くそリプを活用して新たな作品を創造?個性派クリエイターが実現した「ツイッター二毛作」が話題に

中将 タカノリ 中将 タカノリ

作品に寄せられたくそリプを活用して新たな作品を創造する…

あるクリエイターが実現した「ツイッター二毛作」がSNS上で大きな注目を集めている。

この話題の主人公となったのはクリエイターの南村杞憂(なむら きゆう)さん。

クリスマスシーズンにジュエリーブランド「4℃」がSNS上で話題になったことに乗じて南村さんが制作したネックレスに寄せられた「それ、本気で面白いと思ってるん?」というくそリプ。普通なら不愉快な思いをして終わるだけの話だが、そのくそリプをそのままTシャツにプリントして販売してしまった南村さんの快挙に対し、SNSユーザー達からは「センスの塊」「雑草を押し花にしましたみたいなノリでtシャツを作るな()」「カウンターのやり方がお見事」など数々の絶賛の項が寄せられている。

「ツイッター二毛作」の経緯について南村さんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):そもそもの発端となった「4℃」のネックレスですが、これはどのような経緯で制作に至ったのでしょうか?

南村:今年度のクリスマスシーズンも毎年恒例の「4℃の話題」でTwitterが盛り上がりました。「4℃の話題」とは、クリスマスプレゼントにジュエリーブランドCanal4℃のネックレスを贈ることの是非を問う話題です。話題自体には正直関心はないのですが、話題を横目で見ているうちに突然アイデアが降ってくるように思いついたのがあの「4℃のネックレス」でした。思いついたらすぐ手を動かす方なので、アイデアが降ってきた翌日には1つ仕上げてTwitterに投稿していました。

今回作ったネックレスは、街中でよく見かける「只今の温度」と表示されたデジタル温度計を模したモチーフが「4℃」を示している、というただの駄洒落です。普段の真面目に作る作品でも言葉遊びの感覚は大事にしていて、作品タイトルなんかにもそういう部分は活かしているのですが、こういった手グセで作ったギャグみたいなものの方が反応が大きいことは多いですね(笑)。

中将:大半のリアクションは好意的なものでしたが、「それ、本気で思ってるん?」という嫌がらせのようなくそリプもありましたね。普段からSNSでくそリプに悩まされることは多いのでしょうか?

南村:これまでにも何度か経験して分かったことですが「バズるとクソリプは必ず発生する」ということです。湿気が多いとカビるみたいな感じです。でも青カビも使いようによっては抗生剤になるように、場合によっては活かしていける素材だと思っています。しかし(既にTシャツの流れで散見されていますが)こう書くとわざとクソリプをこしらえてくる輩も発生するので永久機関です。でも基本的に話題になること及び関心を持っていただくことそのものはありがたいことなので、事実に反するような書き込みや激しい誹謗中傷がない限りは特に問題ないと思っています。ちなみに事実に反するような書き込みや激しい誹謗中傷があった場合、それはもう絶対に開示請求してみたいと思っているのでそれはそれで密かに楽しみにしています。

中将:南村さんの身に危険が及ばない範囲での激闘を期待しています。くそリプをTシャツにしてしまうという離れ業を思い付いたきっかけ、狙いをお聞かせください。

南村:以前にも攻撃的なクソリプが送られてきたので、手が滑ってTシャツにしてしまったことがありました。

この時もそれなりに反響はあったのですが、今回は「4℃のネックレス」の流れを汲んでいるのも手伝ってか、前回と比べてかなりバズり散らかしました。

基本的に自分に降りかかった理不尽とか不条理とかアンチみたいなものって勿論シンプルにムカつきますよね。普通に反論したり直感的に怒りを表明したりすることもできるんですが、私の場合これはもっと“上手く活かせるぞ”、“じゃあもっと方法を考えてみろ”と立ち止まってみるんです。そのために私が大事にしてる手段が「茶化す」笑。今のところこの精神に尽きると思っています。

例えばこのメンタリティにおいて私が個人的にリスペクトしているものの一つに「モンティ・パイソン」の存在があります。モンティ・パイソンとは、コメディ界のビートルズとも呼ばれているくらい50年前に大ブレイクしたイギリスのコント集団です。イギリスのコメディなのでブラックジョークと言われるような笑いが満載で、正直一部今のコンプライアンスでは放送できないような過激なネタも披露しています。ただ、一貫して権威だろうと視聴者からのクレームだろうと番組を放送しているBBCだろうと何だろうとネタにしたりメタ視したり茶化しまくるというシニカルなスタンスをとっており、これがある意味で半世紀前のコメディにも関わらず色褪せない尖った笑いを生んでいる理由でもあると思います。
こういったパイソンズのスタイルから影響を受けつつ、「売られた喧嘩を素材にどう調理できるか?」という視点を持ってちょっとふざけてみる、というスタンスで頭を使っています。それでウケたらそれはもうそれだけで最大の仕返しになりますからね(笑)。

ちなみにあれ以降suzuriのクソリプTシャツは地味に売れています(笑)私もトレーナー1着を自分で買いました!

中将:最終的にくそリプのツイート主に感謝されるというオチも爆笑ものでした。

南村:今回は本当にたまたまだと思いますが、はっきり言ってクソリプの彼は"いいヤツ"でしたね(笑)。結果的に一緒にバズる流れになって、素直にはしゃいじゃってる彼を見て「あ〜〜〜、悪い奴じゃないんだ(笑)」となり、もう少し茶化してみて、しばらく流れに付き合ってあげてるうちに私の方も「これはもう、フォローバックしよう(笑)」となりました。

ここまでの流れを見た人が「いい話」「やさしい世界」「クリスマスにいい話をありがとう!」「ネットも捨てたもんじゃないな」と言っていて、確かに最終的にはちょっとしたドラマが生まれていたのかもしれません。仕込み無しの完全な偶然でこういう流れができることって奇跡に近いと思います。クソリプの彼も、「『クソリプを送っただけなのに』ってタイトルで誰か映画化してよ」みたいなことを呟いていました(笑)。ちなみに今でも彼は時々私のツイートにリプをつけてくれますが"クソリプ度"は随分マシになっています。

「南村杞憂(なむら きゆう)」さんプロフィール

1995年生まれ、徳島県出身。
関西学院大学文学部卒、神戸大学大学院在学。
マルチクリエイターとしてデジタルファブリケーションを駆使し、関西を拠点に広く活動中。
現在はインターネット、性、vaporwave等をメインのモチーフに用いながら、真面目にやる時は大抵「身体性の喪失と回復」を主なテーマに透明素材で作品を制作しているが最近は手グセで作った変なものの方がバズる。
制作以外にも映像出演やラジオMCなども務め、現在は神戸のコミュニティFM「FM MOOV」にて毎週水曜18:35〜18:45放送中のラジオ番組「世界の音楽」でレギュラーパーソナリティーとして出演中。
大阪のギャラリー「アトリエ三月」のバー担当。
2020年12月現在、講談社主催オーディション「ミスiD2021」ファイナリスト。
好きなものはモンティ・パイソンと小林賢太郎と水曜どうでしょう。

Twitterアカウント:https://twitter.com/jocojocochijoco
Instagramアカウント:https://instagram.com/arimoshinaikoto/
note:https://note.com/1110101
公式サイト:http://yunakimura.wix.com/artworks
オンラインショップ:https://suzuri.jp/jocojocochijoco
過去作まとめ(Twitter):https://twitter.com/i/events/1260797736758083585
ミスiD個人ページ:https://miss-id.jp/nominee/18413

【参加予定展示】
「第3回 大阪アンデパンダン」
公式サイト:https://osaka-independants.studio.site
開催期間:1月8日〜1月17日
平日15:00〜19:00/土日祝13:00〜19:00
会場1:アトリエ三月
大阪府大阪市北区中崎西4-2-9
https://sangatsu.net
会場2:gekilin.
大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル4F
https://gekilin.com

ART&GOODS EXHIBITION「サンガツオーバーフロウ2021」
開催期間:1月6日〜1月12日
10:00〜20:00
会場:阪急百貨店うめだ本店10階うめだスーク
◇ ◇

SNS時代のクリエイターには南村さんのような度量と胆力が必要なのかもしれない。

なお現在南村さんは「新しい時代にふさわしいまだ見たことのない女の子を発掘し育てる」というテーマで講談社が開催しているオーディション「ミスiD2021」に参加しファイナリストに選出されている。ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

「ミスiD」概要
公式サイト:https://miss-id.jp
南村杞憂ミスiDページ:https://miss-id.jp/nominee/18413
南村杞憂CHEERZページ:https://cheerz.cz/artist/23117

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