「先日、頼んだ覚えのない大手食品宅配サービスから、定期ボックスの配達があった...宛名は、高1次男の名前」
母親のマエさんが次男に聞くと、約2週間前にショッピングモールで送り主の食品宅配会社のプロモーションと言われ、声をかけられたことがわかりました。
次男によると契約を交わすという会話はなかったとのこと。クーリングオフ(※1)の期間は過ぎていましたが、契約に至るまでの会話や未成年への契約に不信を抱いたマエさんは、食品宅配会社に問い合わせ。
果たして、契約の取り消しはできたのでしょうか?マエさんに詳細を取材しました。
届いた食材を前に、親子でショック
「ちょっと話を聞いてくれる?」と声をかけられたのは、マエさんの次男が商業施設をひとりで訪れた時。ショッピングモールの通路になった場所にブースがあり、会話をしながら書面を掲示され、アプリのインストールを促されたそう。
重要事項説明書(兼 契約内容確認書)と記載された書面には、
□定期宅配サービスに申し込むと、毎週木曜にカゴ内に用意する
□変更、キャンセルを希望の場合は締切日までに
と記載がありましたが、「よくわからないまま」(本人談)に契約に至ってしまっていたのだとか。生年月日入力の際も、未成年であることや保護者の同意なしの契約を進めることへの確認はありませんでした。
「高校1年生の男の子が家族分の食材を注文することを勧誘する方も不思議に思わなかったのか、生年月日は確認しておらず若いお父さんにでも見えたのか、不思議なんですが…。息子は、書面やアプリインストールなどを言われるがままに行なって、理解が追いつかないまま入力したようです」
食料品が届いたのは、それから2週間後の休日でした。
「住所や名前、メールアドレスだけ登録させてと言われた。まさか、食品が届くなんて思わなかった…」(次男)。本人は食品が届くと動揺して、食品会社サイトにログイン。すると、今月は○○円利用という画面が出て請求に驚き、次男自身が慌てて退会手続きをしてしまいました。
次男が気付かぬうちに契約を交わしたことがわかり、愕然としたマエさん。
「その日すぐに話してくれたら、クーリングオフできたのに…親として教えられることがあっただろうに…と悔やみました。
息子は息子で、食品が有料で配達されることすらあまり理解しないまま記入してしまったこと、高校生にしたら高額の請求が届いたことにショックを受けていました。勧誘してきたのは優しいお姉さんだった、とのことで、それもショックだったようです」
契約内容確認書を確認すると、生年月日の記載も支払い方法の記載もなし。
「キャンペーンや入会特典などとズラズラ記載してありますが、すんなり理解しがたい内容でした」
マニュアルのようなメールが届いただけ
親子それぞれ打ちひしがれながらも、時間の経過とともに湧いてきたのが「未成年が保護者の同意なく契約できるの?」「年齢確認もしないで、勧誘して契約させちゃうの?」という疑問と怒り。
休日で電話対応は受け付けていないため、カスタマーセンターにメールで連絡。
「何も理解しないまま契約を交わしたこちらの親としての注意不足を会社側へ謝罪するとともに、しかしながら未成年に対する勧誘契約行為、契約方法の仕組みについては不信感を抱いた旨をお伝えしました」
翌日、返ってきたメールは以下の文面でした。
『本来であれば有料サービスのご案内であることを十分にご説明し、ご同意をいただいたうえで手続を行うべきところ、配慮が行き届かず誠に申し訳ございませんでした。本件は速やかに社内へ共有し、今後はご案内中にご不明点がないか都度確認を挟むなど丁寧なご対応を徹底し、再発防止に努めてまいります。』
未成年への勧誘契約、今後の姿勢にも一切触れないままでした。
「返品と請求取り消しの対応は案内されましたが、未成年への勧誘契約行為が誤りだったという記載や謝罪もなく、心ない対応に感じました」
そこで、「15歳の子どもに、3人前もあるような商品を登録させ、キャンセルしない限り、商品を送付する、こんな商法は許し難いです。ショッピングモールは子どもたちもよく出かける場所、ましてや1人でいる子に声をかけ、年齢確認もせず登録手続きをさせることを今後も継続するのでしょうか?」と返信。
すると、2回目のメールには、子どもへの勧誘をしないように対応していく旨の返信が届きました。また、未成年者契約について誤りだったという言及がなく不信感が募ったままだったので、まだ返品に応じていなかったところ、今回送付した商品利用分の請求書を送付することも記されていました。
消費生活センターで相談
メールでの2回のやり取り後、このできごとを職場や友人に話すと、消費生活センターへの相談を勧められて電話。そこで相談員から『未成年者契約取り消しの手続き』という対応があることを聞きました。
『未成年者取消権』は民法で定められており、未成年が保護者の同意なしに契約した場合行使できる権利(※契約時の年齢が18歳未満であること)。
クーリングオフ期間を超えていても、本人もしくは保護者から請求でき、取り消しを行うと契約時にさかのぼって最初から無効となります。
「相談員さんから、『未成年者取消権』を行使したい旨は食品宅配会社に電話で直接伝えた方が良い、とアドバイスをいただいたので、メールではなく電話をしました。その際は、現在、消費生活センターに相談中で、未成年者取り消し手続きの対応をお願いしたいと伝えました」
また、相談員から「『未成年者契約取り消しの手続き』では、商品を開封してしまった場合でも全額返金、もしくは開封分のみ請求になります。マエさん宅の冷蔵庫に保管されている食品は返品した方がいいかも確認してください」との助言もあったため、問い合わせると、「返品しなくていい」との返答でした。
「契約そのものをなかったものにできると聞いて安心もしました。会社側がきちんと対応をしてくださったことにも感謝しています。
食品宅配会社の電話対応してくださる方だって自分が悪いことしたわけではないのに、こんな電話を受けて…と涙がこみ上げてきました」
ちなみに、令和7年度消費生活意識調査(第4回)によると、『未成年者取消権』についての正誤問題について、15歳~17歳の正答率は24.0%、15歳~70代以上の全層においても37.6%と、あまり知られていない現状が浮かび上がりました。
商業施設にも連絡すると…
食品宅配会社との契約も取り消しとなり、後日、勧誘を受けた商業施設にも連絡。重大事案として対応するとの返事がありました。次男も解決できたことにホッとしている様子。
「勧誘した方が悪いと決めつけているのではありません。学生証やマイナンバー、証明書の提示が求められていたら、このような事態は起きなかっただろう、という思いがあります。
次男には、簡単に個人情報を相手に教えたり、入力したりしないことは言い含めました。優しそうな人や知っている人、友だちから勧誘されることがあるかもしれないけれど、断ることも大切と伝えました」
中高生の子どもやその保護者への注意喚起としてSNSで家族の体験を書き込んだマエさん。
「未成年が簡単に契約できるシステムにもびっくりだし、大人が勧誘することにも鳥肌」
「子どもにはアンケートや住所、氏名などは安易に記入するなと教えていく必要」
「モールや道端で他人から差し出されるいわれのない無料の品、ティッシュであっても疑って受け取らない、名前住所書かないということを徹底することが大事」
「世間知らずの男子に近づいてよくわからないまま記入させるのはイチコロらしい」
「高1だから救い。18歳だったら高校生でも成人で成立してしまう」
などの声が寄せられました。
ほかにも、「認知症の父新聞契約。電話して解約求めたら出来ないと言われたので 本社に電話したらすぐ解約できました。お年寄りも気をつけて」など年齢を問わず注意を促すコメントも。
消費者庁や各自治体では、未成年者が親の同意なく結んだ契約に対して、未成年者取消権があることをホームページなどで発信しています。未成年者の消費行動でトラブルが生じた場合は、最寄りの消費生活センターや消費者ホットライン(188)への相談を呼びかけています。
今回のようなトラブルがほかにもあるのかという記者の問い合わせに対し、消費者庁は「未成年に関してはオンラインゲームでの課金などネットでの消費行動でのトラブル事例が多いものの、街中での勧誘契約行為についての具体的な事例の数は出ていない」と回答。
今回は、珍しい事例とはいえ、情報流出が次々問題になる時代だからこそ、個人情報を守ることについて今一度、考えるべき事案ではないでしょうか?
マエさんも「とても親身に相談に乗ってくださる相談員さんの助言は心強かったです。どうかこういった一件に、巻き込まれてしまうようなお子さんやご家族が増えないように」と願っています。
※1(契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度)
■消費者庁 https://www.caa.go.jp