子どもと一緒に過ごす中で、ふとした言葉にドキリとさせられる瞬間は少なくありません。中でも“自分の感性の変化”に子ども自身が気付いて言葉にする姿は、親にとって驚きと感動を与えてくれるものです。漫画家のこやまこいこさんがX(旧Twitter)に投稿した作品『小さい頃の感覚を忘れていくのは少しさみしいけれど』には、そんな驚きと感動が描かれています。
物語は、こやまさんが子どもと一緒に歩いている場面から始まります。ある日、こやまさんが長女と次女を連れて歩いていると、次女が真剣な顔で「前はね、世界が細かく見えてたの」と語り始めます。次女の話では、もっと小さかった頃は葉っぱを並べたりちぎったり、さまざまな遊びをしていました。しかし大きくなったら葉っぱを見ても遊びをしなくなったそうです。
少し寂しそうにそう語った次女を見て、こやまさんは「変わっていくことに気付いたその感性を大切にしていける毎日でありますように」と祈るように考えるのでした。
同作について読者からは「次女ちゃんはその変化をこうやって言葉にして伝えられるの本当にすごい」や「泣く。この小さい頃の感性大切にしたい。」のように次女の純粋さや言語化できる能力への賛同の声があがっています。そこで当時の心境やご自身の幼い頃の話を、同作の作者であるこやまこいこさんに聞きました。
見立て遊びは私も幼少期にやっていました
ー次女ちゃんが「前は世界が細かく見えてたの」と言ったとき、どのように感じられましたか?
この漫画を描いたのはだいぶ前のことで、うろ覚えな部分もありますが、この漫画に登場する次女は日々の発見をよく話してくれるタイプだったと思います。
「前の世界が細かく見えてた」と言ってくれたときは、なんとなく過ぎていってしまうような感覚に対して、自分の気持ちに注目できるということに驚きました。子どもが自分の変化を感じ取って、それを言葉にする姿に感心しました。
ー次女ちゃんの語る「葉っぱでやりたいこと」について、特に印象的だったものはありますか?
葉っぱはいつも公園にあるものなので、自然と遊びの中に取り込まれていました。印象に残っているのは、様々な種類の葉っぱを集めて顔を描いたり並べたりする遊びです。洋服にくっつくタイプの葉っぱもあって、それを使って洋服に葉っぱの柄のデザインをつくったり、顔をつけて楽しんだりしていました。特に秋は葉っぱの色が美しいので、色とりどりの葉っぱを並べるだけでもとてもきれいでした。
ー「葉っぱだなあと思うだけになっちゃった」という言葉に、どのような意味を感じられましたか?
子どもが成長しているという実感がありました。本人は少し寂しそうにしていて、今までいろんなワクワクがあったけど、最近はちょっと違うと感じているようにもみえました。その表情を見たときは、切なさも覚えましたが、そういう気持ちを言葉にして伝えてくれたことはとても嬉しかったです。
ー次女ちゃんの発想力や感性が変化していく様子から、こやまさんご自身が幼い頃の感覚を思い出すことはありますか?
ある日、子どもたちとリビングを海に見立てる遊びをしていました。ソファのまわりにサメがいる設定で遊ぶんです。この見立て遊びは私も幼少期にやっていました。幼稚園の頃、お風呂上がりに寝巻きをきちんと着ずに、2階建てベッドを船に見立てて「大航海」する遊びが好きだったことを思い出しました。
はしごに片足と片手でぶら下がり、周りが全部海だと想像して、風を感じて「大冒険だ」という設定で遊んでいました。そうして遊んでいるうちに体が冷えてお腹が痛くなりましたが、親に言えば怒られると思い、自分でお腹をタオルで温めて治したという記憶があります。
ー最後に、お子様が今後も発想力を育めるように、親としてどのようなサポートをしていきたいと考えていますか?
親ができることには限りがあると思っています。子どもは変化していくものなので、あまり手を出さずに見守ることが大事です。でも実際はそう思っていてもつい口を出してしまうことも多く反省や後悔がたくさんあります。
好きなものを「好き」と素直に言ってくれたことをそのまま受け止めることは特に大切だなと感じています。「これが好きなんだ」と自分の気持ちを素直に表現できる環境が、子どもの発想力を守ることにつながるのかもしれません。
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