売れ残りだった成猫は、実はとても家族思い 体調を崩した飼い主を見守り、一度心臓が止まっても復活…ともに過ごした18年間

古川 諭香 古川 諭香

「日常生活は普通に送れていますが、心が晴天の日はなく、どこかに霧がかかったような、とても重要な臓器を失ったような感覚です」

2024年6月に愛猫おはぎくんを亡くした飼い主のohagi1328さん(@ohagi1328)は言語化しにくいペットロスの痛みを、そんな言葉で表現します。

おはぎくんは寿命を全うし、18歳で天国へ。一緒に過ごした日々には、かけがえのない思い出が溢れていました。

ペットショップで見かけた成猫が夢に出てきて…

出会いは、とあるペットショップ。偶然、通りかかった時、飼い主さんはショーケースでくつろぐ、成猫のスコティッシュフォールドに目を奪われました。他のショーケースは子猫や子犬がおり、おはぎくんは目立っていたそう。

その日はそのまま帰宅したものの、2週間ほど経った頃、突然夢におはぎくんが登場。なんとなく気になり、再びペットショップへ行くと、おはぎくんは3度目の値引きをされていました。

「夕方まで売れなかったら他の子を購入したお客様が一緒に引き取ることを聞き、お迎えを即決しました」

環境が変わると警戒する猫は多いものですが、おはぎくんはマイペースだったよう。お迎え当日、全部屋を見回った後、用意してもらった猫用ベッドにゴロン。家族全員を唖然とさせました。

「すり寄ったり甘えたりはしませんでした。抱っこも好きではなかったので、触り過ぎない・構い過ぎないを心がけながら、声かけをしていました」

そうした気遣いを受け、おはぎくんはおっとりとした性格ながら、憎めないふてぶてしさや小悪魔要素を持つ猫に成長していきました。

スコならではの「骨軟骨異形成症」とも向き合った

スコティッシュフォールドは軟骨異常によって折れ耳になる猫種。手足の関節がコブ状に腫れる「骨軟骨形成症」という病気を発症することも多いものです。

おはぎくんも若い頃から全力疾走や高所へのジャンプをしなくなったそう。その後、前足が曲がり、骨瘤が目立つようになりました。

突然、片足を引きずり始めたことから動物病院を受診するも治療はできず。獣医師からは「遺伝性疾患のため、手術をしても再発するだろう」と言われ、緩和ケアを勧められました。

少しでもおはぎくんが快適に暮らせるよう、飼い主さんはキャットフードを見直し、関節サポート用のサプリもあげるように。フローリングの部屋にはマットを敷き、足に負担がかかりにくくなるようにもしました。

大切に思われながら猫ライフを楽しむおはぎくんは、人間くさい一面を見せることも。

「会話をしていると加わり、それなりに分かったような顔で聞いていました。要求がある時は目で訴える。オスですが、雰囲気がはんなりしていました」

また、飼い主さんが体調を崩して、2年ほどほぼ寝たきりの生活が続いた時は、優しく気遣ってくれたそう。

「ご飯やトイレ、ひなたぼっこの時以外はずっと枕元で添い寝をしてくれていたことが忘れられません」

19歳の誕生日を目前に天国へ

完全室内飼いを徹底し、部屋の室温は極力一定になるよう配慮。旅行などでの長期の留守も避けるなど、おはぎくんが1日でも長く生きてくれるよう、気配りをしていた飼い主さん。

しかし、19歳の誕生日が目前に迫った頃、家族は悲しい別れを経験することとなりました。

老衰したおはぎくんは視力を失い、食欲不振に。口にできるのはスープのみで、起き上がることも難しかったそう。飼い主さんはひたすら眠るおはぎくんにくっつき、心と体を寄り添わせました。

「亡くなる2日前、一度心臓が止まりましたが、心臓マッサージと人工呼吸を試みると復活してくれました。その時は息子が夜勤でいなかったので、帰ってくるまで踏ん張ってくれたのかもしれません」

最期まで家族を思っていたおはぎくんは、飼い主さんの腕の中で息を引き取りました。

愛猫を失った悲しみは日常の中で、突然襲ってくることも。しかし、どこからともなく出てきた抜け毛など、おはぎくんがたしかにいた証に支えられ、今を生きています。

「私家族にとっておはぎは、ずっとなくてはならない家族です」

そう溢す飼い主さんの姿を、家族思いのおはぎくんは意外と近くで見ているかもしれません。

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