お笑いタレントのバカリズムさんが主演、脚本を手がけた7年前のテレビドラマ『架空OL日記』は、銀行で働くOLのリアルな日常を描いた作品。くすりと笑える「あるあるエピソード」が人気で、2020年には映画化もされた。その中で、思わず「分かるわぁ」と声が出たシーンがある。
主人公が職場の女子トイレに行くとトイレットペーパーが切れており、「交換するのは今年3回目」と同僚に嘆く。すると同僚は「私、4回目」。ペーパー交換は全て自分たちが担っているのではとの疑念が生じ、先輩OLに回数を尋ねると「私は11回目だよ」と返され、「スミマセン」と謝る場面だ。
主人公同様に一時期、会社のトイレに入ると毎日のようにペーパーが切れており、私しか交換していないんじゃないか、と本気で思っていたことがある。
親や学校の掃除時間に「次の人のために使いやすいようにしておきましょう」と教え込まれていたこともあって、ペーパーが切れたと認識した前の使用者が交換するものだと信じていたため「なんで次の人のことを考えないんだ」と小さなため息もついていた。
だが、この話を後輩にすると「それは配慮かもしれませんよ」と意外な答えが返ってきた。用を足した後の、言わば「汚い手」での交換を控える気遣いなのだという。
ペーパー関連で言えば、紙の先端を折って三角形にする「三角折り」が施されていることがよくある。一般的には「清掃済み」のサインだが、それこそ「次の人が使いやすいように」「見た目をきれいに」と思って折る人がいる。
それは個人的に少し不衛生だなと思い、折られた部分は使わないようにしているが、ペーパー交換も原理は同じということだ。次の使用者の接触箇所を減らすということであるならば、洋式トイレのふたを開けたままにしておくのも同様の配慮なのだろう。
看護師資格と実務経験を持つ同僚に聞くと、感染症のウイルスは、小腸や大腸にも存在し、ウイルスを含む便が手指に付着して、これが口などに入る「糞口感染」は要注意とのこと。便座の除菌や手洗いの徹底などで対策はできるというが、三角折りやペーパーの交換など、無用な接触はしない方がベストかもしれない。
後輩に教えを請うて以来、トイレのふたは閉めるが、自分の番でペーパーが切れても交換しないようにしている。ただ、「次の人のために」との教えに背くようで、それはそれで気持ちが悪い。