窓明かりが毎年「1.17」になっているあのビルは? 阪神・淡路で全壊…受け継がれる熱い思い

黒川 裕生 黒川 裕生

阪神・淡路大震災で亡くなった人を悼み、教訓をつなぐ追悼行事「1.17のつどい」の会場である神戸・三宮の東遊園地。ここに隣接するビルの窓明かりが毎年、行事が営まれる1月17日に必ず「1.17」の形になっているのをご存知だろうか。もはやあまりにも“当たり前”の風景になっているため、地元でもほとんど意識されることはないのだが、そもそもあれは何のビルで、誰が、何のためにやっているのか。震災から26年を経たタイミングで、あらためて取材した。

神戸関電ビル独自の取り組み

結論から書くと、あのビルは関西電力グループの「神戸関電ビルディング」。会場に面したビル北側の窓明かりを「1.17」にする取り組みは、震災から10年となる2005年、関西電力神戸支店(当時)が「地元企業として追悼行事に協力したい」との思いで始めたという。

隣に高層マンションが建設されたため、実は09年からは文字が少し小さくなっているが、黙祷が捧げられる1月17日の午前5時46分と午後5時46分を中心に、10階から15階の窓明かりを使って「1.17」を浮かび上がらせている。

実は…地味だけど結構大変なんです

正直、「該当する部屋の電灯をオンにして残りは消しておく」程度の簡単な作業かと思っていたら、これがなかなか大変らしい。ビル北側の窓には予めひとつずつアルファベットを割り振っておき、「15階のaはオン、bはオフ」といった目印に。平日の夕方は中で人が働いており、備え付けのブラインドを下ろしても明かりが漏れてしまうので、オフにする全ての窓にはこの日のためだけに遮光性の高い暗幕を設置。前日までに、フロアや部署の垣根を越えて準備するという。

そもそも、朝に照明のスイッチを入れるには午前4時台に“出社”しなければならず、自宅が遠い社員が受け持つ場合は、近隣のホテルに前泊することも。そして翌18日には、取り外した暗幕を担当者が回収して回り、また1年間大切に保管するのだ。

阪神・淡路で旧ビルは全壊

関電グループがこうした取り組みを続けているのは、自社の被災経験も大きい。

現在の神戸関電ビルができたのは2000年。旧ビルは阪神・淡路で全壊した。社員らは混乱の中、各地の仮設事務所に分散して業務に当たったという。

神戸へは各支店から人と資材が大量に送り込まれ、7日間で実に9割以上を復旧。当時入社3年目だった関西電力送配電の樫本悟さんは「あの難局を一丸となって乗り越えてきた自信と誇りは、“関電魂”として今も受け継がれている」と話す。

阪神・淡路を経験した社員は年々少なくなっているが、毎年1月17日前後には社内で当時の写真を展示するなどの取り組みを続ける。また新入社員には、先輩社員が当時の様子を語り継ぎ、経験を風化させないよう心掛けているという。

窓明かりの「1.17」は、追悼に訪れた人たちの心に寄り添うだけでなく、関電にとっては「自分たちの日頃の防災意識をしっかり見つめ直す機会にもなっている」(担当者)そうだ。

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