千葉県船橋市の非公認キャラクター「ふなっしー」は、ご当地キャラ界のトップスターであると同時に愛刀家の顔も持つ。刀剣コレクションを紹介する特別展「刀剣は人を救う~ふなっしーの刀剣展~」が、備前長船刀剣博物館(瀬戸内市長船町長船)で開催中。目玉は、平安時代から日本刀の一大産地として知られる長船で作刀を続ける刀匠・安藤広康さんとの縁で、ふなっしーが初めて注文打ちした太刀「長船橋(おさふねばし)」だ。南北朝時代にこの地で活躍した長船派の名工・兼光が制作した「太刀長船兼光(名物福島兼光)」(重要文化財、東京国立博物館蔵)の写しで、号には「長船」と「船橋」という共通の字を持つ地域の絆をつなぐ意味が込められている。備前長船刀剣博物館PR大使の任命式などのため10月に来館したふなっしーに、収集のきっかけや刀剣の魅力など聞いた。
―刀剣を収集するようになったきっかけは
もともと歴史が好きで、新型コロナウイルス禍に刀がテーマのユーチューブを見ていたときに妖刀伝説で知られる刀工一派「村正」銘の入った刀が気になったなっしー。村正って売っているのかな、とネット検索したら、なんとオークションサイトに出ていたので、思わず入札したら落札してしまったなしな。購入後に鑑定してもらうと、村正ではなく現在の岐阜県を拠点に活躍していたとされる刀工一派「岩捲(がんまく)」の刀だったなっし。
でも、そこから日本刀って、こんなにきれいなんだと思い、いろいろ調べ始めたらもうズルズルと。2020年ごろから気が付くと一振り買ってみよう、もう一振り買ってみようと…。勉強して知識が増えてくると興味のある刀も増えていき、備前物も欲しいなとか、江戸期はどうなんだろうとか、新々刀ってどんなものだろうと見ているうちに、ついつい買ってしまい今では約100振りあるなっしー。
―刀剣の魅力は
刀に触れてから、花鳥風月がより美しく見えるようになったなし。不思議だなと思うなっし。刀匠が、そういったものをイメージしながら刀に封じ込めているんだなっていうのが伝わってくるなっし。
刀身そのものは星空のようにキラキラ輝いているし、刃文は波しぶきみたいだし、山あいから見える日の出とか、そういったものを感じるなっしー。考えてみれば、刀は出来上がるまでに「万物は木、火、土、金、水の5要素からなる」とする五行思想の全部の要素を使ってるじゃんって。刀には、地球や宇宙の全てが詰まってるなっしー。
―長船地区で太刀を注文打ちしたきっかけは
地域活性化に少しでも役立ちたいと、全国各地を旅しながら魅力を紹介するDVD制作で2022年に訪れた岡山県。自分にとっての聖地「長船」で作刀していた安藤広康刀匠と出会い、体験もしたなっしー。で、自分の刀も作ってみたいと思ったなしな。
古い刀だと1000年以上の歴史があり、それはまさに歴史そのものなしな。いろんな武将とかお侍さんとか民間人とかが大事につないでいったバトンみたいなものなし。だから、自分の刀を作るっていうのは、最初のバトンを作ることになるということなっしー。
―写しに長船ゆかりの福島兼光を選んだ理由は
東京国立博物館で見たときに、かっこいいなって思ったなっしー。静かすぎず、激しすぎないっていうわびさびがありながら、彫り物が入っていて。作るなら、自分の一番好きな刀をということなっしー。
長船といえば、その源流に当たる古備前派で、名刀の中の名刀といわれる「大包平(おおかねひら)」(平安時代、国宝、東京国立博物館蔵)も好きな刀なしな。国宝の日本刀111振りのうち最多47振りを占めるのが備前のものなしな。それだけ備前の刀は昔から魅力があるということなっしー。
―備前長船刀剣博物館のPR大使として今後の活動は
もちろん、刀の魅力を多くの人に伝えたいなっしー。ふなっしーは備前ものが大好きなので、写真をどんどんSNSにアップしていき、普段刀になじみのない方にも、好きになるきっかけをつくっていきたいなっしー。
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特別展は平安時代から現代の刀剣約60振りを前期と後期に分けて紹介。後期では、安藤さんが鍛えた短刀で、刃文を描く重要な工程・土置きと焼き入れをふなっしーが手がけた2振りを初お披露目。「豊水」「幸水」と〝梨の妖精〟らしいネーミングとなっている。入場料の10%を能登半島地震の被災者支援に寄付する。期間中、ふなっしーグッズなどを販売する「ふなっしーLAND in 備前長船店」もある。11月24日まで。