米人気SFドラマ「スタートレック」に出演した日系人俳優のジョージ・タケイさん(88)が戦時中の日系人強制収容所での体験を描いた絵本「ぼくらの自由がうばわれる時 第二次世界大戦の日系アメリカ人の物語」を出版しました。
ジョージさんは5歳のとき、ロサンゼルスの自宅に突然現れたアメリカ兵から家から出ていくように命令されました。「日系人」ということだけで、生まれた国であるアメリカから「敵」だと見なされ、家族全員が収容所に送られたのです。鉄条網で囲まれ、兵士に監視される日々。ジョージさんは、5歳から約4年間、収容所を転々としながら幼い日々を過ごすこととなりました。ロサンゼルスで親しかった友達とはその後、一度も会えずじまいです。
民主主義であるはずのアメリカで起こってしまった悲しい歴史。ジョージさんがくり返し訴えるのは、「民主主義はもろい」ということ。異常事態が起きると、民主主義を保てなくなることもあると世界中に伝えたいーーと話しています。
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東京・紀伊國屋書店新宿本店で11月24日、ジョージ・タケイさんミニトーク&サイン会が開催され、筆者はジョージさんの通訳を務めました。ジョージさんは世界的な俳優にもかかわらず、とても気さくでやさしさにあふれる人。筆者のバックグラウンドにも興味を示してくれました。
筆者は2003年、日本からニュージーランドへ留学しましたが、白人の人口が大部分だった南島ではアジア人差別がありました。「人種が違う」というだけで、道を歩いていると車から「国へ帰れ!」と怒鳴られ、町中では男性数人に通せんぼされてからかわれ。16歳までずっと日本で育った筆者にはもちろん初めての経験で、いつか暴行を受けるかもしれないという恐怖に加え、人種が原因なので自分では何もできないし防ぎようがないという事実に絶望したのを覚えています。
人種差別、外国人差別、排外主義ーーさまざまな理不尽が渦巻く現代。ジョージさんの体験は、特に今から未来を背負っていく世代に読んでもらい、同じ過ちを繰り返さないようにみんなで考えていく必要があると強く思います。
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絵本「ぼくらの自由がうばわれる時 第二次世界大戦の日系アメリカ人の物語」サウザンブックス、2025年11月発行、文・ジョージ・タケイ 、絵・ミッシェル・リー 、訳・北丸雄二 、税込み2750円