突然ですが、3月8日は「町家(まちや)の日」です。何でって?3月は「マーチ」、8は訓読みで「や」、つまり「マーチヤ」だから。町家は日本ならではの伝統的な建築様式であり、京都に今なお数多くの建物が残っているが、急速な勢いで失われつつある。その価値を広く知ってもらおうと、京都の団体が3月8日を記念日に登録したのは約4年前。今年も多彩なイベントを当日に催す予定だったのが、新型コロナウイルスの感染拡大であえなく中止に追い込まれた。関係者はせめて記念日の意義を伝えようと、SNSで発信している。
町家は、広い意味でいうと町場にある住宅だが、「京町家」という場合は、軸組木造と呼ばれる伝統的な工法で建てられ、瓦屋根や格子窓、坪庭などを備える住宅を指す。京都の伝統的な町並みを形作る重要な存在だ。
とは言え、古い建物が多いため維持費がかかるうえ、昔ながらの間取りなので使い勝手がいいとは言えない。風情を生かして飲食店やゲストハウスに活用する事例もあるものの、取り壊される町家はかなり多い。2016年に京都市が実態を調査した結果では、年間800軒のペースで消失しているとされた。
そんな状況に歯止めを掛けようと、京町家の再生に携わる不動産業者らでつくる「京町家情報センター」が16年夏、3月8日を「町家の日」として日本記念日協会に登録。翌年の記念日から、京都市内の町家を舞台にお茶会や作品展などのイベントを催してきた。今年も、京都市内に加え、同じく町家を多く残す大津市や兵庫県姫路市に呼び掛け、約80軒の町家でライブや骨董(こっとう)市、ワークショップなどの多彩な催しを計画していた。
そんな矢先に起きた新型コロナウイルスの感染拡大。京町家情報センターは2月28日にやむなく開催の中止を決めた。城幸央事務局長は「過去3回で知名度が高まり、参加者も徐々に増えてきただけに残念でならない」と声を落とす。
中止を決めた後も、同センターは「町家の日」を少しでも根付かせようと、SNSで積極的に発信している。3月3日にはツイッターに「各地域の町家を愛す皆さんも、町家のあるまちを残そうと様々な活動をし頑張っておられます」「自分達の町・日本に残すべき町家の文化・風景に少しだけ想いを巡らせていただければと思います」と投稿した。
城事務局長は「多くの人に町家の魅力を知ってもらい、保全に結びつけていきたい」と思いを語った。