tl_bnr_land

定食屋メニューは…女将の一発芸!? 「ゲッツ」が見たくて通い詰めた男性客【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

お店の常連になるきっかけは、ほんの偶然の出来事かもしれません。ヒロ・コトブキさんがX(旧Twitter)に投稿している作品『女将のゲッツ』では、定食屋との出会いをきっかけに主人公が常連になる姿が描かれています。同作は約9000件の「いいね」がつき、大きな反響を呼びました。

ある昼下がり、主人公は定食屋『松嶋屋』に入店します。するとメニューに、聞き慣れない料理名『女将のゲッツ』が並んでいました。割烹着姿の上品な女将に尋ねると、「ダンディ坂野さんのギャグをやらせていただいているんですよ」と答えが返ってきたのです。

主人公はすぐにでも見たい気持ちを抑え、「こういうのは物語が大事だ。何度も通って関係を深めたうえでゲッツを見たい」と考えます。

それから主人公は、松嶋屋に通い続けて女将の「いらっしゃいませ」が「いらっしゃい」に変わったころ事件が起きました。昼間から酔っ払った男3人が、女将のゲッツを注文し録画しようとしていたのです。

主人公は注文を遮るように会計を頼み、女将に「録画されようとしている」と紙に書いて伝えます。しかし女将は「大丈夫よ。53年も生きてきたの。もう色々慣れたわ」と笑顔で答えました。『女将のゲッツ』に焦がれていた主人公は、店内に響いた笑い声に耐えきれずその場を逃げ出しました。

翌日、主人公は開店早々『松嶋屋』を訪れます。女将はそこで、昨日は主人公がわざと雑談や一万円札での支払いで時間稼ぎしたことが分かったという言葉とともに、酔っ払いにゲッツを披露しなかったことが告げられます。

そして主人公はついに「明日、女将のゲッツを予約します!」と宣言します。

ついに待ちに待った『女将のゲッツ』が披露されました。真剣な眼差しで心のこもったゲッツを目にした主人公は、代金300円だけを払いその日は帰途につきます。

 

どうやら主人公は女将に恋をしていたようです。それを先に悟った女将は、主人公を旦那が切り盛りする夜の居酒屋へ招待しました。

そこで主人公は、なぜ『ゲッツ』をメニューに入っているのかを知ります。常連客によると、それは女将がダンディ坂野さんと同じ石川県出身だったからだそうです。こうして常連客とともに酔っ払った主人公は、「歳をとるのも悪くないな…」と思いながら夜を楽しむのでした。

読者からは「うまく言葉にできないけど良い…」「文学的で余韻が残る」など、さまざまな賛同コメントがあがっています。そこで同作の作者であるヒロ・コトブキさんに話を聞きました。

「色んなことは大丈夫かも知れない」そんな空気感を味わって欲しい

―同作を描くにあたり、参考になったものやできごとがあれば。

元々は1ページの作品を5回程で終わる予定でしたので、参考もきっかけもなく、他の1ページ漫画と同じ熱量ではじまったものでした。段々と『女将のゲッツを見ること』という静かなゴールだからこそ、歴史や細部まで丁寧に描いた方が、(僕の思う)面白さが増すなと考え始め、少しずつお話が延びていきました。メジャーリーガーのような振りかぶり方をして、ボールにミートするギリギリでバントする。みたいなスカし方にするつもりでしたが、実際はそういうものにはなりませんでした。

―さまざまな一発芸があるなかで、なぜ『ゲッツ』を。

元は『女将のゲッツ』という言葉のリズムと、1秒もかからずに出来てしまう瞬発性にひかれて選んだのがきっかけだったので、いくつかカードを並べてうなっていたわけではないです。だけどそれに引っ張られるように物語ができていったのを考えると、ゲッツの持つ求心力にとっくに引き寄せられていたのかも知れません(なにしろ見切り発車な僕にいろいろな伏線や指標を光らせて、掘る場所を親切に案内してくれました)。

―読者へのメッセージを。

たくさんの方々からコメントをいただきました。表したかった感情の細やかな部分までを、絵や言葉から感じとっていただいていることに感動しました。

(大層に聞こえて笑われるでしょうけど)「いろんなことは大丈夫かも知れない」と、ずいぶん大きな感情さえ持ちました。それはひも解くとこんな感覚です。『0と1の間のコンマいくつみたいな空気感を、分かってもらえたり分かってあげられたり、分かってあげたいと思ったり、分かってあげられるかも知れないと思い合えているこの世界は、まだまだあたたかくてやわらかいのかも知れない」というような。

それはいみじくも女将の言っていた「大人たちって思ったより若者の不足を汲んでくれるものだから、思い切ってぶつかれ」という言葉ともどこか共通します。もうずいぶんおじさんの私が、女将に背中をぴしゃりと叩かれた気分でした。

これからも遊んでもらえるとうれしいです。ありがとうございました。

<ヒロ・コトブキさん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/kotobuki_hiroju
▽公式サイト
https://hirokotobuki.com

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース