毎日を忙しく過ごすなかで、周囲に合わせることに精一杯になり、いつの間にか「本当の自分」を見失ってしまうことがあるでしょう。そんな、自分を取り繕いながら生きる女性が、学生時代の友人との再会をきっかけに、本来の自分を取り戻していく作品『表情(かお)のない人』(作:森本淳士さん)がpixivに投稿されました。
物語は、「自分がどんな表情(かお)をしていたかなんて、もう覚えてない」という主人公・多田の独白から始まります。作中の多田は表情が描かれていません。
大学を卒業して2年、社交性がない多田は会社で怒られてばかりの日々を送っています。失敗して怒られ、萎縮してしまいさらなる失敗へとつながる悪循環のなか、彼女は病院で「うつ病」と診断されました。
そこで多田は、せめて愛想よく振る舞うようにします。以前よりノリよく話し、陰口を言う同僚にも自分から声をかけるようにします。これによって周りからは高評価を得ることができましたが、仕事を終えると一気に疲れが押し寄せるようになってしまいました。
そんなある日、学生時代の友人・アイから連絡が届きます。久しぶりに再会したアイは、「高校ぶり? 全然変わってないねー」と明るく話しかけます。しかし多田自身は、かつての自分がどのように振る舞っていたのか、もう思い出せません。その顔には、会社の同僚と話すときのような作り笑いが張り付いていました。
多田の様子を見たアイは、「なんかあった?」「良かったら話聞くよ?」と声をかけます。多田は重い口を開き、これまで会社で苦しんできたことや、笑顔で取り繕うことにも疲れていることを打ち明けます。
するとアイは、多田が昔はとても泣き虫だったことを話し始めました。そして「私と一緒の時くらいは昔のままでいーじゃん!」と言います。この話を聞いた多田は大粒の涙を流し、本当の表情を取り戻すのでした。
読者からは「こういう友人がいるだけでどれだけ救われるか」や「アイちゃんが居てくれて良かった」などの声が多くあがっています。そんな同作について、作者の森本淳士さんに話を聞きました。
この作品を見て救われる人が1人だけでもいれば
―同作を描こうと思われたきっかけを教えてください。
こちらの作品は自分の実体験をベースに漫画的な表現にしたり脚色したりして描いた作品になっています。
元々は自分の苦しみやしんどさを吐き出す事が目的で描いた作品で、この作品を見て救われる人が1人だけでもいればそれで良いという気持ちだったのですが、結果的に沢山の人に見てもらい、とても嬉しいなと思っております。
―主人公の心情や苦しさを描くうえで、意識されたことや表現で工夫されたことを教えてください。
自分は表向き作り笑いをよくする性格で、常に「作り笑いがバレてたらどうしよう、暗くしちゃ駄目だ、自分の本音の顔を見られないように、見せかけの顔をかかなきゃいけない」という念に苛まれる事が多く、そこから着想を経て「顔のない人」になりました。そこの表現は工夫して描けたのではないかと思っております。
―同作への大きな反響を受けて、印象に残っていることを教えてください。
前述した通り元々は自分の苦しみを吐き出す事が目的で描いた作品でしたが、この作品を通して1人でも救われたり心に残ってくれた人がいるのであれば、これほど嬉しい事はありません。
<森本淳士さん関連情報>
▽pixiv
https://www.pixiv.net/users/109593977