コーヒー豆の生産者と、それを購入する焙煎所やカフェの直接的なやりとりを可能にするオンラインプラットフォーム「TYPICA」(運営会社:ムトナ株式会社=大阪市中央区)が、2020年中にリリースされる予定だ。
コーヒーの生豆の生産者とカフェなどの購入者の取引は、18トンのコンテナ単位で仕入れなければ、採算が合わないとされている。そのため、中小規模のカフェや焙煎所が少量の生豆を仕入れることは難しい、という課題があった。
それを解決するために、「TYPICA」のオンラインプラットフォームでは、複数のロースターのオーダーをまとめ、それらを1台のコンテナで国内に輸送。購入者は少量の仕入れが可能になる。
オンラインプラットフォームには、生産地に関する、土地環境や気候などの情報が掲載されている。購入者はサンプル請求や問い合わせはもちろん、自動翻訳機能のついたチャットも使用可能。正確かつ詳細な知識のもと、コーヒー豆を厳選して購入することができる。そのため、購入者と生産者のつながりを重視した購入ツールとなりそうだ。
また、価格の透明化をねらいに、配送に関わる各業者に対する報酬なども公開されているので、購入者は正しい価格知識で生豆を仕入れることができる。
この事業の創始者は、現在オランダ在住の山田彩音さん。かつて自身がロースターとして働いていたとき、「気候変動とコーヒー国際価格の暴落で、コーヒー生産地は2050年までに半分減少する」という問題を知ったことが、アイデアの元となった。
「コーヒーを生業にしている身として、そのような危機的な状況に無力さを感じたんです。何ができるのかを考えたところ、コーヒー事業者がまず『コーヒー生産地について知ること』がコーヒーを生み出すサステナビリティに不可欠だと感じました」
気候変動で農業が困難になった生産者の実情を共有すること、また価格の透明性を保ち正しい報酬を与えることで、生産者が困窮することを防ぐことがねらいとしているとも。
環境や経済などの社会問題とコーヒーを関連づけることについて、山田さんは「ヨーロッパではすでに商品そのものの価値だけでなく、それが社会にどんな影響を与えるのか、といった考えが浸透しています。それが今後日本にも影響を与えると思います」と語る。
このオンラインプラットフォームが一般化することで、コーヒーを飲む消費者にもメリットがある、と山田さん。「今、カフェは『コーヒーがおいしい』だけでは成り立ちません。付加価値として生産者のことを知り、消費者に情報として与えることも大事です。ワインのソムリエのようなものですね」
新たな視点から生み出されたプラットフォームにより、生産者とロースターの意識の変化や、新たな「カフェ像」が生み出されるかもしれない。
◆ロースター向けのカッピングイベント予定
4/6,7 東京 4/8 名古屋 4/9 京都 4/10 大阪 4/13 神戸 4/14 広島 4/15 福岡 4/17 仙台
TYPICA https://typica.jp