経済への影響、第2波への懸念、中止相次ぐイベント…。なかなか世の中が元通りには戻らない中、せめてお菓子で心を癒やしてもらおうと、「瓦せんべい」で知られる創業明治6年の老舗和菓子店「亀井堂総本店」(神戸市中央区)が作った「アマビエ」の瓦せんべいが人気です。さらに、売り上げの一部は地域の子どもたちの支援に充てられる仕組み。自らも苦しい状況ながら、なぜ?と、取材しました。
瓦せんべいは開港間もない神戸で、同店の創業者、松井佐助が考案。小麦粉に、当時は高価なため入手しづらかった卵、砂糖をふんだんに使って焼き上げた味は「神戸スイーツの元祖」とも言われます。職人が一枚一枚手焼きする、ほのかに甘くて香ばしいせんべいは、お持たせやお土産だけでなく、企業や学校、イベントなどの記念品としても人気のお菓子です。
ですが、今回のコロナ禍でそうした得意先の受注がストップ。「通常は3~4月が1年で一番忙しいのですが、今年は惨憺たる状態」と“5代目見習い”の松井隆昌さん(33)。打開策としてネット通販にも力を入れる中、4月下旬にツイッター上でチロルチョコ(東京都)が始めたキャンペーン「おかしつなぎ」を知り、参加を即決したところ、フォロワー数はそれまでの50程度から一気に1.8万ほどまで増えたといいます。
全国からの注文も少しずつ増える中、「コロナ禍の外出自粛で、大人だけでなく子どももストレスを抱え、負のスパイラルが続いている。会社や従業員の雇用を守りつつ、できれば地元の子どもたちのために何かできたらと思っていた」と松井さん。実際、一般社団法人「大吉財団」が4月に行った調査では、地域の子育て団体の7割以上が、コロナ禍で「経営状況に影響が出ている」と回答していました。
そこで、ちょうどネット上で流行っていた「アマビエチャレンジ」に乗っかりアマビエと「#ステイホーム」のオリジナル焼き印を作り、売り上げの一部を子どもたちのための「BE KOBEミライプロジェクト」の一環として同財団に寄付することに。同15日からは、アマビエと「#コロナに負けるな」に変えて販売したところ、「元気が出る」「頑張ろう!というと重いけど、これならちょっとした場面で貰っても嬉しい」と反響を呼び、6月に入っても売り上げ好調といいます。
亀井堂総本店は、25年前の阪神・淡路大震災の際も店が被災。しばらく営業できず、店にあった商品を無償で配り、卵をゆで卵にして避難所に配ったといいます。それでも「当時、被災していたのは神戸や阪神間だけ。大阪や全国の取引先やお客様が助けて下さった」と松井さん。「でも今回は全国、全世界が“被災者”。ただ利益のためだけとは考えられなかった。買って下さるお客様と一緒に何とか苦境を乗り越え、大切なお金を地域や子どもたちのために役立てられたら」と話してくれました。
アマビエ&コロナに負けるな瓦せんべいは、ネットショップでは2袋(2枚包×2)500円から、直営店では1袋260円。4、6、8、10袋セットもある。
■公式オンラインショップ https://kameido.shop/?category_id=5d3ff5fc4c80644e718eb4e9