風に揺れる鮮やかなコスモス畑——と思いきや、よく見ると花びらの一枚一枚がカラフルな「洗濯バサミ」!?そんな写真が、Xで注目を集めています。
投稿したのは、洗濯バサミフォトグラファー・岡本なう(@okaphotoart)さん。洗濯バサミで写真を撮り始めたきっかけや、今回の制作の裏話について話を聞きました。
西日を浴びて輝く洗濯バサミに、亡きおばあちゃんの人生を重ねて
「岡本なう」さんが洗濯バサミの写真を撮り始めるきっかけとなったのは、大好きだったおばあちゃんが亡くなったときのこと。喪失感を抱えながら庭の縁台(屋外に置く細長い木製などの腰掛け)であれこれと思いを巡らせていたといいます。ふと西日を浴びる古びた洗濯バサミが目に留まったのです。
「洗濯物を取り込んだ後、何気なくそこにある洗濯バサミが、こんなにも美しく輝いている」。その光景に衝撃を受けた「岡本なう」さんは、洗濯バサミにおばあちゃんの人生や、人間という存在そのものを重ね合わせました。
芝生をコスモスの葉っぱに見立てて
おばあちゃんを亡くしたときに見た光景から生まれた「洗濯バサミは美しい」という視点が、「岡本なう」さんの原点です。2021年3月に洗濯バサミフォトグラファーとしての活動を始め、SNSを中心に作品を発表しています。毎年、少しずつ買い足してきた洗濯バサミの数に合わせて、表現する世界も大きく成長させてきました。
「岡本なう」さんが投稿で大切にしているのは季節感。コスモスは毎年挑戦している題材で、今年も洗濯バサミでコスモス畑を表現しようと考えました。100本のコスモスに使った洗濯バサミは約800個。園芸用の支柱に針金で花の土台を作るのに約12時間。そこに洗濯バサミを挟む作業に約2時間、撮影に向けた設置に約1時間。完成までに約15時間かかったといいます。
撮影でイメージしたのは、実際のコスモス畑を少し見下ろすような目線。芝生をコスモスの葉っぱに見立てています。コスモスの影を目立たせないため、日が傾いて芝生に影が少しずつできていく頃を狙って撮影しました。
撮影を終えて家に入ると、玄関に残っていたのは…
10月9日に庭での撮影を終えて家に入った「岡本なう」さん。ところが玄関には、庭に並べるはずだった洗濯バサミのコスモスが、20本ほど残っていたのです。「100本で撮影するつもりだったのに、設置し忘れていたんです。これは本当にショックで、思わず絶叫しました」
翌日の10月10日、改めて100本すべてを設置して撮り直します。しかし今度はコスモスの影が気になり、写真はすべてボツに。動画だけを撮影風景として残しました。投稿した写真と動画でコスモスの数が違うのは、このためです。
投稿には、「拡大しないと本物のコスモスに見えました」と、本物と見間違えたという声が寄せられています。動画の最後に映るものに気づき、「一瞬画像が変わった?」「コスモス畑にお化け隠れてますか」とコメントした人も。「岡本なう」さんは、「クレジット(写真に添える撮影者名などの表記)を入れる作業時に、昨日のオバケを消し忘れて投稿してしまったようです」と答えていました。
洗濯バサミのコスモス畑は、本物を忠実に再現したものではありません。それでも寄せられた反響に、「SNSという環境だからこそ成立するコスモス畑を、好意的に受け止めてくださる方がたくさんいらっしゃることに、心から感動しています」と、「岡本なう」さんは話します。
完成した作品を撮影したときには、「数としてはまだまだ少ないなぁとも思いました」と「岡本なう」さん。今年はあと100本増やそうと、準備を進めていました。そして取材後に届いたのは、200本に増えたコスモス畑の写真。
活動を重ねた分だけ、洗濯バサミのコスモス畑も広がっています。