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スタッフ募集の「貼り紙」、65歳~80歳は大歓迎…その条件とは!? 「素敵な職場」「ぴったりあてはまるんだけど」

太田 真弓 太田 真弓

「スタッフ募集」と赤字で書かれた紙の条件には…「65歳から80歳くらいまで」。他所では、避けられてしまうかもしれない人材を求む求人募集がInstagramで話題に。北海道白老郡白老町にある食堂「グランマ」さん(@grandma_shiraoi)に取材しました。

ほかの条件もさらに読み進めてみると…以下の通りです。

・血圧が安定していて、通院が月5回以内の方
・笑うのが好きな方
・賞味期限が切れたものを捨てれる方
・塩加減がだいたいいつも安定している方
・誰かが話している時に話し始めない方
・少々記憶曖昧な方可
・お時間に余裕がある方
(既に働かれているお仕事の休みの日にお越しいただける方、大歓迎)
・生活がすでに安定している方
・チームワークや生きがいを感じたい方
※当店は2009年より有償ボランティアのお姉様方により運営されています。謝礼、賄い、お茶菓子付き。
(行政補助金等は一切受けておらず、自主運営を続けています)

ウィットに富みつつも、高齢者が飲食店で働くために大切であろう条件が箇条書きに。ほかにも「一緒にお料理作ったり、お茶飲んだり、賄い食べたり、お出かけしたり、笑い転げる仲間を募集中」、「#ババ活 #終身雇用」といったハッシュタグからも楽しそうな様子が伝わってきます。

この投稿に、「65からですか~ちょっと足りなかった~」「いや~残念だ!も少し近ければなぁ❤」「応募資格充分満たしているけど関東からはだいぶ遠いなぁ〜皆さんの働きぶりが楽しみだし、献立見るのも楽しみですよ」「なんて素敵な職場」「素晴らしい求人」「ピッタリあてはまるんだけど…鹿児島は遠い」など、全国各地から応募希望の声が寄せられました。

「グランマ」で働くおばあちゃんたちの平均年齢はなんと84歳! Instagramでは、提供しているメニューや地元の食材の紹介をはじめ、働いているおばあちゃん、おじいちゃんのイキイキと仕事する姿をユーモアをまじえて投稿。

このSNS投稿を行っているのは、オーナーで店長の林啓介さん(43)。岡山県出身でご縁あって2018年に白老町に移住。「地域おこし協力隊員」として活動任期中に、コロナ禍で休業していた「グランマ」を復活させたそうです。詳しくお話を聞きました。

80歳が若手!品数は記憶力テストのようなもの

――ユニークな求人内容に思わず目が止まりました。この時の採用は?

新しくスタッフとして加わってくださった方はもちろんいらっしゃいます。実際に多く問い合わせをいただき、「白老へ引っ越してきたい」と言われる方も多く、「逆に引っ越してまで??」とお断りすることの方が多いです。

現在、12名のおばあちゃん、1名のおじいちゃんが主要メンバーです。引き続き募集しております。

――「グランマ」は元気な高齢者の方が働く食堂なのですね。

2009年に創業し、当初から有償ボランティアのご年配の方々により運営されていました。2020年に私が運営を引き継いだのですが、コロナ禍で、ご高齢ということもあり、しばらく休業していましたが、ここで飲食店の運営ができないかなと思ったのが始まりです。

実際に働いている皆様にお会いして、食事会をしながらお話を伺ったところ、「まだまだやりたい!」という思いが強く伝わってきたので、急いで壁塗りや修繕、清掃、多くの調達を行い、2020年8月1日にリニューアルオープンしました。

――こういった張り紙やSNSの内容もユーモアにあふれています。

お一人暮らしで、ご家族が遠方や海外にいらっしゃる方も多いので、そのご家族の方にも元気に楽しく過ごしてらっしゃる日々をお届けできたらと思い始めました。

お電話で話すことはあっても、おばあちゃんたちの世代だとご家族に写真や動画を送るという作業は大変ハードルが高いため、そこを私がお届けできたら良いなと。

結果、ご家族はもちろん、お孫さんの勤務先の同僚や通院先の医師やスタッフの方々も毎日ご覧になってくださっているようで、日々喜んでいただいております。リアルタイムでフランスに住むご家族の方からご連絡をいただくこともあります。

――SNSを通してご家族とも繋がってらっしゃるのですね。働いてらっしゃるおばあちゃんたちのご感想は?

まず、「集まれる場所とやること、できることがあるというのがとても大きい」と話してらっしゃいます。

私が関わるようになって以降、特に海外からのお客様も急増しており、30席全席海外のお客様ということもしばしばです。そうすると、普段交流がなかった方々との交流が生まれ、とても活き活きと賑やかに楽しまれてます。

また、SNS投稿の内容は皆さんご存知でして、お一人80歳の若手のおばあちゃんがSNSを駆使されており、お茶の時間に皆に共有してくださっています。

――「本日のグランマセット」や「薬膳カレー」などどのメニューも魅力的です。

グランマセット(日替わり)はおばあちゃんたちがその日ある食材を見て、ベストなものを当日朝決めます。

地産地消は全く意識していないのですが、直接港から買い付けしたり、自分達で魚を釣りに行ったりすることで提供価格を抑えることができるため、自然と地元食材を使っております。

品数は、記憶力のテストのようなもので、結構多めです。和食から洋食まで幅広い年代の方が一緒にご来店いただいても喜ばれています。

カレーは世界中のカレーを掛け合わせていますが、中でもイギリス留学中に食べた「ティッカマサラ」と、高校生の頃に食べた岡山の「ナッシュカリー」を参考にしています。

――グループに70歳以上が一人いらっしゃると、全員の注文がそれぞれ100円引きといったサービスもとてもユニークです。

この企画は、とても驚かれ、喜ばれます。

「注文した方のみ割引」と思う方が多いのですが、グループ全員が割引になるのは非常に稀なサービスかと思います。こちらは、交通手段なども難しくなった方々やご家族とのお出かけで70歳以上の方も一緒にお出かけするきっかけになればと思い始めました。

「一緒にグランマ行こう」となれば、お車運転されない方も一緒にお出かけできたり、割引分がちょっと交通費の足しくらいにはなりますから、いいですよね。

――お客さんや観光客の方々の感想はいかがですか?

お陰様で「グランマ」を目的として北海道にいらっしゃるお客様も多く、中には日帰りで本州からランチを召し上がりに来られる方もいらっしゃいます。

時間帯としては前半が町内の常連様、後半が観光でお越しになったお客様という流れがありますが、SNSで見つけて「ずっとファンで、やっと来れました!」とコメントくださる方が毎日とても多いです。

――それは嬉しいですね。

そして、来店時からおばあちゃんたち自身が接客することを一番大切にしています。アレルギーやヴィーガンの方の対応やいざという時には私が入ることもありますが、基本的に地元の方や観光客の方はもちろん、外国人の方も片言の日本語や翻訳アプリを使いながら、おばあちゃんたちとの直接のコミュニケーションを楽しんでおられます。

――これからの「グランマ」の展開などは?

こればかりは皆さんの体力にもよりますが、無理なく集まり、無理なく自分たちが楽しめる環境を続けていくということを大切に考えております。

働く方々の感想は?「やりがいがあるし、楽しい」

後日、林さんが休業日に現場のおばあちゃんたちともZOOMを繋いでくださり、お話を聞けることに。

おばあちゃんたちは、店頭販売やネット通販でも人気の白老町産「野草茶」の原料となる野草を取る作業を終え、いつもの「お茶の時間」さながら、お弁当を食べてらっしゃいました。

定年後、2009年のグランマ創業時から有償ボランティアで働き、「ここ(グランマ)から離れたくないからさ」というヨシちゃん(85)、アオちゃん(80)。お客さんとしてカレーを食べた次の日にも来店→「みんなが楽しそう」と思ったことをきっかけに参加したヨシコさん(80)、栃木→東京→北海道に引っ越し、食事に来た際に既に働いていたメンバーから声をかけられて働くことにしたツマちゃん(85)の4人。

みなさん、「やってみたいことは全部やったからね」「身体がついていかないの」と仰っておられましたが、とってもお元気そうなご様子。

「比較的自由が利く環境だしね。やりがいがあるし、楽しいし、お客さんと交流ができる。みんな最初から仲良し。みんなで作業することが楽しい。外国の方が検索して来てくれるしね。お茶やおやきや手作りで売れているものを、もうちょっとやろうかっていう気持ちがあって。なんたってみんな80を超えてるからね~。ほとんどが未亡人!」と教えてくれました。

旅先の食事処での現地の方との会話は、きっと思い出に残るもの。地元の方からも愛されている「グランマ」のおばあちゃんたちの活躍の場と美味しいご飯が、これからも続いていきますように。みなさんの活躍が今後も楽しみです。

【グランマ関連情報】
営業は木・金・土曜日、11時~15時(L.O.14時)最新の情報はInstagramで発信中。
オーナーの林さんは異色の経歴の持ち主。北海道に移住する前は、アメリカフロリダ州の「ウォルトディズニーワールド」に勤め、その後アルゼンチンやシンガポールで貿易関係の仕事に従事。英語が堪能で、日常会話程度のスペイン語もOK。現在は「合同会社WakuWakuしらおい」を立ち上げ、「グランマ」の運営のほか、ゲストハウスの経営やノンシュガー生チョコレート「GreenOwl」の製造、食材通販、シェアオフィスや体験ツアーも運営するなど、白老町の特色を活かした事業の発足や雇用の創出に取り組んでいます。

■Instagram https://www.instagram.com/grandma_shiraoi/
■Facebook https://www.facebook.com/granmashiraoi/
■ノンシュガー生チョコレート「GreenOwl」「野草茶」販売サイト https://green-owl-hokkaido.com/

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