―ではその『まだ世の中にないもの』を作るうえで大事にしていることは。
「誠実に作ることです。細部のリアリティを追求することで愛される商品になる。先述のウサギのアイラインもそうですし、たとえば、この大根の抱き枕にしても、先っぽには『ひげ根』を付けているんです」
―本当だ!ひげ根だ!なんか…なんか嬉しい…!
「ね(笑)。このひげ根のせいでまた制作工程が増えますけど…。でもこういうことが大事で。ただ奇抜な面白いものを作っても今の人は目が肥えていて、受け入れてはもらえない、とSNSを見ていても感じるんです。だから細かいところに手を抜きません」
―最後に楢崎さんがご自分の作る作品をどのように使って欲しいか、どんなふうに使ってくれたら嬉しいか教えてください。
「自分の手を離れた後はどんなふうに使ってくれても。それこそ抱き枕にしてくれても良いし、インテリアとして飾って楽しんでくださっても」
「でも今まででいちばん嬉しかったお声は、就職活動中の女子大生からのコメントです。就活中って精神的に追い込まれることが多い状況です。彼女は、子うさぎのポーチを鞄に入れて持ち歩いてくれていたのだそうです。そしてプレッシャーのかかる状況に対面する前に、こっそり鞄に手を差し入れて、子ウサギのポーチを握ったりしてくれていたのだと。『その時に勇気を貰えました。ありがとうございました』と言ってくださって…」
「ぬいぐるみ、って本来は生きていくうえでどうしても必要なものではない。けれど、その可愛さに癒やされたり、力をもらえたり。でもぬいぐるみを大人は普通、鞄に入れて持ち歩かないですよね。でも『ポーチ』だったら大義名分というか、大人の女性の鞄にあってもおかしくないかな、って」
「だから自分が作ったものが人をしあわせにして、できることなら、誰かの助けになっていると思えるのが一番、嬉しいですね」