「セルフ焼肉」ってなんだ? 話題の店舗で体験…QRコードで注文、片付けはセルフ、お値段は半額!?

北村 泰介 北村 泰介

 外食産業の人手不足を克服するビジネスの一形態として、「セルフ焼肉」が出現している。食事前におしぼりや皿、飲み物などを自分で用意し、スマホのQRコードを使って注文…という流れで人件費を抑え、コストダウンを図っている。都内にある同スタイルの店舗で実体験した。

 JR高円寺駅から徒歩3分の「焼肉じょんじょん高円寺本店」。株式会社「十六」(東京)が運営する恵比寿のカウンター焼肉専門店「焼肉おおにし」の兄弟店として2016年4月に業界初の完全セルフサービス店舗としてオープンした。セルフにすることで「焼肉おおにし」の品質を保ちながら、値段半額を目指すという。川崎と東新宿でも開店し、現在3店舗で「セルフ焼肉」を展開中だ。

 まずは記者が体験した店内の流れを。
(1)【テーブル準備】おしぼり、わりばし、皿、トングなどをセルフコーナーから自分で席に持って来る。
(2)【ドリンク購入】缶チューハイ(350円)を自販機で買う。ビール(500円)は全自動ビールサーバーから備え付けのプラスチックカップに自分で注ぐ。
(3)【オーダー】卓上にあるQRコードを個人所有のスマホで読み取り、タッチパネルを自分で操作して注文。肉や料理はスタッフが席に運んでくれる。
(4)【会計】スマホで清算し、席に来るスタッフに現金払い。
(5)【ゴミ捨て】割りばし、空き缶やプラスチックコップを出入口手前にあるゴミ捨てエリアの分別箱に捨てて退店(皿やトング、おしぼり等はスタッフ対応でテーブルに残す)。

 「テーブル準備」「オーダー」「会計」「片付け」などを来店客がカバーすることで人件費が削減され、70席の店舗でもキッチンとホール各1人の計2人で営業可能になるという。

 店内を見渡すと、20~30代くらいの来客が多かった。やはり、スマホが必需品ということが影響しているのだろうか。同店の佐藤健店長は「30代前後のお客様が多いですが、スマホを持っていない方には店内で端末をお貸しし、オーダーの仕方も説明させていただきますので大丈夫です」と心強いお言葉。不慣れな記者も同店長に「LINEでQRコードを読み取って『注文票』からメニューを選んで『送信』を押して…」などと教えていただき、難なく注文できた。

 さらに、スマホが全く使えない人の場合は、スタッフが注文を聞き、代りに店の端末を操作してくれるという。それなら、普通に口頭で注文を受けるのと同じではと思ったが、佐藤店長は「半分の方は常連のお客様なので、説明しなくてもお任せできます」。つまり、お任せできる客が固定されいるため、スマホ不使用の人がいても大きな影響はないようだ。別のスタッフは「スマホを使われない方にも来ていただきたいです。代わりに私たちが操作させていただきます。どなたでもウェルカムです」と幅広い年齢層に呼びかけた。

 佐藤店長は「QRコードでお客様が注文し、片付けもしていただくこと等によって、その分、お値段は恵比寿の半分くらいになります。例えば、4900円くらいのお肉が、うちでは2480円です」と、コストダウンの背景を説明した。

 流通アナリストの渡辺広明氏は当サイトの取材に「外食産業ではコンビニ以上に人手不足が加速しています。松屋は券売機と併用して配膳と片付けを自ら行うセルフ式店舗を増やしている。フードコートや学食などで慣れているため、違和感なく他の外食でも拡がりを見せるでしょう」と解説した。

 飲食店において、飲み物や食器、道具類を自分で用意し、ゴミ捨てもするという参加型の行動は苦にならず、むしろ新鮮で楽しい。渡辺氏の指摘通り、セルフサービスに慣れている者として違和感はなかった。富裕層でない限り、外食は少しでも安価で済ませたいという思いが切実になっている時代。「据え膳で食わず、自分で食べる」。そんな流儀の「セルフ焼肉」に今後の可能性を感じた。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース