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「お前を応援するのは底辺だけ」誹謗中傷受けてうつ病に…8年間ゴミを拾い続けた“リアルヒーロー”が見た渋谷の小さな変化と大きな前進

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「お前を応援してるのは、バカか人間の底辺だけ」

そんな言葉を浴びせられながらも、8年間にわたって渋谷のゴミ問題と向き合い続けてきた男性がいます。Xで活動を発信している“リアルライフヒーロー”(覆面ボランティア)のスミレンジャーZ(通称・スミレちゃん)さん(@iijNWqUQ7i41630)です。

今年6月、渋谷区ではポイ捨てへの過料2000円徴収がスタート。さらに、区が主体となる公共ゴミ箱の設置方針も打ち出されました。

長年ゴミ拾いを続けてきたスミレンジャーZさんは、「大きな前進」と歓迎する一方で、「まだスタートライン」と語ります。活動を始めたきっかけや壮絶な経験、そして今後への思いを聞きました。

「イベントだけの問題じゃない」

スミレンジャーZさんが活動を始めたのは2017年11月1日、渋谷ハロウィン翌日の朝でした。

当時の渋谷は、路上に大量のゴミが散乱し、ハロウィンに伴う騒動が全国的な問題となっていた時期でした。

「ボランティア活動の一環でゴミ拾いに参加したのですが、その光景に衝撃を受けました」

さらに後日、イベントがない平日の渋谷を訪れた際にも、街中に多くのゴミが捨てられている現実を目の当たりにしたといいます。

「これはイベント限定ではなく、日常的な問題なんだと思いました」

当初は仮装姿でハロウィン清掃を行ったところ、多くの人が注目してくれたそうです。

「どうせやるなら、もっと多くの人に見てもらいたい」

そんな思いから、幼いころから好きだったヒーローをモチーフにしたオリジナルキャラクター「スミレンジャーZ」として、活動を始めました。

「拾っても拾っても元に戻る」

活動当初は、手応えもありました。SNSで反響があり、ともに活動する仲間も増えました。しかし年月が経つにつれ、ある現実に直面します。

「拾っても拾っても、また捨てられる」

毎日清掃しても、翌日には元通り。ポイ捨て自体は減らず、「本当に意味があるのだろうか」と悩むようになったといいます。

さらに、環境美化事業に関わる中で、自身の発信内容に圧力を受けるようになったそうです。

「都合のいい発信をするよう求められました」

断ると状況は悪化。

「お前は仕事ができない」
「自己満足のボランティアだ」
「お前を応援しているのは、バカか人間の底辺だけ」

こうした言葉を日常的に浴びせられるようになり、精神的に追い詰められていったといいます。

「活動そのものにも疑心暗鬼になっていた時期だったので、本当にきつかったです」

やがて、うつ病を発症。活動休止と復帰を繰り返すようになりました。

「人生で一番つらい時期でした」

「君がいなくなると寂しい」

一度は完全引退を宣言したこともありました。しかし、その背中を押した人物がいたそうです。スミレンジャーZさんが「師匠」と慕う、“ベビーカーおろすんジャー”(※)と呼ばれるリアルライフヒーローでした。

※ベビーカーおろすんジャー:杉並区の東京メトロ丸ノ内線・方南町駅周辺で、エレベーターやエスカレーターのない階段で、ベビーカーの上げ下ろしを無償で手伝うボランティア活動を展開中。

落ち込んでいたときに連れて行ってもらった焼肉店で、師匠からこんな言葉をかけられたといいます。

「リアルライフヒーローの顔は君だと思っているから、いなくなると寂しい」

その言葉が忘れられませんでした。さらに活動休止中、子どもたちから「スミまみれだからスミレンジャー」と呼ばれたことも転機になったそうです。

「その名前に運命を感じました」

こうして誕生したのが、現在の「スミレンジャーZ」。師匠への思いと、渋谷のゴミ問題へのリベンジを胸に再出発しました。

渋谷区の新たな動きを歓迎

そんな中、渋谷区では今年6月から、ポイ捨てへの過料2000円徴収が始まりました。同区では1995年の地下鉄サリン事件をきっかけに駅や街中のゴミ箱が減少し、その後もテロ対策や管理上の理由から撤去が進みました。

一方で、国内外から多くの人が集まる街でありながら、ゴミを捨てる場所が少ないことが、ポイ捨て問題の一因として指摘されてきました。こうした中、同区は新たに渋谷駅周辺を中心に、区主体の公共ゴミ箱を設置する方針を発表。長年ゴミ問題の改善を訴えてきたスミレンジャーZさんは、今回の動きを歓迎しています。

「公共ゴミ箱の設置は、長年の悲願でした」

一方で、課題もあると指摘します。特に懸念しているのは、ポイ捨てが増える深夜帯の巡回体制です。

「昼間だけでなく、深夜から早朝にしっかり対応できるかが重要です」

また、公共ゴミ箱についても、設置数や場所が重要だといいます。

「形だけで終わらず、本当に必要な場所に設置してほしい」

やらねば無力。続ければ微力

今回の条例改正や公共ゴミ箱設置はゴールではなく、あくまで第一歩。そう話すスミレンジャーZさんは、今後も現場から発信を続ける考えです。

「ただ批判するだけではなく、行政とも情報共有しながら、一緒に改善策を考えていきたいです」

そして最後に、8年間の活動を振り返りながら、こう語りました。

「やらねば無力。でも、諦めずにやり続ければ微力にはなる」

うつ病や誹謗中傷を乗り越えながら続けてきた活動。その積み重ねが、少しずつ街を動かし始めています。

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