宝塚歌劇団月組トップスターとして『ベルサイユのばら』(オスカル役)等に主演し、1993年に退団後はミュージカルや大河ドラマの出演、テレビアニメ『るろうに剣心』(緋村剣心役)の声優など幅広く活躍している涼風真世さん。今年デビュー45周年を迎えた彼女に、独占インタビューをおこなった。
圧倒的な歌唱力を誇り、歌手としても5年連続でビルボードライブ横浜にてライブをおこない、多くの人々を魅了。10月14日に45周年記念アルバム『Fairy 妖 –Ayakashi–』をリリースし、10月24日には4年半ぶりに「ビルボードライブ大阪」で記念ライブを開催する。
ニューアルバムには、「私だけに」(『エリザベート』)など自身が演じた作品の名曲、挑戦してみたかったミュージカルナンバー、宝塚時代を代表する曲、「もののけ姫」などを、コーラスや男女パートも歌い分けて収録。
さらにウィーン・ミュージカルの巨匠シルヴェスター・リーヴァイ氏が10代で作曲した楽曲に日本語詞をつけた「セレナーデ」。山崎育三郎さん(作詞)と城田優さん(作曲)の書き下ろしによる「ゆらぎ」など新曲3曲含めて全12曲を、男役時代からさらに深化した低音、澄み切ったソプラノなど、さまざまな声色で歌っている。
彼女ならではのアルバムタイトルや曲への想い、貴重な楽曲提供を受けたリーヴァイ氏との絆、さらに45年間歩み続けるなかでのスタンスなど、いろいろと語ってくれた(インタビュー前編)。
赤ん坊の頃のひとり遊び、何かが見えていた⁉
――45年のなかで、妖精や悪魔から王妃までいろいろなキャラクターを演じてこられ、「昔、妖精。今、妖怪」と舞台のご挨拶でもおっしゃられていますが、すっかりそのフレーズも定着しましたね。
皆さん周知してくださってます(笑)。
――ちなみに、今のご自身の中に“妖精的”なところは……。
周りの方にはよく「不思議ちゃん」と言われるので、そういうところがあるのかもしれないですね。いたって普通の人間として生きているつもりなのですが(笑)。
朝起きてブログに載せる写真を撮影し、歯を磨いてシャワーを浴びて、洗濯をしてご飯を食べて……人間らしい生活をしているのですけど、「洗濯をしている姿が想像できない」と言われます。電車にも乗っていますよ!
――確かに想像できません(笑)。今回のニューアルバム『Fairy 妖 –Ayakashi–』は、涼風さんにとってどのような一枚になりましたか。
45年という歴史の中で、一番私らしさが出ている一枚になったと感じています。宝塚の曲やミュージカルの曲、新曲もありますし、大好きな松井五郎さん作詞の曲(「この風の向こうまで」)もあります。
いつもそうなのですが、コーラスも歌い、今回台詞も少し入れています。宝塚を退団してからの足跡を、一緒に振り返っていただけるアルバムになっていると感じています。
――2016年に『Fairy』、2021年に『Fairy ~A・I~ 愛』をリリース。5年ぶりとなる今回のアルバムは、サブタイトルに「妖-Ayakashi-」とありますね。
このタイトルについては、「“妖”にはどうして“女”という字がついているのだろう?」と気づき、本名も私の星座も“女”が入っている……。特に“女”を意識して生きてきたわけではないのだけれど、「魂が響く」ところに“女”という漢字があるなと思ったときに、自分の体の中に“妖(あやかし)”の血が流れているような気がしたんです。
――月組トップスター時代に演じられた妖精パック(『PUCK』)は、「昔、妖精。今、妖怪」というフレーズの原点なのかと。この作品から「セカンド・サイト」をニューアルバムで歌われていますが、やはり大切なお役ですか?
そうですね。このアルバムではパックだけではなく、ハーミア(ヒロイン)のパートも歌っています。ハーミアは、人間には見えないはずのパックが見えていたのに、大人になったら見えなくなり、(存在を)感じることしかできなくなった。
誰でも子どもの頃って、見えないものが見えていた時期があったような気がしています。
――もしかして涼風さんもそういう記憶がありますか?
赤ちゃんの頃、ひとりで遊びながら「アハハハ」と声を立てて笑っているのに、そこに誰もいない……と母がよく言っていました。何か見えていたのかも、聞こえていたのかもしれないです。
――アルバムを通して聴いても、「もののけ姫」をはじめ唯一無二の奥深い涼風さんの世界が広がっています。
このアルバムでは私の歌だけではなく、歌の間に紡がれるメロディーや、奏でられる三枝伸太郎さんのピアノ、チェロ、ドラムなど、そこに生まれている不思議な“あやかし”を感じとっていただきたいです。皆さんの音や人生がひとつになって出来上がった作品なので。
「涼風真世の人生、リーヴァイさんなしでは語れない」
――ニューアルバムにはミュージカルナンバーが特に多く収録されています。これまでの涼風さんの歩みを振り返っても、やはりミュージカルというものが大きな位置を?
そうですね。これまで声優やストレートプレイに挑戦したり、バラエティー番組にも出させていただいたり、いろんなことを経験してきましたが、「やっぱり歌が好き!」「ミュージカルの人物に自分を投影できるときが一番幸せ」と感じています。
――『回転木馬』『マディソン郡の橋』『エリザベート』『モーツァルト!』『王様と私』などから、名曲の数々を歌われていますが、特に思い入れの深いミュージカルナンバーはありますか。
「レベッカⅢ」はどうしても歌いたかった1曲です。『レベッカ』で私はダンヴァース夫人を演じました。(家政婦頭の)彼女はレベッカ様が大好きで尊敬し、おそばでずっと見守り生きてきた人。
深い愛情があったのだと思います。なんでしょう、レベッカ様とダンヴァース夫人の間には、人と人を超えた感情が芽生えていたような気がします。
――あらためて「レベッカⅢ」を歌われていかがでしたか。
このアルバムでは “わたし(屋敷の主人・マキシムの後妻)”も歌わせていただき、コーラスもすべてさせていただいたので、レコーディングは少し大変でしたけど楽しかったです。
――今年『レベッカ』が新しいキャストで再演されるなど、とても愛されている作品です。何度も出演された涼風さんの中に、今もダンヴァース夫人がいる感じですか?
そうですね。ダンヴァース夫人とともに生きているかもしれないです。でも次の世代の方々が受け継ぎ演じられることも、とっても素敵なことだと思います。それぐらいシルヴェスター・リーヴァイさんの曲は素晴らしいので。
私はこれまで、リーヴァイさんのいろいろな作品に出演させていただきましたが、やはり彼のメロディーに込められている想いが大好きで、歌っていてとてもしっくりくるんです。
――涼風さんはリーヴァイさん作曲の日本上演ミュージカルに、タイトルロールを務められた『マリー・アントワネット』『エリザベート』をはじめ、『モーツァルト!』『レディ・ベス』『レベッカ』と5作品も出演されています。
本当ですね。私にとって、リーヴァイさんは神のような存在です。涼風真世の人生を振り返っても、リーヴァイさんなしでは語れず、絶対的な信頼を置いています。リーヴァイさんにお会いすると、いつもあのマシュマロのような微笑みで接してくださり、的確なアドバイスをくださいます。
『レディ・ベス』の舞台稽古のとき、ちょっとキーが半音高いかなという部分で、「真世、そこは半音下げようか」と提案してくださったんです。言葉がわからなくても通じ合っていて、私のことを一番理解してくださっている作曲家の方です。大尊敬している方のおひとりです。
――今アルバムでは、リーヴァイさんが10代のときに作られた曲に、日本語詞をつけた新曲「セレナーデ」が収録されています。
15歳で作られたとは思えないメロディーです。ウィーンでおこなわれたリーヴァイさんの80歳をお祝いする記念コンサートで、この曲(原題「Sumrak」)を歌われた方がいらっしゃって。リーヴァイさんのジュニアや、通訳の高島勲さんなどのご協力で、日本で初めて私が歌わせていただけることになりました。
レコーディングではフェイクを入れてみるなど、いろいろな歌い方を試したのですが、メロディーラインそのままに、竜真知子先生が書いてくださった日本語詞を大切に歌うことが、私には一番合っていたように思います。
ストレッチには“ラジオ体操第2”が一番効く
――リーヴァイさんの曲というと、『モーツァルト!』の「何故愛せないの?」も歌われています。彼の音楽にどんな魅力を感じますか?
リーヴァイさんの作品は、ハッピーエンドではないものが多いのですが、その不協和音の中にも愛があります。
――素敵な表現ですね。この曲をなんと男性キーで歌われています。今も低音から高音まで深く伸びやかで、歌声にさらに磨きがかかっているのを感じます。
トート(『エリザベート』)の曲も男性キーで歌えます(笑)。不思議ですよね。宝塚退団直後は蚊の鳴くようなファルセットしか出なかったのが、今は3オクターブちょっと出るように。今年66歳になりましたけど、筋肉は裏切らないので、使えば使うほど応えてくれます。
――喉の筋肉を鍛えるということですね。毎日どのようなことをされているのですか?
まず体をほぐすストレッチから入ります。首を動かしたり、肩を回したり、筋膜リリースの器具などを使うときも。あとはやはりラジオ体操が一番効きますね、全身運動なので。第1と第2がありますが、第2のほうがいいです。
そのあと発声を毎日、公演がないときも30分ほどやります。まずキーボードの音と合わせながら、低いところから高いところまで声を出して、どの音が出にくいのかをチェックします。
――それをずっと続けてこられたからこそ、歌声を保ち続けられているのですね。
もともと喉が強い、というのもあるかもしれません。それから、水を飲むことも心掛けています。1日2リットルは飲みたいのですが、なかなかそこまでは難しいですね……。
ここまで続けてこられたのは、やっぱり歌うことが好きだからこそ、だと思います。自分の声が好き……いろんな声が出ることが楽しいんです(笑)。このアルバムでもいろいろな声、低い声からソプラノまで出して、さまざまな歌を歌いたいと思いました。
――宝塚時代から歌の巧さが突出していて大変ご活躍でしたが、当時はボイストレーニングもなかったとおっしゃっていましたね。
そうです。先輩を見て覚える、聞いて覚える、でした。私の宝塚時代は胸元に大きな棒状のマイクを着けていたので、「大きな声を出さないと届かないよ」と言われて育ちました。
早くからソロの曲を頂いたのですが、「この子に歌わせたい」と皆さんが思ってくださったところからの流れのような気がしています。先生方に心から感謝しています。
周りに左右されず、自分が信じるように――
――先ほどお話に出た『モーツァルト!』ですが、本公演で涼風さんはヴァルトシュテッテン男爵夫人を演じられ、今アルバムではヴォルフガング・モーツァルトの曲(「何故愛せないの?」)を歌われているのも興味深いです。
ヴォルフガングの「なんで僕のことをわかってくれないんだ!」という気持ちが溢れている楽曲です。今の私はヴォルフガングの父親の気持ちのほうがよくわかるのですが、「なんで僕を理解してくれないんだ」という思いは、若いときに多くの人たちが通ってくる道だと思います。
これまでヴォルフガングを演じてこられた皆さんは、素晴らしい方ばかりだったので、そんな皆さんへの想いも含めながら、私の想いも込めて歌った楽曲になっています。
――若いヴォルフガングの気持ち、涼風さんも思い当たることがありますか。
私は昔から我が道をいくタイプだったので、信念を曲げず……生きてきました。
――それが45年続けてこられたひとつの秘訣なのかもしれないですね。この先に思い描いている目標があればぜひお聞かせください。
宝塚男役の時代からずっと思っていることなのですが、「涼風真世にこういう役をやらせたらどのように演じるのだろう」「こういう音楽ではどういう声になるのだろう」と思っていただける歌手であり、ミュージカル女優でありたいです。
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10月14日にリリースのニューアルバム『Fairy 妖 –Ayakashi–』は、新曲「ゆらぎ」「セレナーデ」「この風の向こうまで」や、「私だけに」「レベッカⅢ」「ピュア・イマジネーション」といったミュージカル曲など、全12曲を収録。通常盤CD 3300円。「ゆらぎ」「この風の向こうまで」のミュージックビデオ、「セレナーデ」「もののけ姫」「私だけに」のメイキングMVを収録したBlu-ray、全92ページにおよぶ「デビュー45周年記念Special Photo Book」がセットの初回限定盤は9900円。
10月24日には、「ビルボードライブ大阪」で『涼風真世45周年記念ライブ「Anthology 妖~あやかし~」』を開催。4年半ぶりとなる大阪でのライブへの想いや、山崎育三郎さんと城田優さんが手掛けたニューアルバムの新曲「ゆらぎ」についてなどを伺ったインタビュー記事後編を、10月14日のアルバム発売日に掲載予定。
■涼風真世『Fairy 妖 -Ayakashi-』リリース情報:https://www.jvcmusic.co.jp/Linkall/mayosuzukaze/fairy-ayakashi.html
■涼風真世ビルボードライブ大阪公演情報:https://www.billboard-live.com/osaka/show?event_id=ev-21576
■涼風真世Blog: http://ameblo.jp/suzukaze-mayo/
■Label Website: http://jvcmusic.co.jp/suzukaze
■YouTube: https://www.youtube.com/@SuzukazeMayo00