交通量の多い国道沿いのコンビニに約1週間、とどまっていた猫がいました。長い毛に覆われ、一見すると健康そう。しかし、保護して触れてみると、背骨がごつごつと浮き、前足には大きなかさぶたができていました。
猫の名前は「茶々丸」くん。保護したのは、京都府南部で2011年から個人で犬猫の保護活動を続ける「Kuroinyannyan」さん(@kuroinyannyan)です。
保護後には、大阪ナンバーの黒い車からキャリーを下ろしていた人物がいたという情報も寄せられました。遺棄への疑いが強まる一方、飼い主が名乗り出た場合の対応には、不安を抱えていたといいます。
10月23日、正式に所有権を取得し、新しい家族探しを始めたと報告したKuroinyannyanさんに、保護の経緯と、その後の葛藤を聞きました。
長い毛の下に隠れていた痩せた体
茶々丸くんの存在を知ったのは、近所に住む知人からの連絡がきっかけでした。京都と奈良を結ぶ交通量の多い国道沿いのコンビニに、突然、姿を見せるようになったといいます。
「1週間前くらいにいきなり現れたらしく、コンビニの店員さんからも同じ情報をいただきました」
逃げてしまう可能性を考え、最初は離れたところから観察し、写真を撮って状態を確かめました。そのときには、健康そうに見えたそうです。
ところが、実際に保護すると毛玉があり、前足には大きなかさぶたが…体に触れると、背骨がごつごつしていました。
「毛が長い分、やせているのは触ってみないと気づけませんでした」
保護前に買って与えたご飯と水には、勢いよく口をつけました。しかし、自宅に連れ帰ると、一転して食べなくなったといいます。
「あんなにお腹を空かせていたのに、我が家に来て最初は何も信じないという目つきで、ずっと私を目で追って、ご飯を口に入れませんでした」
近づくと「シャー」と威嚇するものの、手を出すことはありませんでした。
後から届いた「大阪ナンバーの黒い車」の目撃情報
保護して真っ先に向かったのは、警察署でした。飼い主につながる手がかりを探すため、マイクロチップが入っていないか確認を依頼しました。
一方、Kuroinyannyanさんは、茶々丸くんが同じ場所にとどまっていたことや、クレートに自ら近づいて頭を入れたことなどから、人に飼われていた猫が遺棄された可能性を疑っていました。
ただ、本人によると、警察からは遺棄として捜査するには証拠が足りないと説明されたといいます。捨てる場面の目撃や、同じ場所に複数の猫が捨てられている場合などについて説明を受けたそうです。
納得しきれない思いを抱えながらも、拾得物の書類を記入。茶々丸くんを自宅で一時的に預かることになりました。
翌日には動物病院でも改めてマイクロチップの有無の確認を依頼し、血液検査や前足のかさぶたの処置を受けさせました。
その後、最初に連絡をくれた知人を通じて、気になる目撃情報が届きました。
別の知人が、コンビニの駐車場で、大阪ナンバーの黒い車からキャリーを下ろす人物を見かけたというのです。しばらく様子を見ていると、その人物は視線に気づき、いったんキャリーを車へ戻したそうです。その後、目撃者が再びコンビニを訪れた際には、茶々丸くんがいたと伝えられました。
これはKuroinyannyanさん自身が見た出来事ではなく、猫を置き去りにする瞬間が確認されたわけでもありません。しかし、本人にとっては、遺棄への疑いを一層強める情報でした。
「返した後、また捨てられたら」という不安
当初は、茶々丸くんが迷子である可能性も考えていました。探している飼い主がいるのなら、返還するつもりだったといいます。
自宅には、すでに猫1匹と犬4匹がいました。自分が世話をできる範囲を見つめ直す必要もあり、3カ月が経過した後、茶々丸くんの所有権を取得するかどうかは迷っていました。
しかし、目撃情報を聞いてから、その気持ちは変わりました。
「3カ月が経てば、正式に所有権を申し出ようという確信に変わりました」
飼い主が名乗り出た場合には、所有権を放棄してもらう交渉も考えていました。ただ、相手が応じるとはかぎりません。
「返還してしまって、また違う場所で遺棄したらどうしようという不安は、ずっとありました」
遺棄を疑っていても、立証されたわけではない。もし飼い主が現れたら、どうすれば茶々丸くんの安全を守れるのか。保護後も、その不安は続いていました。
「まるで責任追及のために、命を危険にさらさなければいけないことに、非常に大きな違和感を抱きました」
返還後に再び危険な目に遭うかもしれないと恐れたKuroinyannyanさんが、今回の経験で感じたのは「所有権の壁」でした。
そして10月23日、Instagramで正式に所有権を取得できたと報告しました。
「待ちに待った 運命の出会い探しが開始!」
茶々丸くんと暮らす新しい家族を、ようやく探し始められるようになったのです。
小さな「にゃっ」から、甘えん坊の顔に
保護当初、人を警戒していた茶々丸くんにも、少しずつ変化が表れました。
クレート越しに触れるうち、小さく「にゃっ」と鳴くようになったのです。
「その鳴き声を聞いて、本当は甘えん坊なんだなって気づきました」
そこから距離はぐっと縮まりました。なでてほしがるようになり、取材では「今では私がまっすぐ歩けないほど、スリスリと甘えてきます」と話してくれました。
所有権取得を公表した投稿にも、人が大好きな性格がつづられています。人がいる間は足元にすり寄り、「なでて」と甘える一方、抱っこは苦手。ご飯も遊びも好きですが、やはり人のそばにいたいようです。
先住猫に叩かれると、まるで「叩かれた」と訴えるように駆け寄ってくることも。病院では診察や注射をおとなしく受けられるといいます。
ただし、甘えるときに指などを甘噛みすることがあり、その点は今後の課題として伝えています。
茶々丸くんは推定1~3歳の去勢済みの男の子で、体重は4キロ台。投稿によると、猫エイズ・猫白血病の検査は陰性で、マイクロチップを装着してから引き渡す予定です。
譲渡にあたっては、猫を飼育できる住まいでの完全室内飼育や脱走対策、譲渡後の定期的な近況報告などを求め、1カ月のトライアル期間を設けています。詳しい条件は、同アカウントの募集投稿で案内しています。
「保護して終わり」ではない
茶々丸くんが心を開き、新しい家族探しへ進んだ今も、Kuroinyannyanさんが伝えたいことがあります。
「保護は決して簡単ではないですし、保護して終わりではない。そして譲渡して終わりではないことも知ってほしいです」
新しい家族が決まった後にも、その猫の暮らしは続きます。譲渡する側にも、その先を見据えた責任があると考えています。
「私は茶々丸を保護した責任があり、譲渡する責任もあり、その責任は茶々丸の最期の瞬間まで続くと思っています」
コンビニでお腹をすかせ、人への警戒を見せていた茶々丸くん。今は、足元にすり寄って甘えられるようになりました。その信頼を、次の家族へつなごうとしています。
「茶々丸の第二の猫生のスタートは里親様が決まった瞬間であり、ゴールは最後の息を引き取る時だと思っています」