近年、昭和の終わりごろから平成の初めにかけての「バブル景気」の絶頂期につくられたスポーツカーの人気が急上昇している。マニアの間では「ネオクラシック(カー)」とも呼ばれ、価格の上昇と共に盗難が全国で相次ぐ事態にもなっている。また海外からもバイヤーが訪れ、人気車種を中心に「輸出」されているため、国内に残る車両が急速に減少しているという。
記者も社会人になって間もない1991年に5年ローンを組み、当時の世界選手権ラリー参戦用に製造され、一般にも限定販売されたトヨタ・セリカを購入した。それから30年以上の月日がたった。
長年に亘り購入したディーラーで点検や整備をしてきたが、近年は補修部品が手に入らなくなり、修理できない箇所が増えてきた。このままでは次回の車検を通すのも厳しくなったので、このほどセリカの整備を専門的に行っているという秋田県の修理工場へ「レストア」と呼ばれる大掛かりな修繕作業を依頼した。
八郎潟に近い秋田県能代市にある寿自動車整備工場。その敷地には、北は北海道から南は鹿児島まで、全国各地の顧客から整備を依頼されたセリカがずらりと並ぶ。余りにも依頼が多いため、修繕の受け付けを一時停止する事態になったともいい、記者も1年ほど待っての入庫だった。
ところで、同工場はなぜセリカ専門になったのだろうか。同工場の石川肇社長(47歳)は「実はセリカの専門というわけではありません。ごく一般的な自動車整備工場なのですが、セリカの整備や修理を繰り返しているうちに評判が広がり、いつの間にか専門というイメージになってしまいました」と笑う。
古い車の整備に付きものなのが「部品がない」こと。なければ、他車種から流用するか、部品のある外国から個人輸入したり、新たにつくったりするしかない。同工場では、長年の経験から、どこのパーツがどういう壊れ方をするか、そしてどう直せば良いかというノウハウを持つのが強み。常連客の信頼は厚く、マニアからはボンネットを開けただけで「寿さんが整備した」と一目で分かるという。
記者のセリカは、エンジンが下ろされ、オーバーホールが行なわれた。傷んでいた車体も補強された。消耗が目立つパーツは交換され、車体に目立っていた汚れやさびも落として一部は塗り直され、ぴかぴかになった。
1年近い修理期間を経て、手元に戻ってきたセリカ。走る度にあちこちから聞こえていた「異音」が消え、新車とまではいかないものの、何も心配せずにハンドルを握って運転を楽しむことができるようになっていた。
ハイブリッドカーや電気自動車(EV)が本格的に普及する中、古い車の維持は大変になってきている。登録から13年以上が経つ古い車は自動車税も割高になる。だが、自分の両手両足を別々に操り、手動で変速するマニュアル車を操縦する面白さは年月を経ても変わらない。年齢を重ねていく自分も車も、状態を維持するのに良い「医者」が必要なのは同じだ。