神戸に住んで約25年の「神戸くまえもん」(@kobekumaemon)さんが、大阪・梅田で阪急電車からJRに乗り換えようと歩いていたときに見た、建築構造物の写真を、「梅田のこれ」とXに投稿して話題になりました。
その構造物は、JR大阪駅東側の高架線路脇で、北に向いて立つ二つ目の生き物のような不思議な金属の巨大な物体です。国道176号線の上の歩道橋を行き交う人を、見下ろすようにそびえ立っています。
「『なんじゃこりゃ!!』と思ったのですが、まわりの方は皆涼しい顔なんす。慣れてはるんでしょうか?!これは俺が新鮮な気持ちで世に知らしめるしかないっしょっ!」と、「神戸くまえもん」さんは投稿した理由について話します。
現地を確認すると、この構造物からダクトがのびていてJRの高架下に入っています。どうやら換気設備の吸排気口のようです。構造物自体は、国道176号線の芝田交差点付近の中央分離帯にあり、横断歩道がない場所なので根本に近づくことはできません。
梅田には梅田地下街を換気するために1963年に設置された「梅田吸気塔」があり、こちらは建築家・村野藤吾氏が設計したものとしてよく知られています。一方で今回話題になった換気塔デザインについては情報がありません。なぜこのようなデザインになったのか経緯を知りたいと、道路を整備・管理する大阪市建設局にお話を聞きました。
この換気塔は、昭和50年(1975年)に工事名「大阪駅東口ガード下環境改善工事」において設置されました。当時は、車両の排気ガスが今よりもひどく、高架下の歩道の環境が悪かったため、歩道と車道の間に壁を作り、歩道の空気を循環するために換気設備を設置したそうです。
その後、車両の排気ガスが低減されていることが確認されたため、平成20年(2008年)ごろからは換気設備は使用されておらず、換気塔はただ建っている状態になっています。定期的に安全面での点検を実施しているものの、交通量が多い場所であることや費用の問題などから撤去などの予定は、現時点ではないそうです。
換気塔がなぜこのようなデザインになったかについては、建設局に資料が残っておらずわかりませんでした。「車道の両側に歩道があるため、2系統のダクトに対応した形なのではないかと推測しています」とのこと。
何かほかに手掛かりはないかと、工事をおこなった会社を聞いたところ、建設会社「大林組」が施工し、空調は「梁瀬空調設備」が担当したという資料が残っていました。
「大林組」に古い資料などに当たってもらったものの、「施工のみ担当しており、設計会社は不明である旨確認がとれました」という回答に。
それでは「簗瀬空調設備」に何か資料が残っているかも?と調べてみましたが、そのような会社がヒットしません。調査を続けたところ、「簗瀬空調設備」は、メルセデス・ベンツなどの高級輸入車の販売などをおこなう「ヤナセ」から、1969年に分社化した会社だということがわかりました。
藁にもすがる思いで「ヤナセ」に問い合わせてみました。「簗瀬空調設備」は、ちょうど換気塔の工事をした次の年(1976年)に「ヤナセ設備工業」となり、すでに解散していました。解散時に多くの資料が処分されてしまっていることや、当時を知る人も退職してしまっているため確認が難航します。その後も粘り強く資料の調査を続けてもらいましたが、「書類管理台帳に『梁瀬空調設備』の記載がないことから、当時の資料は『ヤナセ設備工業』解散時に廃棄された可能性が高い」との回答になりました。
結果、なぜあのようなデザインの換気塔になったのか、明確な理由までたどることができませんでした。今はオブジェのようにただ置かれている換気塔ですが、半世紀もの間、大阪・梅田を見つめてきたのだと思うと労う気持ちも湧いてきます。もしも当時、工事に関係された方がいらっしゃいましたら「まいどなニュース」までご連絡ください。
◾️神戸くまえもんさん https://x.com/kobekumaemon
「街歩きや銭湯が好きなおっさんです。『銭湯快志(せんとうかいし)』という汚い絵のエッセイ漫画を塩屋の舫書店さんに置いていただいております。よろしかったら」