豊田真由子、「緊急事態宣言」危機感のなさの原因は? 自分や大切な人を守るための行動を

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

1月7日、緊急事態宣言が出されました。感染拡大を実効的にどう止めていくかといった観点から、現状の問題について、考えてみたいと思います。

国民の行動変容をもたらすことができるか?

今回の緊急事態宣言は、残念ながら、前回ほど深刻な危機感を持って受けとめられていないと感じます。以前に比して、国内の感染者・死者・重症者は著しく増加している一方で、一部で新型コロナに対する恐怖や危機感は弱まり、そして、これまでの様々な対応を踏まえて、政府や自治体に対する信頼が、ひどく低下しているように感じます。為政者がなにをどう言っても、国民に「よし、この人(たち)の言うことをきこう」と思わせる力を、なぜか失ってしまっているのです。

私は、新興感染症に対峙するには「最新の情報を基に正しくおそれる、覚悟と希望を持って、最悪の事態を想定しつつ、前向きに生きる」「いたずらに不安を煽ることは適切ではない」と、ずっと申し上げてきましたが、今回の感染状況拡大は深刻で、できる限り早急に抑え込まねばならないと思っています。

今一度考えるべきことは、決して、“政府や自治体のために”、感染拡大を防止するのではなく、自分や大切な人を守り、自分たちの住む地域や国を守るために、必要な行動を取るということだと思います。「自分や大切な人を守るために、他者を守る」という、利他の心、自発的な考え方と大きな行動変容が、一人ひとりに、強く求められます。

「飲食店への時短要請+店名公表(+罰則)」だけではない

「限定的・集中的に」ということで、今回は「飲食店への時短要請+店名公表(+罰則)」が強調されますが、飲食店だけ槍玉に上げられて、という話とはまた別に、そこだけやればいいんだ、というふうに捉えられてしまうと、甚だ不十分だと思います。

英国やドイツ等では、感染拡大を受け、ロックダウンが強化されています。感染状況が日本よりも悪い(※巻末資料ご参照)わけですが、飲食店だけでなく、大半の小売店、美容院、娯楽施設等が閉鎖され、国民の移動が制限されています。

そうならないためにも、「『20時以降、飲食店に行かなければいいだけ』ということではない」ということを、政府もメディアも、もっとしっかりと具体的に、説明すべきだと思います。

そして、今回の特措法改正で設けられる予定の「罰則」については、憲法上の権利が制限されることが問題になるわけですが、関係省庁と内閣法制局の協議の結果、時短要請だけでなく、休業の「指示」を含めた営業規制に応じない事業者への「罰金」について、憲法との整合性が保たれるとの認識となった、とのことです(もちろん、最終的に判断するのは、違憲立法審査権を有する司法<裁判所>であるわけですが)。 

ただ、例えば、スピード違反や脱税という行為に罰金を課すのとは異なり、「倒産や事業継続ができなくなる可能性がある行為(時短や休業)を、罰則で強制すること」は、やはり財産権の侵害が公共の福祉との関係でどこまで許容されるのか、という問題でもあり、いずれにしても、「行政刑罰」・「行政上の秩序罰」の整理、要件は何か、公平性・実効性の担保方法等々、政府には、懸念を払しょくするに十分な説明が求められていると思います。

検査や治療を受けるまでに時間がかかる、民間検査の陽性者が捕捉されない

1月7日現在、1日121,769件の行政PCR検査が可能となっていますが、行政検査を受けるには、発熱相談センターに連絡をした上で、一定の要件があります。センターに電話しても、なかなかつながらない、そして、つながっても、検査や治療につなげてもらえない、という事例も聞きます。当初よりも検査数は増え、センターや保健所・自治体担当者の皆さんはフル稼働なわけですが、今般の感染者数の増加に応じて、さらなる拡充が求められています。

こうした状況の中、行政検査ではなく、民間の検査機関で検査を受ける方も多くいらっしゃると思います。アクセスや価格等の面で、国民に利用しやすい検査が広がることは、よいことだと思います。ただ、陽性が出た場合に、行政検査や医療機関が行っている民間検査でない場合は、行政への報告義務がありません。

この場合でも、検査機関から医療機関と保健所と連携して、陽性者を宿泊・自宅療養につなげるケースがある一方で、「周囲の人を濃厚接触者にしてしまい、迷惑がかかる、風評被害がこわい」といった理由から、陽性であることを隠してしまう、といったケースも聞くところです。せっかく検査が行われたのに、そこから感染が広がっていく可能性があります。

そもそも、新型コロナは不顕性感染が特徴的で、自覚が無い無症状の感染者から、本人も気付かぬ間に感染が広がっていく、という大きな問題があるわけですが、そうではなく、検査を受けて陽性であった場合でも、それを隠さざるを得ない、という状況をもたらしたのは、感染した人を責めるといった風潮(※日本は、「新型コロナ感染は自業自得」と考える人の割合が、他国より高いという調査もあります。)もあると思います。そうしたことが、さらに感染を広げていることを、今一度、考えないといけないと思います。

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