京都女子大(京都市東山区)の学生が京都市交通局と協力し、痴漢などの性犯罪被害者に対する第三者からの中傷を防ぐポスターを制作した。本来は責められる立場にない被害者の服装や行動を非難し、責任の一端があるとする考えに疑問を投げかける内容で、市営地下鉄の駅構内や車内で掲示されている。
ポスター制作は、被害者側に自衛を求めるなど、従来の啓発内容に違和感を抱いた同大学の市川ひろみ教授(国際関係・平和研究)に賛同した学生らが2021年から取り組んでいて、今年は有志の13人が参加した。
被害者の責任に焦点を当てるきっかけになったのは、2023年8月に大阪府で開催された音楽イベントで、韓国の人気女性DJが観客からわいせつ行為を受けた事件だ。交流サイト(SNS)では「露出した格好ならそうなる」「観客の触れる距離に近づいた」など女性を責める投稿が相次いだことから、性被害において被害者にも責任の一端があるとする社会の誤った認識を改めたいとポスター制作に取り組んだ。
完成作品は、被害者や加害者の姿は出さずにスマートフォンを持った手を描くことで、インターネット上での顔の見えない第三者を表した。「そんな服装してるから」「イヤなら声出せば?」といった言葉とともに「被害者責めてませんか?」と疑問を投げかける。QRコードを読み取ると、被害を目撃した際に取るべき行動例などがQ&A形式で記載されている。
現代社会学部4年の学生(22)は「疑問に感じていたことを社会に訴えることができてよかった。『自分は加害者ではない』と傍観する第三者が考えるきっかけになれば」と話した。