「獣医師25年やっていますが、診察台に乗せた瞬間『あ、この子は大切にされているな』と感じることがあります」
そんな書き出しで、獣医師がThreadsに投稿した「大切にされているペットの3つの共通点」が注目を集めています。
投稿したのは、DCC動物病院 バロー稲沢平和の院長で、「ココロの獣医師 しげたろう」として活動する小坂繁聡(こさか・しげとし)さん(@petloss_shige)。飼い主がペットに注ぐ愛情は、日常のなにげない行動に表れるといいます。
獣医師が感じる「大切にされているペット」の3つの共通点
小坂さんが投稿で挙げた共通点は、次の3つです。
①飼い主さんが、その子の「いつも」を知っている
「昨日より少し食べるのが遅い」「なんとなく寝ている時間が長い」「いつもの散歩なのに歩きたがらない」こうした小さな変化に気づいていることです。
小坂さんは「検査の数字より先に、小さな変化に気づいているんです」とつづっています。
②診察中も、その子に声をかけている
「大丈夫だよ」「もう少しだからね」「頑張ってるね」
診察台の上で不安そうにしているペットに、優しく声をかける飼い主。
犬や猫は言葉の意味をすべて理解できなくても、大好きな人の声や表情、触れ方から安心を感じ取るといいます。
③「長生き」だけではなく「この子らしさ」を大切にしている
できるだけ長く生きてほしいと願う一方で、その子が穏やかに過ごせることや、その子らしい暮らしも大切にしていることです。
大切にされているペットは、「毛並みが完璧だからでも、高価なフードを食べているからでも、毎月病院へ来ているからでもありません」と説明します。
そして、この投稿に対しては、「最後まで読んだ方は間違いなくいい飼い主さんだと思う」「もうずっーーーと涙涙…でちゃんと文字が見えません」など、多くの共感や感動の声にあふれていました。
診療で気づいた、ペットの幸せに大切なこと
小坂さんがこの3つの共通点を重視するようになったのは、長年の診療を通じて、病気だけでなく、ペット自身とその家族の暮らしを見ることが大切だと考えるようになったからです。
「動物たちは、言葉で自分の体調や気持ちを説明することができません。だからこそ、日ごろから一緒に暮らしている飼い主さんの観察や、なにげない行動の変化が、とても重要な情報になります」と話します。
また、ペットにとっての幸せは、単に病気がないことだけではないそうです。安心して眠れること、大好きな家族と一緒にいられること、その子らしく穏やかな毎日を過ごせること。こうした日常の積み重ねも、ペットの幸せを考えるうえで欠かせないものだと考えています。
「その子の一生の幸せを、最期の数日間だけで決めないで」
長年の診療で特に印象に残っているのは、高齢になったり病気になったりしている動物に寄り添う飼い主の姿だといいます。
例えば、自分の足で歩くことが難しくなった高齢の犬を、毎回大切そうに抱っこして診察室へ連れてくる飼い主さん。
「今日は少しごはんを食べてくれました」「昨日は気持ちよさそうに眠っていました」
病気のことだけでなく、日々の小さな変化をうれしそうに話してくれたそうです。小坂さんはその姿から、長生きすることだけでなく、愛犬が今日を安心して幸せに過ごせることを大切にしていると感じました。
腎臓の病気を抱え、食欲に波がある高齢の猫も印象に残っているといいます。飼い主さんは少しでも食べやすいように、ごはんの種類や温度、食器の高さまで工夫していました。
「先生、今日は自分から食べてくれたんです」
そう話す飼い主さんの笑顔に、小坂さんは日々の暮らしに寄り添う深い愛情を感じたそうです。
「もう年だから仕方ないですよね」と言いながらも、「でも、少しでも楽に過ごさせてあげたいんです」と願う飼い主の姿に、何度も胸を打たれてきたといいます。
一方、ペットとの別れが近づくと「もっと何かできたのではないか」と悩む飼い主も少なくありません。そんな人たちに、小坂さんは「その子の一生の幸せを、最期の数日間だけで決めないでください」と伝えたいそうです。
名前を呼び、優しくなで、一緒に眠った日々。その何千日もの積み重ねこそが、大切な時間だったのではないかといいます。
小坂さんが診療で大切にしている言葉は「病気ではなく、その子の幸せを診る」。
取材の際、飼い主に向けてこう語ってくれました。
「完璧な飼い主さんになる必要もありません。大切なのは、目の前にいるその子をよく見て、その子らしい幸せを一緒に考えていくことだと思います」
「あなたが思っている以上に、その子はあなたとの毎日を大切にしているかもしれません」