海のない京都市で「エビ」が一大産地に!全国でも異業種参入が続々…その理由とは?

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 外部の環境変化を受けにくい「陸上養殖」でエビを育てる京都の企業が増えている。気候変動や環境汚染などを背景に天然エビの漁獲と海での養殖のリスクが高まる一方、陸上養殖の技術が進歩し、全国でも異業種参入が相次ぐ。京都育ちのエビは広がるのか―。

 名神高速道路が通る京都市山科区勧修寺の丘陵地にビニールハウスが立つ。中には幅3メートルのプールと小型水槽が計4個あり、おびただしい数の稚エビが泳ぐ。焼き肉店などをチェーン展開するT・Sコーポレーション(南区)が今年5月、約20万尾を水槽に放流して陸上養殖に乗り出した。

 「消費地の近くなら鮮度の高いエビを飲食店やホテルに届けることができる。輸入品と比べ、持続可能で安全な養殖法だ」。養殖プラントの責任者、藤木克之さんはエビ養殖ビジネスの勝算を展望する。当面は年100万尾(約20トン)の出荷が目標という。

 同社が目指すのは、「京都海老(えび)」のブランド化だ。ゲノム編集など先進技術で水産業の革新に挑む京都大発ベンチャー、リージョナルフィッシュ(左京区)と連携し、エビのふんや脱皮後の殻など有機物を微生物が分解する水質管理システムも導入した。専用の浄化設備が不要で、エネルギーコストも抑えられる。藤木さんは「環境にやさしく、アレルギーを引き起こさない京都海老を確立したい」と力を込める。

 日本のエビの消費量は年約23万トンで、うち東南アジアからの輸入が9割以上を占める。現地ではマングローブの森を伐採して養殖池を開発したり、病気を防ぐためエビに大量の薬剤を投与したりすることが、深刻な環境汚染を招いているという。

 化学素材メーカーの三洋化成工業(東山区)も、新規事業でエビの陸上養殖に参入した1社。2023年に人工ふ化させたバナメイエビの卵から親エビに育てる完全養殖に成功した。現在は京大桂ベンチャープラザ(西京区)内の施設で、ふ化や生育研究を進める。

 最大の特色は、複数のアミノ酸が結合した自社製の「ペプチド」の投与だ。エビの成長スピードを早めて養殖コストを低減し、収益性を高める狙いがある。昨年末には陸上養殖のエビを京都市内のスーパーで1尾100円で試験販売した。担当する事業企画部の上田真澄主任は「ペプチドは農業分野で有用性が証明できた。化学の力で新たな水産を切り開く」と意気込む。

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