Withコロナ時代で初のボクシング世界戦 「インテックス大阪」で初興行となった理由とは

山本 智行 山本 智行

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響でスポーツイベントの縮小、中止が相次ぐ中、今年国内初となるプロボクシング男子世界戦が11月3日に実現する運びとなった。WBA世界ライトフライ級スーパー王者・京口紘人(26)の3度目の防衛戦がそれ。代替挑戦者を用意するなど異例ずくめだが、大阪・住之江区の国際展示場「インテックス大阪」がボクシング開催会場となるのも初めてだ。その背景を追ってみた。

 大阪・咲洲にある「インテックス大阪」は1985年にオープン。延床面積132.709平方メートルを誇り、日本を代表する国際展示場のひとつだ。これまで数多くのモーターショーや食博覧会、ツーリズムエキスポなどの会場として親しまれてきた。

 おもしろいところでは2005年のロックバンド・GLAYのコンサートや07年阪神タイガース「ファン感謝の集い」の会場として使用されたこともある。また昨年の「G20大阪サミット2019」の主要会場になったことでも記憶に新しい。

 とはいえ、インテックス大阪がプロボクシングの試合会場となるのは今回が初めてだ。その背景には当然のようにコロナウイルス感染拡大の影響があったわけだが、そこには“仕掛け人”がおり、それぞれの思いが一致したことが大きい。

 仲介役になったのは大阪の観光事業やイベント誘致などの舵取りを担う公益財団法人「大阪観光局」で、ここがインテックス大阪を運営する一般財団法人「大阪国際経済振興センター」に働きかけ、ボクシングの世界戦開催にこぎつけた。大阪観光局MICE政策統括官の田中嘉一さんが言う。

 「 Withコロナ時代においては、感染症対策を徹底しながら社会経済活動を推進していく努力が求められている。大阪観光局では、経済を動かす起爆剤として、展示会や学会などのビジネスイベントだけでなく、スポーツ、音楽イベント等の再始動にも取り組んできました」

 大阪府市では感染症対策を最優先課題としながらも社会経済活動、エンターテインメント活動の再開にも力を入れ、その先駆けとして7月にインテックス大阪で「ホテル・レストラン・ショー」を開催。3日間で1万4000人を集めた。その後も大阪城ホールでの室内ライブ「THE BONDS」を開いたり、野外音楽フェス「RUSH BALL」、歌舞伎公演やK-1大会も実施した。 ボクシングの世界タイトルマッチ後には、街灯イルミネーション(11月3日)、泉州花火大会(12月26、27日)を予定している。

 田中さんによると大阪は外国人から「元気」「困難に果敢に挑戦」「希望にあふれる」イメージを持たれており、東京に代わる新しい日本の中心として、リーディングポジションを取る期待が高まっているとのこと。大阪観光局ではその実現に向けて今後もあらゆるチャレンジを行なっていく。京口選手は大阪の観光アンバサダーでもあり、世界戦はその象徴という。

  京口が所属するワタナベジム(東京)も、世界戦の実現に尽力してきた。今年5月、大阪・堺市で予定していたインドネシア人選手との試合が流れ、今回はタイ人選手タノンサック・シムシー(世界11位)と仕切り直しとなるが、挑戦者の来日が不可能になった場合に備え、代替挑戦者を用意。さらに統括団体のWBA、相手陣営の合意の下、通常は対戦する両者と関係のない第三国から呼ぶレフェリーとジャッジらオフィシャル計4人すべてを日本人で予定するなど、異例ずくめの興行となる。

 京口はこの7日に同じ大阪出身で昨年10月の大阪で死闘を演じた久田哲也(ハラダ)とスパーリングを行い、実戦感覚を磨くと、11日から実施していた熱海合宿も打ち上げ、世界戦に向け、仕上げていく。

 現在、インテックス大阪は使用料半額に設定。当日は4000席を設営するが、3密を避けるため観客動員は2000人にとどめる。京口は「地元貢献の思いは強い。大阪代表として日本代表として戦う」と話しており、インテックス大阪でのこの興行が成功すれば第2弾、第3弾までありそうだ。

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