閉店相次ぐ銭湯…「人気店と低調な店との二極化が進んでいる」 33歳経営者が語る「後継者育成」と「今後」

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 風の冷たい季節に恋しくなるお風呂。だが、京都市の銭湯は10年前の約140軒が約80軒に減少している。

 将来に課題を抱える銭湯の経営を引き継ぎ、多彩かつ地道な取り組みで入浴者数を伸ばす「ゆとなみ社」(下京区)の湊三次郎社長(33)は、銭湯を残すためには「根本的な課題である後継者の育成が重要になる」と強調した。

 -府内の1施設当たりの入浴者数は102人で、90人台で推移していた近年と比べて増えている。

 「廃業した銭湯に行っていた客が、残った銭湯に流れているからだ。その数字だけで銭湯業界が盛り上がっているとは言えないと思う。業界は、人気のある店とそうでない店との二極化が進んでいる。人が入っていないところは1日50~60人。一方、ゆとなみ社が手がける『サウナの梅湯』(下京区)は週末であれば600人が入る」

 -業界の課題は。

 「今後の継続に向けた答えを出せていない。ビジョンを提案できていない。後継者がいない。お客さんが入っていても閉業するのは、後継者の不在が大きい。後継者を真剣につくってこなかった。現在の助成制度も、後継者問題はどうにもならない」

 -どう人材を育てるのか。

 「ゆとなみ社では『道場』のような感じで人材を育てている。手取り足取りということではなく、日々の中でどれくらい個々が自主トレをしていくか。やる気がある人は自らやっていく。まだ、人材育成や組織の面で未熟なところがあり、さらにレベルを上げないといけない」

 -10年後、京都市内の銭湯の数はどれくらいになると思うか。

 「経営者は70代、80代が多く、今後も減っていくだろう。20軒台になるのではないか。ひどければ、10軒台になる可能性もあると思う」

 -施設が老朽化する中、新築には多額の費用がかかる。

 「東京では経営者が代替わりし、1~2億円の改修や新築をして、繁盛している銭湯がある。融資する金融機関の銭湯に対する認識も、東京と関西では差があり、関西は古い面がある。平成の半ばまでに新築改装して、そこから止まっている銭湯が多い中、これからの10年で、設備全体の老朽化という問題に直面する。遅かれ早かれ、投資するかしないかを考える時期が来る。10年たてば、周囲に競合がいないため、努力すれば、その残った銭湯にしか人は行けない。(投資をするならば)ある種、狙い時だ」

 -今後について。

 「京都には30年、50年続くモデルがまだない。ゆとなみ社が、お客さんがたくさん来る銭湯を作っていくのが、業界によい影響を与えると考えている」

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