiere/

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